ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

タグ:レビュー

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☆KOMAGATAKE SINGLE MALT
 IPA CASK FINISH
 Botteled in 2020
 南信州ビール×駒ヶ岳

 度数:52.0%
(状態) 開封後数週間以内/残量:80%程度/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
レモンのフレッシュ感、フレッシュフルーツのエステリー、優しいバニラ、浅く焙煎したナッツ、リンゴ農園の香り、バタースカッチ、ほんのりとホップのアロマ、甘みを伴うモルト、過熟な果実の甘い風味も漂う。

味:
優しいホップの風味、程よいタンニン、ローストナッツ、乾いた樽香、乳酸の酸味、プレッツェルの香ばしさ。柑橘のオイル。終盤はホワイトペッパーのスパイシー、柔らかいバニラ、仄かにボタニカルまたはレモンピールのビター感。フィニッシュは比較的穏やかに、暖かさが程よく長く続く。

感想:
思った以上に良く纏まっており、美味しく飲める一本。複数樽バッティング・加水品であるためか強烈な個性は求められないものの、樽感・ビター・ホップ由来のアロマ、フルーツがバランスよく現れる。加水するとビターとウッドが浮き、IPA感が強まるが、決して嫌みではない。

評価:
3~4(日飲みできるレベル~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:値段相応

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マルスウイスキーから先日発売された、シングルモルト駒ヶ岳のIPAカスクフィニッシュ品。前回のシングルカスクから打って変わり、今回は複数樽をバッティングし加水調整したものとなりました。

フィニッシュに使用されている樽は前回のシングルカスク駒ヶ岳IPAカスクフィニッシュ同様、同敷地内の南信州ビールのIPAの熟成に使用されていたもの。

味わいではシングルカスクほどのIPA感ないしホップ由来のアロマ感は感じられないものの、バーボンカスク由来と思わしきクリーンなフルーツ香とバニラ香の合間に程よくホップが見え隠れする印象でした。

また口当たりは加水の具合も相まってか非常にソフト。味わいではよりファッティな印象が増しつつ、酸・苦のバランスとスパイシーのアクセントが効いた仕上がり。概ね香りと味わいで大きく乖離なく、突出した部分には欠けるものの安心感ある雰囲気でした。

加水ではややホップの香りとウッディさが浮き上がる印象で、若干不安定に感じましたが、嫌味のある部分は思いの外感じられなかったので、ハイボールなどには案外馴染むのかもしれません。

シングルカスクではない分、味わい的にもお値段的にもピーキーではなく、非常にライトに手軽に楽しめる1本かと思います。今後もシリーズが続けばいいなぁ…

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☆Vacation Whisky 2015
 Always Christmas
 Komagatake Singlemalt
 Aged 5 Years

 度数:61%
 樽種:ANEJO CASK
(状態) 開封直後/残量:100%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
シルバーテキーラ、アガベシロップ、仄かに焙煎感を伴う穀物、おがくずのようなウッディ、スイート感のあるエステリー、木酢、腐葉土。時間を掛けると僅かにマンゴージャムのようなトロピカルフルーツが開く。

味:
シルバーテキーラの独特な芳香と甘み、ビターなウッディ、仄かにラムネっぽいフレーバー、香ばしい穀物、僅かに金属感とナッツ系のファッティ。フィニッシュは中くらいで、タンニンと独特な青っぽさ、仄かな土系ピートを残しつつ、ドライに切れる印象。若さと度数相応にしっかりとした刺激感がある。

感想:
なかなかの変わり種。ウイスキーっぽさよりもテキーラの風味が勝る印象で、良くも悪くもテキーラ味。それも原酒のニューポット感と相まってか非熟成のシルバーテキーラの風味に感じられた。一方、時間をかけてじっくり香りをみていくと僅かながらにトロピカルフルーツのフレーバーも顔を出す。香りがしっかりと開いてくれば、化ける可能性があるかもしれないが、現状では「変わり種」以上の評価は付け難い。尚、加水するとよりテキーラの風味が浮き上がる。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い

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Sake Shop Satoが不定期にリリースしているクリスマスラベルの第5弾。

中身は『ANEJO(アネホ)CASK』との表記からわかる通り、テキーラカスクで熟成された5年熟成のシングルモルト駒ヶ岳(マルス信州)です。

駒ヶ岳シリーズといえば、直近で発売されたIPAカスクやTWSCにも出品されたマデイラカスク、ブレンデッドウイスキーのフィニッシュにしようされた桜カスク等、レギュラー外の変わり種の樽を所有していることで知られています。その中でも今回のテキーラカスクは恐らく変わり種中の変わり種。

実際にテイスティングしてみると、予想以上にテキーラ色の強い仕上がりになっており、好き嫌いによって賛否分かれそうな印象。

以前、同シリーズにて江井ヶ嶋(旧ホワイトオーク)蒸溜所のシングルモルトあかし・テキーラカスクがリリースされ、こちらも一度テイスティングをした経験があり、なかなかのテキーラ感に驚いた記憶があったのですが、今回の駒ヶ岳も負けず劣らず、なかなかパンチが効いておりました。

ただ、単純に全てテキーラ一色なのかというとそんなことはなく、駒ヶ岳らしいエステリーや、バーボンカスク(テキーラの熟成には多くバーボンカスクが用いられる)由来と思わしきトロピカルフレーバーの片鱗が見え隠れしており、今後の開き具合によってはそれなりに楽しめる仕上りになる可能性も感じられました。

ただ、やはり開けたてはなかなか難しい…。また時間を空けて、どのように変化するのか、楽しみに待ちたいと思います。

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☆JURA AGED 26 YEARS
 HUNTER LAING
 ARDNAHOE DISTILLERY THE KINSIP
 One of 254 bottles

 度数:52.7%
 樽種:リフィルホグズヘッド
(状態) 開封直後/残量:90%程度/イベントにて

(テイスティング)
香り:
バナナフレーバーのケーキ、セメダインを思わせるケミカルなエステリー、青りんごフレーバー、青みを伴う穀物、塩ビのパイプ、僅かに磯の香り、オレンジやレモンのピール、フルーツのビネガー。

味:
ハニーシロップのスイート、アプリコットやリンゴのジャム、仄かにベリーのような風味、控えめに乾いたウッディ、レモンのピール、白い花のフローラル感、やや粉っぽいモルティ、ケミカルなエステリー。フィニッシュはエステリーと独特な磯の香り、少々のビターが中くらいに伸びる。アフターテイストにはライムのような柑橘が残る。時間経過でピーチやトロピカルフルーツのフレーバーも現れる。

感想:
全体的に棘が無く飲みやすいが、香りの面で少々ケミカル系エステリーの押しが強く、ビニールのような印象まで感じられた。時間経過でピーチやトロピカルフルーツのソフトな風味が出現。開栓すぐだったので、まだまだ開いていない様子だった。暫く置くことで真価を発揮しそうな雰囲気。ケミカルな部分も和らぐのではなかろうか。また、オイスターのような独特な磯の風味は、好き嫌いが分かれそう。加水で穀物感がよりクリーミーに変わる。

評価:3~4(可も不可もなし~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや悪い

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近年創業のボトラーズながら既に高い知名度を得ているハンターレイン社。

アイラ島9番目の蒸溜所であるアードナッホーを創業したことでも知られています。

そのハンターレイン社が、件のアードナッホー創業を記念して発売したシングルモルトシリーズが「ザ・キンシップ」です。

「キンシップ」とは「親族」や「血縁関係」など親密な繋がりを意味する言葉だそう。ハンターレイン社が自社ストックの原酒からの選りすぐりをボトリング・リリースしたもので、かなりハイエンドな仕上がりになっているとのことでした。

実際、価格設定もかなりアッパーであり、今回のようなイベントでの試飲でなければちょっと手が出ないところでした。

尚、このジュラ26年はザ・キンシップの2018年リリース時の1本にあたり、他にはハイランドパーク21年、スプリングバンク25年、ボウモア21年、ブナハーブン30年、ラフロイグ20年といった錚々たるメンツが揃っていました。

そんなアッパーなクラスの本ボトル。リフィルホグスヘッドらしい、クリーンで角の無い味わいがとても良い…はずだったですが、少々ケミカル系エステリーが強すぎる感があり…。その強さたるやフルーツフレーバーを通り越してビニール系に至り、個人的には配管の塩ビパイプを連想するほどでした。

これ以外はアッパーグレード品だけあってかなり優秀で、特に時間経過で開いてくるピーチやトロピカルは結構いい感じ。オイスター的磯っぽさは、ジュラらしさと取れれば寛容できるレベル(好き嫌いは出るとは思いますが…)。纏まりも悪くなく、なんとも惜しい印象でした。

まあ、開栓ほぼ直後でしたし、時間経過で強いフレーバーがこなれ、開いていなかった部分が表出すればもっと良い、値段に敵った味わいに変わることでしょう。そのあたりも含めて良い勉強になった1本でした。

こういう良いボトルがリーズナブルに試飲できるのもイベントならではの楽しみ。

以前と同じ…には戻せないんでしょうけども、願わくば形を変えてでも定番イベントは復活してほしいところです。

セッション
(画像:ニッカウヰスキー「セッション」公式サイトより転載)
☆NIKKA Session 奏楽
 度数:43%
(状態) 開封時期不明/残量:60%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
スイートかつ香ばしさを伴うモルティ、白桃のシロップ、洋梨のコンポート、リンゴのグラッセ、クリーンなイメージのエステリー、蜜柑のピール。クリーミーやフローラルもある。控えめにウッディ、バニラ、土っぽいピーティ。徐々にマンゴーのようなトロピカルフルーツフレーバーが現れる。

味:
ややエッジの効いたビターとウッディ、土と灰のピーティ、シロップのようなクリアーな甘み、マンゴーフレーバー、少々出汁っぽいニュアンスもある。徐々にビターキャラメル、バニラクリーム、仄かなナッティが現れる。フィニッシュはドライ。椎茸の出汁を思わせる土っぽいピーティと、やや石鹸寄りのフローラル、少々のビターが残る。度数のわりに多少刺激が強い印象。

感想:
香りでは圧倒的にスイートとフルーツが優勢で、味ではビターとウッディ、ピーティがメインなイメージ。それぞれの要素がある程度独立して感じられる一方、強く突出する訳でもなく纏まりは良い。加水でビターが和らぎ、ナッツの香ばしい風味が増す。また、それほどバランスが崩れる様子もなかった。普段飲みでもおそらく充分楽しめる印象。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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先日より発売となったニッカウヰスキーの新製品。

国内のモルト原酒(余市、宮城峡)と海外のモルト原酒をブレンドしたブレンデッドモルトです。

本ボトルでは大々的に「海外原酒の使用」が謳われており、原酒の出元として「ベンネヴィス等」と紹介されています。

ウイスキーにお詳しい方でしたら既にご存じの通り、ベンネヴィスはニッカウヰスキーが所有するスコットランドの蒸溜所。ややケミカルなトロピカルフレーバーが特徴的なウイスキーを造っています。

このベンネヴィスの原酒とニッカウヰスキーの製品に関しては、ウイスキーファンの間でこれまでグレーな談義が多く交わされてきたわけなのですが(特にブレンデッドモルト既製品のアレとか)、いよいよ「使ってます」を明示した製品が登場してきた訳です。

これは勿論時代の流れ、ワールドブレンデッドの台頭が大きく影響していると考えるのが自然なんでしょうが、国内製品のレギュレーション(所謂“ジャパニーズウイスキー”表記に係る部分)を考慮した際の、明確な住み分けを行うための準備的な意味合いも感じられます。

つまり、今後は「純国内原酒」製品と「国内と海外のブレンド」製品でブランディングや価格帯の位置づけを区切り、販売していこうという戦略があるように感じられた訳です。あくまで個人の推測ですがね…。


さて余談はさておき肝心の中身ですが、エステリー、トロピカルフルーティ、ピーティがそれぞれ単独でそれぞれしっかり活きている印象でした。つまり、「宮城峡のエステリー」、「海外(ネヴィス)のトロピカル」、「余市のピーティ」という特徴的な要素を活かしたまま、一つの製品の中に詰め込むようなブレンドをしている…といったところでしょうか。

下手をすれば個性どうしが喧嘩し、潰し合ってしまいかねない方向性な訳ですが、絶妙に上手く纏まっています。老舗のブレンド技術は侮れませんね。

ただ、モルト原酒の個性はそれぞれ際立ってはいますが、味わいの印象は、やはりというか当然というか中庸のやや上ぐらい。また、若い原酒由来と思わしき刺激感も多少あり。日飲み用やライトに飲む酒として食中や1杯目あたりに楽しむのが良さそうです。値段的にもちょっとアッパーですが、許容範囲かなと。

飲み方としては加水に耐える印象だったので、ハイボール、ロック、水割り、ストレート等々なんでもいけそう。

多彩な楽しみ方ができるという点では、海外原酒を使っているとはいえ非常に日本らしいブレンデッドモルトであり、間口の広いウイスキーであると言えるでしょう。

海外原酒のブレンド使用に関しては賛否含め様々が意見が飛び交っているところですが、余程のものでない限り、フラットに捉え、先入観なく楽しむのが良いと思います。本ボトルはまさにその好例。斜に構えず楽しめば、無難に充分楽しめる1本です。

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☆KOMAGATAKE(駒ヶ岳)
 Double Cask
 Tsunuki Aging
 Hojo Selection 2020
 Distilled:Apr.2013・May.2016
 [Finishing:Gin Cask]
 度数:54%
 樽種:Bourbon Barrel×2 ⇒ Gin Cask
(状態) 開封後数日/残量:90%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
ナッツチョコ、キャラメルソース、灰と土のピーティ、針葉樹の木材、駄菓子のラムネフレーバー、乾燥したジュニパー、仄かにシトラスのニュアンス、ポテトサラダのようなファッティで粉っぽい穀物のイメージ。

味:
比較的尖った口当たり。ビターかつスパイシーさを伴うウッディ、シトラスのピール、レモンフレーバー、和山椒のホットなスパイシーさ、仄かに穀物系のスイート。ボタニカルなビター感と清涼感。次第に脂肪のファッティ、松ヤニが現れる。フィニッシュはライトかつドライ。

感想:
香り、味ともにジンらしいフレーバーが混ざる。また同時に若いバーボンカスク原酒らしいファッティさと乾いたウッディのニュアンスも前面に出ている印象。味わいは結構ドライでさっぱりした仕上がりで、香りほど複雑ではない。刺激的な面では如何にも若々しいが、ニューポッティな部分はジンカスク由来のフレーバーがカバーしているようだ。トニックウォーターで割ると、また違った印象に変貌し面白い。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い
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マルス津貫蒸溜所に併設された「寶常」。

本坊家旧邸を改装したビジターセンターで、内装は古き良き日本家屋の中に、アンティーク調の家具・調度品と装飾が施された和洋折衷、モダンで美しい空間に仕上がっています。

ここには試飲用のバーカウンター、ショップが設置されているほか、食事用のテーブルや中庭を望むテラス席も完備。バーカウンターではマルスウイスキーの各製品が試飲できることに加え、コーヒーやソフトドリンク、軽食も可能です。

この寶常のショップ限定で販売されているのが「駒ヶ岳 津貫エイジング寶常セレクションシリーズ」。マルス信州で蒸溜された原酒を津貫で熟成させたものをボトリングしたもので、一般販売の「駒ヶ岳 津貫エイジングシリーズ」とは違いシングルカスクまたはダブルカスクでのボトリングです。

また、寶常セレクションは基本的にイヤーボトリング品で、毎年毎年ボトルのカラーリングと使用する樽種、またはフィニッシュを変えてリリースされており、今回はマルス津貫で製造されているジン、「和美人」のカスクエイジド品に使用された樽をフィニッシュに使用したものとなっています。

ちなみにイヤーボトリングと言いつつ、今回の寶常セレクションは2020年内2種類目というイレギュラーリリース。どうやら前ボトル寶常セレクション2020バーボンカスクの売れ行きが良く、年内に在庫を売り切ってしまったため急遽追加されたボトルのようです。

さてそんなボトルの中身としては、ラベル通りといいますか、バーボンバレルの駒ヶ岳とジンの双方のニュアンスをわかりやすく併せ持っているという印象。ただし、それぞれが結構ピーキーに現れているため、必ずしもバランスよく飲みやすいという味わいではありません。

バーボンバレルの部分としてはウッディやスパイシー、ファッティ。ジンの部分はボタニカル、シトラス、ラムネフレーバー等がそれぞれ顕著。複雑味というよりは、全部の要素を放り込んだような、ちょっと取り留めのない雰囲気を強く感じました。

また、注ぎたてよりも時間が経ったほうが、ストレートよりも何か割材を加えたほうが、棘のある風味が抑えられるような印象でした。私はマスターお薦めのトニックウォーター(常温)割で最後は楽しみましたが、ファッティさとシトラスが程よく立って、口当たりも多少穏やかに収まり飲みやすかったです。

まあ良くも悪くも蒸溜所ショップの限定品。機会に恵まれたなら、一度お試しください。

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☆BALBLAIR
 AGED 25 YEARS
 度数:46%
 樽種:バーボン樽→スパニッシュオーク樽
(状態) 開封後数日以内/残量:90%程度/イベントにて

(テイスティング)
香り:
ビターなココア、洋梨のコンポート、チョコクリーム、年季の入ったオーク材、アメリカンチェリー、モルトの香ばしさ、乾燥した麦わら。暫く嗅ぎ続けると奥からスモモ、リンゴジャム、酸味を伴うエステリー。

味:
軽めなスイート、オーク様なウッディ、強めのビターを伴うタンニン、ハイカカオチョコレート、控えめにドライフルーツのニュアンス、オールスパイスを思わせる甘いスパイシー、フィニッシュはタンニンとナッティ、ビターが混じり合う。アフターテイストはモルティとビター。ビター感は少々口腔内に貼り付き残る。また全体的にピリピリとした刺激あり。

感想:
結構ビターが支配的。加えて度数のわりに刺激感が強く、若々しさとは違う棘を感じる印象。オフィシャルの長熟としてはやや当たりが強く、飲みにくい。バルブレアらしいニュアンスは香りの一部に残る程度で、味わいでは強いビターとウッディ等、明らかに樽感が支配的で他の要素を潰してしまっている。また、ビター感はいつまでも残る。加水でエステリーが多少伸びる印象だったので、時間経過で改善が期待できるのかもしれない。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:悪い

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さて今回は久々にイベント飲み。

阪急英国フェアにて飲んだボトルの紹介です。

まずはバルブレア25年。

2019年にラインナップが全面リニューアルされたバルブレア。以前のシングルヴィンテージリリースから年数表示品に変更となりました。

エントリーグレードとしての12年、ミドルグレードな15、18年、そして25年はアッパーグレードな位置付けの商品となります。

さて、以前12年物に関してはテイスティングレビューを書きましたが、以前のヴィンテージリリースに比べて幾分劣る印象でした。 

で、それを受けての今回。

事前情報でスパニッシュオークが熟成に使用され、実際に酒色がアンバーカラーであるのは知っていたので、おおよその味わいとして程々の熟成感とドライフルーツ、少し強めのウッディとバルブレアらしい太いモルティ、種々のオリエンタルスパイシー、あわよくばスイートなフルーツなんかも!と期待していたの  で  す  が…

まぁ、結果は上記の通り。肩透かし…を通り越してちょっと残念な雰囲気。

やたらとビターとウッディが主張しており、フルーツや力強いモルト感等々の「バルブレアに期待する味」が、強めの樽感によって追いやられてしまった様子です。辛うじてある程度残ったのは一部のスパイス感ぐらい。ちょっとこれでは辛いですね。

加えてなかなか(相当)強気な価格設定で、まあボトルを買うのは(値段的にも味的にも)難しいでしょうし、バー飲みで推奨できるかというと…少々厳しいかなぁと…。

まあ、これ以上はただの悪口になってしまいますので控えますが、しかし、いちファンとしては少々残念に思える結果でした。

ただ、このボトルは今回のイベントの為に新たに開栓された、開栓直後のものであり、香りも味も開いておらず、本領を発揮できないなかったのかもしれません。

いつか、それも検証したうえで、改めて評価ができればいいな、と思っています。

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☆MARS MALT Le Papillon
 クモマツマキチョウ
 Singlu Cask Single Malt
 Distilled:Nov.2015
 Botteled:Jun.2020
 ボトリング本数 643

 度数:58%
 樽種:Sherry Butt
(状態) 開封時期不明/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
過熟のブドウ、スイートなデザートワイン、濃厚なドライフルーツ、フルーツソース、やや刺激的なウッディとアルコール感、洋梨のフレーバー、ピーチやプラムのニュアンス、全体的にクリアなスイート感。

味:
口に含んだ瞬間に強めな刺激。真新しい木材のウッディ、ビターを伴うタンニン、焙煎したモルト、挽きたてのコーヒー。中盤以降はスイートなレーズン、バタークリーム、マロングラッセ、ラズベリー、洋梨のジャム。フィニッシュは短く、淡泊な印象。ドライに切れ上がりながら、ドライフルーツと黒蜜のスイートが残る。

感想:
香り・口当たりともに若い原酒故の刺激と、樽由来のウッディがかなり強い。しかしながら全体的にスイートで癖が少なく、時間を掛ければ案外楽しめる印象でもある。特にドライフルーツの風味はかなり濃厚でスイート。また、それ以外にも洋梨を思わせるエステリーや、乳製品のようなファッティさも感じられ、決して単調なシェリーカスク味にはなっていない。加水すると刺激は多少緩和されるが、一方でタンニンやビターが強調され、隠れていた硫黄の香りが現れてしまう。ストレートで時間を掛けて楽しむのが無難。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:値段相応~やや悪い

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マルスウイスキーが不定期にリリースしているル・パピヨンシリーズ。

ル・パピヨンはマルス信州蒸溜所で蒸溜されたウイスキーをシングルカスクでリリースしている一連のシリーズ。2016年から始まったこのシリーズも本ボトルで9本目。遂に大台が見えてきました。

そんなル・パピヨン第9弾はシェリーバットを信州で熟成した5年物。信州熟成のシェリーカスクというスペックは、本シリーズ初登場だったりします。ついでに、復活後の原酒を使ったリリースとしても、シェリーカスク単体でのリリースは結構レアケース。

尚、原酒のタイプは2014年から仕込みを開始したノンピートタイプとなっています。

個人的意見として、マルス信州の原酒は概ね6~7年物ぐらいからポテンシャルを発揮してくる印象。それ未満のものでは若さが先立ち過ぎてしまい、または樽感が目立ってしまうような気がします。そして本ボトルはその6~7年を下回るもの。

試飲前は少々の心配がありましたが、実際飲んでみるとこれが案外GOOD。

香りも味もそれほど嫌味が無く、たしかに原酒の若い感じと樽感の強さは伴うものの全体的にスイートでフルーティ。しかもシェリー樽に特徴的なニュアンス以外にも、マルス信州らしい木の実系エステリーとファッティが活きている印象で、悪くありません。

ただ、やはりというか当然というか、味わい全体は濃いめで強めなので、ずっと飲んでいられる程やさしくなく、また加水で少々ネガティブなニュアンスが浮き出てしまうため、厳しめですが評価「3」と表記しました。

しかしながら、なかなかリリースの機会の無かった信州のシェリーカスクであることに加え、これまた近年から仕込み始めたため出番の少なかったノンピート原酒、そして現行(復活後)のマルス信州では比較的長い酒齢となる5年熟成ということで、試す価値は大いにあるボトルかと思います。

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☆MARS WHISKY 浅葱斑
 Blended Japanese Whisky
 AGED 8 YEARS
 2020 Limited Release
 度数:48%
(状態) 開封後数日/蒸留所にて

(テイスティング)
香り:
オーク材のウッディ、熟成庫の樽香、ふんわりとしたバターケーキ、桃のジャム、プラム、グレーン由来のスイート、ゆで小豆、バニラ、仄かにシトラスのピール、漢方を思わせるボタニカルなニュアンス。

味:
軽快な口当たり。柑橘のピールを思わせるビター、乾いた針葉樹の木材、プラム、土蔵の中のような土っぽさ、バタークッキー、バニラフレーバー。終盤からグレーン原酒らしい穀物のスイート。フィニッシュにかけて乾いたウッディと穀物のスイート、クローブのようなオリエンタルスパイスが交じり合い、ゆっくりと消える。後味にはボタニカルなビターテイストが残る印象。

感想:
程よい熟成感とマルス信州のモルトらしさが現れ、予想以上に良く纏まっている。特に香りはウッディさとスイート、ふくよかさのバランスが良く、なかなかの出来。味わいもややライトで単調気味ながらバランスを崩さず、口当たり軽く飲みやすい。何よりグレーンが出過ぎず、モルトの下支えとしてしっかり機能しているのが良い。加水ではファッティさとビターなウッディが強調されるが、悪印象はない。

評価:3~4(日飲みできる~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:良い~値段相応

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この度創業35周年を迎え、製造棟およびビジターセンターの全面リニューアルを果たしたマルス信州蒸溜所。

その記念として数量限定でリリースされたのが本ボトルです。

ラベルに描かれているのはボトル名称の由来でもある「浅葱斑(アサギマダラ)」。アジア圏の大陸および日本に分布し、長距離を飛行移動する蝶として有名です。

実はマルス信州蒸溜所のある上伊那郡宮田村にも浅葱斑は飛来し、観光の目玉ともなっています。

そんな地元に馴染みのある蝶をラベルとした本ボトルは、マルスでは数少ないオールジャパニーズを標榜したブレンデッドウイスキー。それも年数表記としては操業再開後の最長熟成年数に匹敵する8年表記となっています。

使用されているモルト原酒は逆算すれば判る通り、旧岩井式ポットスチルで蒸溜した2011~2012年頃のもの。当然、再開後に製造した原酒としては最長熟成のものです。グレーン原酒は当然他社のものではありますが、かつて、操業再開と前後して国内から買い付けたものを自社で8~9年貯蔵・熟成したものとされています。つまり、蒸溜所の再開から今日までの時間をまさに一緒に過ごしてきた原酒たちが使われている訳であって、そういった意味でもアニバーサリーにふさわしく、なかなか贅沢な逸品と言えます。

さらにモルト原酒も従来品に比べて多い割合で使用され、度数もやや高めに設定されています。アニバーサリーを祝したリリースとしては十分すぎるスペックかもしれません。しかもマルスのブレンデッド限定品として飛び過ぎない価格設定。結果、相対的にとはいえ、なかなか満足度・コスパ高めなボトルとなっています。


さて、実際に味わった感想ですが、香り・味ともにモルト原酒由来のニュアンスが主体な印象。グレーン原酒の要素は、その使用割合と熟成年数のおかげか下支えに徹しており、主張せずともしっかりと仕事をしているなぁという感じでした。

うん。良いねこれ。


8年熟成と、他と比べればまだまだ若い部類に入る原酒を使用していながら、若いネガティブな部分はおおよそ気にならず、しかししっかりとモルトが活きています。特にバターケーキやクッキーのような心地よい穀物感とファッティの合わせ技はかなり好印象。ピート感も上手くこなれ、土っぽさが良いスパイスとして効いています。

多少のビター感とやや主張のあるウッディが一瞬気になりましたが、グレーンの甘さと風味が上手くフォローしてくれているようで、嫌味に感じることはありませんでした。勿論、グレーンの甘さが際立つ感じでもなし。ホントいい具合です。

失礼を承知のうえで言うと、正直なところマルスのブレンデッドに対して一定以上の期待はこれまで抱いていませんでした。そして実際に飲んでみた感想としても一線を画すほどの出来を感じたことはなく、良くも悪くもない中頃の出来、といったイメージだったわけです。

今回もリリース情報からスペックは知っていたものの、まあ一回飲めればいいか程度に考えていた訳なのですが、いやはやびっくり。思いの外な良さに驚いた次第です。

無論、原酒の豊富な大手国内メーカーや歴史の長い海外ブランドに及ばない部分は当然ながらあるのですが、こういう出来の商品を出せるということは、今後のリリースに大いに期待が持てる訳で、いちファンとしては大変嬉しい1本でした。


尚、詳細なスペックや考察、マルスウイスキー史に関してはこちらの動画が詳しいので、興味のある方は一見の価値ありです。

Youtube:SILKHATチャンネル
MARS WHISKY 浅葱斑・テイスティング動画(前編)
MARS WHISKY 浅葱斑・テイスティング動画(後編)

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☆駒ヶ岳 KOMAGATAKE Limited Edition 2020
 度数:50%
 樽種:シェリー樽、アメリカンホワイトオーク樽が中心
(状態) 開封後1週間以内/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
若木のような青さを伴うウッディ、ドライフルーツのスイート、和山椒のニュアンス、リンゴのコンポート、ビターを伴うレモンピール、柑橘の爽やかな風味、青梅や未熟なプラム。スワリングすると次第に粉っぽい穀物感やナッティが現れる。仄かにスモークが漂う。

味:
ビターを伴うウッディ、控えめにシロップのスイート。中盤から徐々にタンニン、梅の種、バニラ、柔らかいエステリーなどが開く。控えめながらドライフルーツもある。フィニッシュはタンニンとビターなウッディ、リンゴを思わせる柔らかいエステリーが重層的に伸びる印象。アフターテイストで仄かに土っぽさとバルサミコ。全体的にビターでドライ寄り。

感想:
全体を通してビターな風味・味わいが支配的ではあるが、悪目立ちする要素も無く、落ち着いていて飲みやすい。シェリー樽由来の風味よりもアメリカンホワイトオーク樽のニュアンスが強い印象で、マルス信州のモルトに特徴的な風味(プラム、リンゴのエステリー、ウッディ等)もしっかりと出ており、悪くない。加水するとウッディがより薫り高く広がる。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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毎年恒例のマルス信州発の駒ヶ岳リミテッドエディション。

今年はシェリー樽とアメリカンホワイトオーク樽の原酒をメインにバッティングしているとのことですが、実際に味わってみるとシェリー樽の要素は相当控えめに感じられました。どちらかといえばアメリカンホワイトオーク(新樽)の風味が支配的。

全体的に見ると、味わいの方向性として比較的ビターに寄っており、この辺りもおそらく新樽の要素が強く出ている証拠なんじゃないかなぁ…と思っている次第です。

しかしビター主体と言っても決して悪い印象は無く、どちらかというと落ち着きのある感じで、加えてマルス信州のモルト原酒らしい要素もしっかりと持ち合わせた、駒ヶ岳のスタンダード品らしい仕上がりでした。

しかしやはり惜しむらくは価格面。まだまだ安定供給の難しい状況であることは承知のうえなのですが、もうちょっと落としていただけると有難いなぁ…なんて思ったり思わなかったり(汗

さて、本ボトルを以て駒ヶ岳リミテッドエディションは3年目となります。毎年毎年バッティングの内容、特に軸となる原酒の樽種を変えながら続いているこのシリーズは、いつの日かリリースされるであろう定番品シングルモルト駒ヶ岳のプロトタイプともいえます。

そしてあくまで主観ではありますが、リリースの度に味わいの良さがアップしているように感じています。それは使用できる原酒の酒齢が上がってきていることは勿論のこと、製造スタッフの方々のブレンド技術が向上している証拠でもあります。ということは今後どんどん製品の品質が上がっていくという期待が出来るわけでもあって、とにかく成長株であり続けてくれることは、いち飲み手にとって本当に有難いことな訳です。これからも変わらず頑張っていただきたいですね。

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☆BALBLAIR 1997 SINGLE CASK
 Distilled 1997 Bottled 2015
 SHINANOYA TOKYO
 度数:52.2 Cask No. 909
 樽種:1st FILL BARREL
(状態) 開封後1年/残量:60%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
甘やかで少々溶剤的なエステリー、梨、リンゴ、ミルクのキャンディ、乾いた穀物の香ばしさ、透明感のあるスイートも感じる。仄かにウッディなビターとホワイトペッパーのスパイス感もあり。時間経過で次第にオレンジオイル。

味:
オレンジピール、ビターを伴うウッディ、クリアーなエステリー、香ばしい穀物、ボタニカルなニュアンス。終盤からはクリーミーで少しオイリー、加えてジンジャーやスパイス。フィニッシュはクリーミーでスイート、一拍置いてオレンジビター、仄かにカカオのようなニュアンスもある。後味にはシトラスの風味にバナナが混じる。

感想:
香りではリンゴや梨のエステリー、味ではオレンジが先行する。全体的に甘やかでクリーミーかつビター。程よくウッディで芯が太く、フィニッシュから後味まで長くスイートが続く。加水ではエステリーがやや強調され、クリーミーは影を潜める印象。少々アルコール感が強いが、許容範囲。後味に抜けてくるシトラスとバナナが心地よい。

評価:4(美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:値段相応~高額だが納得

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2016年に信濃屋がリリースしたバルブレアのオフィシャルプライベートボトル。バルブレアにおいては国内では初のオフィシャルPBだったようです。

味わいはオレンジや主張あるエステリーを筆頭に、クリーミーで香ばしいモルト感とスイート、そしてビターが主体。ウッディやスパイシーはそこまで前面に出ず、味を邪魔せず引き立てる印象です。

中熟のバルブレアとして期待する要素を概ね全部持っているイメージ。ただ、度数のわりに少々アルコール感が刺激的に感じられました。まあそれも含めて中熟ならではと言ったところでしょうか。良く言えば飲みごたえと飲みやすさが同居できているイメージ。どちらにせよ完全にネガティブ、という訳ではありません。

少し度数落ちすれば、また香り立ちも変わってくるかもしれませんね。そういった点でも長く楽しめそうな1本かと思います。

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