ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

タグ:マルス

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☆KOMAGATAKE(駒ヶ岳)
 Double Cask
 Tsunuki Aging
 Hojo Selection 2020
 Distilled:Apr.2013・May.2016
 [Finishing:Gin Cask]
 度数:54%
 樽種:Bourbon Barrel×2 ⇒ Gin Cask
(状態) 開封後数日/残量:90%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
ナッツチョコ、キャラメルソース、灰と土のピーティ、針葉樹の木材、駄菓子のラムネフレーバー、乾燥したジュニパー、仄かにシトラスのニュアンス、ポテトサラダのようなファッティで粉っぽい穀物のイメージ。

味:
比較的尖った口当たり。ビターかつスパイシーさを伴うウッディ、シトラスのピール、レモンフレーバー、和山椒のホットなスパイシーさ、仄かに穀物系のスイート。ボタニカルなビター感と清涼感。次第に脂肪のファッティ、松ヤニが現れる。フィニッシュはライトかつドライ。

感想:
香り、味ともにジンらしいフレーバーが混ざる。また同時に若いバーボンカスク原酒らしいファッティさと乾いたウッディのニュアンスも前面に出ている印象。味わいは結構ドライでさっぱりした仕上がりで、香りほど複雑ではない。刺激的な面では如何にも若々しいが、ニューポッティな部分はジンカスク由来のフレーバーがカバーしているようだ。トニックウォーターで割ると、また違った印象に変貌し面白い。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い
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マルス津貫蒸溜所に併設された「寶常」。

本坊家旧邸を改装したビジターセンターで、内装は古き良き日本家屋の中に、アンティーク調の家具・調度品と装飾が施された和洋折衷、モダンで美しい空間に仕上がっています。

ここには試飲用のバーカウンター、ショップが設置されているほか、食事用のテーブルや中庭を望むテラス席も完備。バーカウンターではマルスウイスキーの各製品が試飲できることに加え、コーヒーやソフトドリンク、軽食も可能です。

この寶常のショップ限定で販売されているのが「駒ヶ岳 津貫エイジング寶常セレクションシリーズ」。マルス信州で蒸溜された原酒を津貫で熟成させたものをボトリングしたもので、一般販売の「駒ヶ岳 津貫エイジングシリーズ」とは違いシングルカスクまたはダブルカスクでのボトリングです。

また、寶常セレクションは基本的にイヤーボトリング品で、毎年毎年ボトルのカラーリングと使用する樽種、またはフィニッシュを変えてリリースされており、今回はマルス津貫で製造されているジン、「和美人」のカスクエイジド品に使用された樽をフィニッシュに使用したものとなっています。

ちなみにイヤーボトリングと言いつつ、今回の寶常セレクションは2020年内2種類目というイレギュラーリリース。どうやら前ボトル寶常セレクション2020バーボンカスクの売れ行きが良く、年内に在庫を売り切ってしまったため急遽追加されたボトルのようです。

さてそんなボトルの中身としては、ラベル通りといいますか、バーボンバレルの駒ヶ岳とジンの双方のニュアンスをわかりやすく併せ持っているという印象。ただし、それぞれが結構ピーキーに現れているため、必ずしもバランスよく飲みやすいという味わいではありません。

バーボンバレルの部分としてはウッディやスパイシー、ファッティ。ジンの部分はボタニカル、シトラス、ラムネフレーバー等がそれぞれ顕著。複雑味というよりは、全部の要素を放り込んだような、ちょっと取り留めのない雰囲気を強く感じました。

また、注ぎたてよりも時間が経ったほうが、ストレートよりも何か割材を加えたほうが、棘のある風味が抑えられるような印象でした。私はマスターお薦めのトニックウォーター(常温)割で最後は楽しみましたが、ファッティさとシトラスが程よく立って、口当たりも多少穏やかに収まり飲みやすかったです。

まあ良くも悪くも蒸溜所ショップの限定品。機会に恵まれたなら、一度お試しください。

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☆MARS WHISKY 浅葱斑
 Blended Japanese Whisky
 AGED 8 YEARS
 2020 Limited Release
 度数:48%
(状態) 開封後数日/蒸留所にて

(テイスティング)
香り:
オーク材のウッディ、熟成庫の樽香、ふんわりとしたバターケーキ、桃のジャム、プラム、グレーン由来のスイート、ゆで小豆、バニラ、仄かにシトラスのピール、漢方を思わせるボタニカルなニュアンス。

味:
軽快な口当たり。柑橘のピールを思わせるビター、乾いた針葉樹の木材、プラム、土蔵の中のような土っぽさ、バタークッキー、バニラフレーバー。終盤からグレーン原酒らしい穀物のスイート。フィニッシュにかけて乾いたウッディと穀物のスイート、クローブのようなオリエンタルスパイスが交じり合い、ゆっくりと消える。後味にはボタニカルなビターテイストが残る印象。

感想:
程よい熟成感とマルス信州のモルトらしさが現れ、予想以上に良く纏まっている。特に香りはウッディさとスイート、ふくよかさのバランスが良く、なかなかの出来。味わいもややライトで単調気味ながらバランスを崩さず、口当たり軽く飲みやすい。何よりグレーンが出過ぎず、モルトの下支えとしてしっかり機能しているのが良い。加水ではファッティさとビターなウッディが強調されるが、悪印象はない。

評価:3~4(日飲みできる~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:良い~値段相応

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この度創業35周年を迎え、製造棟およびビジターセンターの全面リニューアルを果たしたマルス信州蒸溜所。

その記念として数量限定でリリースされたのが本ボトルです。

ラベルに描かれているのはボトル名称の由来でもある「浅葱斑(アサギマダラ)」。アジア圏の大陸および日本に分布し、長距離を飛行移動する蝶として有名です。

実はマルス信州蒸溜所のある上伊那郡宮田村にも浅葱斑は飛来し、観光の目玉ともなっています。

そんな地元に馴染みのある蝶をラベルとした本ボトルは、マルスでは数少ないオールジャパニーズを標榜したブレンデッドウイスキー。それも年数表記としては操業再開後の最長熟成年数に匹敵する8年表記となっています。

使用されているモルト原酒は逆算すれば判る通り、旧岩井式ポットスチルで蒸溜した2011~2012年頃のもの。当然、再開後に製造した原酒としては最長熟成のものです。グレーン原酒は当然他社のものではありますが、かつて、操業再開と前後して国内から買い付けたものを自社で8~9年貯蔵・熟成したものとされています。つまり、蒸溜所の再開から今日までの時間をまさに一緒に過ごしてきた原酒たちが使われている訳であって、そういった意味でもアニバーサリーにふさわしく、なかなか贅沢な逸品と言えます。

さらにモルト原酒も従来品に比べて多い割合で使用され、度数もやや高めに設定されています。アニバーサリーを祝したリリースとしては十分すぎるスペックかもしれません。しかもマルスのブレンデッド限定品として飛び過ぎない価格設定。結果、相対的にとはいえ、なかなか満足度・コスパ高めなボトルとなっています。


さて、実際に味わった感想ですが、香り・味ともにモルト原酒由来のニュアンスが主体な印象。グレーン原酒の要素は、その使用割合と熟成年数のおかげか下支えに徹しており、主張せずともしっかりと仕事をしているなぁという感じでした。

うん。良いねこれ。


8年熟成と、他と比べればまだまだ若い部類に入る原酒を使用していながら、若いネガティブな部分はおおよそ気にならず、しかししっかりとモルトが活きています。特にバターケーキやクッキーのような心地よい穀物感とファッティの合わせ技はかなり好印象。ピート感も上手くこなれ、土っぽさが良いスパイスとして効いています。

多少のビター感とやや主張のあるウッディが一瞬気になりましたが、グレーンの甘さと風味が上手くフォローしてくれているようで、嫌味に感じることはありませんでした。勿論、グレーンの甘さが際立つ感じでもなし。ホントいい具合です。

失礼を承知のうえで言うと、正直なところマルスのブレンデッドに対して一定以上の期待はこれまで抱いていませんでした。そして実際に飲んでみた感想としても一線を画すほどの出来を感じたことはなく、良くも悪くもない中頃の出来、といったイメージだったわけです。

今回もリリース情報からスペックは知っていたものの、まあ一回飲めればいいか程度に考えていた訳なのですが、いやはやびっくり。思いの外な良さに驚いた次第です。

無論、原酒の豊富な大手国内メーカーや歴史の長い海外ブランドに及ばない部分は当然ながらあるのですが、こういう出来の商品を出せるということは、今後のリリースに大いに期待が持てる訳で、いちファンとしては大変嬉しい1本でした。


尚、詳細なスペックや考察、マルスウイスキー史に関してはこちらの動画が詳しいので、興味のある方は一見の価値ありです。

Youtube:SILKHATチャンネル
MARS WHISKY 浅葱斑・テイスティング動画(前編)
MARS WHISKY 浅葱斑・テイスティング動画(後編)

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☆Single Cask 駒ヶ岳 
 MINAMISHINSHU BEER
 IPA CASK FINISH
 Distilled 2016.2-3 Bottled 2019.10
 度数:59%
 樽種:Bourbon Barrel
(フィニッシュ:IPA CASK)

(状態) 残量:80%程度/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
かなり明確にホップのアロマ、ボタニカルな風味を伴うビター、レモンピール、柔らかめなウッディ、甘さを伴うエステリー、僅かにトロピカルフルーツのスイート感もある。経時的にホップの風味はこなれてゆく印象。アルコール感はやや刺激的。

味:
口に含んだ瞬間からIPAらしいホップとボタニカルなビター感が入り混じる。続けてタンニン、松ヤニを思わせるオイリー、モルトの香ばしさ。中盤からはマンゴー等のトロピカルフルーツも感じられる。経時的にオレンジのシトラスフレーバーやバニラも現れる。
フィニッシュはほろ苦いビター感とボタニカルのアロマ、トロピカルのフレーバー、少しクリーミーな穀物感が中くらいに続く。全体を通して多少のニューポット感も感じられるが、ホップの風味とビターが上手に覆い隠している印象。余韻はドライ。

感想:
最初はホップの香りに圧倒されるが、時間を掛けることで様々な香りが開き、驚くほど楽しめる。熟成年数なりの若さも内包していると思われるが、ホップの風味とビターテイストが絶妙にカバーしており、そのためか若いながらもバーボンカスク由来と思わしきトロピカルのニュアンスが出現。ボタニカルな風味と相まって美味しく仕上がっている印象。ただ、アルコール感はキツめ。尚、加水には耐えられず、ビターな部分だけが強調されてしまう。

評価: 3~4(日飲みできる~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや高額だが納得

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今年の初めにマルス信州蒸溜所ショップ限定で発売されたボトル。

先日、越県が可能になったタイミングに訪問したマルス信州蒸溜所で久々に味わってきました。

フィニッシュに使用されているのは、同敷地内にて操業しているクラフトブリュワリー:南信州ビールのIPAを仕込んでいた樽。フィニッシュの期間は、記憶が確かなら数か月単位で行ったとのことなので、メインの熟成樽であるバーボンバレルにて約6年熟成されていたと考えられます。尚、IPAカスクに入っていたIPAは樽詰め時にホップを相当量追加した物だったらしく、その樽でフィニッシュした結果、スタッフの方々も驚くほどのホップ風味のウイスキーになったとのこと。

実際最初に飲んだ時はその鮮烈なまでのホップの香りに圧倒されました。が、しかし、香りが飛ぶのか自分が香りに慣れるのか、経時的にどんどんホップが気にならなくなり、それどころかバーボンバレル由来と思わしきトロピカルフレーバーが現れ、一気に味わい豊かに変貌。ホップからくるボタニカルな風味やビター感と相まって非常に楽しめる一本でした。

尚、使用されているモルトは3.5ppmのライトリーピーテッドタイプ。…ですが実際の味わいや香りにそれが反映されている雰囲気は殆どなく、言われなければわからないレベルだったように思います。また、原酒の若さからくるニューポット感も多少感じられるものの、気になりそうな部分はすべからくホップがカバーしてくれている印象でした。正直、結構良い感じの出来かと思います。

マルス信州蒸溜所と南信州ビールはお互いに別会社でありながら同敷地内で操業。マルス信州を所有している本坊酒造が南信州ビールの出資者のひとつだったり、前蒸溜所所長の竹平さんが現南信州ビール常務だったりと、いろいろと深い繋がりを持つ企業だったりします。
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今回の駒ヶ岳IPAカスクフィニッシュは、まさにその繋がりが生んだ逸品。コラボレーション商品なわけです。そして勿論、南信州ビールからは逆バージョンともいえる「南信州ビールIPA 駒ヶ岳カスク」がリリースされており、こちらも味わい豊かで美味しい仕上がりとなっています。機会があったら是非お試しあれ。

尚、マルス信州蒸溜所では南信州ビールの樽を使用した製品の開発を、今後も随時行っていく予定とのことです。次なるリリースが待ち遠しいですね。

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☆MARS MALTAGE “COSMO” 越百
 WINE CASK FINISH BOTTLED IN 2020
 度数:43%

(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
イチゴジャム、ラズベリーのフレーバー、煮詰めた赤ワイン、僅かにピーティ、全体的にスイートでスムースな印象。使い込んだ皮製品のような風味もある。

味:
酸味を伴うタンニン、ベリージャムの甘さ、終盤にかけてゆで小豆ような風味も。若干の硫黄っぽさ。仄かにピーティ。口当たりは比較的スムースで、全体的にライトな印象。フィニッシュはタンニンとベリーの風味で、ドライ気味。

感想:
全体的にワインカスクのフレーバーがカバーしており、元の越百らしい部分(特に酸味のある穀物感)は隠れてしまっている印象。良くも悪くもマルスのワインカスク味。加水することでモルティと柔らかいピーティが顔を出す。中庸なイメージだが、ベリーとピーティのバランスの良さが好印象。ハイボールではベリーが失われ、硫黄とエグみが強く出てしまう。もう一声安ければ…。

評価:3~
4 (可も不可もなし/美味しく感じる)

コスパ:やや悪い

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つい先日リリースされたマルスのブレンデッドモルト、越百のカスクフィニッシュシリーズの1本。昨年のマンサニージャカスクに続き、今年は自社のワインカスクがフィニッシュに使用されています。

マルスウイスキー(本坊酒造)といえば、駒ヶ岳や岩井トラディションなどのバリエーションとして、ワインカスクフィニッシュの製品を数多くリリースしていることで有名。

使用されているワインカスクは、本坊酒造が山梨に持つワイナリーから取り寄せたもの。ワイナリーから蒸溜所のある南信州までは車でおよそ2時間程度と近く、ワインの樽出しからウイスキーのフィリングまでに余計な時間が掛かりません。つまりワイン樽の劣化を最小限に抑え、比較的フレッシュな状態で使用できるわけです。

この比較的フレッシュなワインカスクを使用しているためかどうか定かではありませんが、マルス信州のリリースする各ワインカスクフィニッシュ品はフレッシュでスイートなベリーの香味がより強く、味わいもラズベリージャムのような甘酸っぱい印象にマスクされていることが個人的に多い印象です。

本ボトルも漏れなくそっち系の香りがしっかりと上乗せされたイメージの出来。加えて越百が本来持ち合わせているソフトなピート香がスパイス的に効いて、意外と悪くないバランスでした。

ただし、多めの加水でエグみや硫黄臭といったネガティブな要素が表出してしまい、残念ながらハイボールではその良さを発揮しきれない印象。ストレートか、いっそカクテルベースにするのが良さそうです。

昨年のマンサニージャがハイボールと好相性だったが故に、ちょっと残念な結果でした。が、ストレートや少量の加水ならば十分に楽しめる出来かと思います。ただし、お値段と入手のハードルはちょっと高め。

尚、この越百のカスクフィニッシュシリーズは現在のところ、年替わりで1種類ずつリリースされる予定とのこと。ロット数の問題なのか、それとも試験的なリリースという位置づけなのか、そのポジションは判然としないものの、意外と粒ぞろいなボトルが続いている本シリーズ。さて次回はどんなボトルが登場するのでしょうか、楽しみではあります。

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☆津貫ニューメイク 931DAYS
 Yakushima Aging Peat:3.5ppm
 Distilled:2017.02 Bottled:2019.10
 度数:60%
 樽種:Burbon Barrel
(状態) 開封後5ヶ月/残量:70%程度/自宅

(テイスティング)
香り:
やや酸味の際立つニューポッティな香り、やや強めのアルコール感、ミカンジュース、カボスや柚子を思わせる青々とした柑橘、ややしっかりとした木材、クリーミーな穀物のニュアンス、僅かにスパイシー。

味:
かなり棘のあるアタックとドライなモルトの風味、柑橘のピールを思わせるビターな果実味、しっかりと主張のあるウッディ、僅かにファッティな部分もある。フィニッシュは短く、強めのウッディと独特な酸味、穀物の香りが残る。

感想:
口当たりは相当に若々しく、刺激的。一方で青々とした柑橘のニュアンスが非常に顕著に現れており、決して飲みやすくはないものの面白さはある。加水しても荒々しさは残るが、よりカボスや柚子のような青い柑橘系の風味が強調される。

評価:なし(ニューメイクのため)

コスパ:なし(イベント用のため)

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2017年以降、毎年11月に開催されている本坊酒造株式会社主催のマルス津貫蒸溜所祭り。

津貫蒸溜所の周年祝いとして催されるこのイベントは、同時にファン感謝祭といった趣向も併せ持ち、毎年多くの参加者で賑わいます。

そんな津貫蒸溜所祭り限定で販売されるのが、500mlのボトルに詰められた津貫ニューメイクシリーズです。このボトルは、未だシングルモルトの発売されていない津貫の原酒の味わいを、いち早くマルスウイスキーファンに味わって欲しいという本坊酒造の方々の好意であると同時に、津貫原酒の方向性を一般のウイスキーファンが体感できる数少ない機会のひとつでもあります。

2018年までは津貫製造のニューポットを津貫蒸溜所の熟成庫で熟成した純津貫製のニューメイク(未だ3年の熟成期間を経ていないもの)をボトリングしていましたが、2019年は過去2回とは趣向を変え、津貫製造のニューポットを信州および屋久島の熟成庫にて熟成した、所謂「信州エージング」と「屋久島エージング」のリリースとなりました。

本ボトルはその1本、「屋久島エージング」です。

屋久島エージングはフェノール値:3.5ppmのライトリーピーテッド麦芽で仕込まれた原酒。熟成期間は3年に僅かに届かぬ931日です。

やはり熟成途中のニューメイクということだけあって、ニューポットのニュアンスが全面に現れたテイストで、アルコール度数もバレルエントリーから殆ど変わらない(マルスは基本的に60%で樽詰め)60%である為に非常に刺激の強い口当たりです。

その一方でウイスキーとしての味わいも、しっかりと付き始めている印象。とりわけ駒ヶ岳(信州蒸溜所原酒)の屋久島エージングのものに共通して現れている「青っぽい柑橘」の要素が同様に現れていました。

また、温暖な気候が影響してか樽のウッディさが非常に強く出ており、スパイシーさと相まって結構刺激的。津貫原酒の目指す「深みとエネルギッシュさ」といったニュアンスはこのウッディさとニューポットのアルコール感に紛れ、判然としない印象でした。

ともあれ、そのあたりは熟成を重ねていくことで改善が期待できる部分。今後、熟成年数に従って順にこなれてくるのではないかと思います。これからのリリースに期待ですね。

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☆Single Malt 駒ヶ岳 Yakushima Aging 
 Bottled in 2020

 度数:53%
(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅

(テイスティング)
香り:
すだちの皮、スポンジケーキのような甘さを伴う香ばしさ、清涼感を伴うハーブオイル、ウッディ、オレンジピール、仄かにスモーキー。

味:
序盤はバニラ・バナナ等を思わせるしっかりとした甘みと、ドライなウッディ。中盤からは青みと酸味を伴う柑橘が加わる。終盤にかけて穀物様の香ばしさ、オイリー、灰汁っぽさとスモーキーさを感じる。アルコールの刺激は結構強め。フィニッシュはビターでドライ。さっぱりとした印象。

感想:
全体的にシンプル。特にフィニッシュはかなりあっさりしている。また、若く荒っぽい部分も相当に感じられたが、その中にも屋久島エイジングらしい青っぽい柑橘、バーボンカスク由来らしいバニラやオレンジのフレーバーをしっかり感じることができる。加水にもそれなりに耐える印象。

評価: 
2(飲めないことはないレベル)~ 3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い

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マルスウイスキー(本坊酒造)より年に1回のペースでリリースされている、シングルモルト駒ヶ岳・屋久島エージングシリーズ。このボトルは先日発売となったシリーズ第3弾です。

屋久島エージングは、マルス信州蒸溜所で造られた原酒を、遠く屋久島の専用熟成庫(エージングセラー)まで運んで熟成させた原酒で構成されているシリーズで、第1弾がバーボンカスク、第2弾がシェリーカスクをそれぞれ主体としたバッティングでした。

今回は再びバーボンカスク原酒、それもノンピートのものが主体だそう。しかしながら、スパイス的にピートタイプ原酒もある程度加えられているようで、全体を纏める良いアクセントとして感じられました。

一方で、やはり酒齢が若いことから荒々しさはかなり残っている印象。まだまだ道半ばといった印象です。

屋久島エージングセラーは2016年に建設された熟成専用の施設。信州や津貫で製造された原酒を移送・熟成しています。気温湿度共に高い環境故、ウイスキーの熟成は早く進むと考えられますが、今回のテイスティングの具合からすると、ここで眠る原酒がその真価を発揮するのは、まだもう少し先のことと思われます。

尚、先述の通り屋久島では信州原酒の他に津貫の原酒も熟成中。こちらのボトリングも待たれるところです。

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☆Single Cask 駒ヶ岳 AGED 6 YEARS
 Distilled 2013.3 Bottled 2019.10
 度数:59%
 樽種:Madeira Cask
(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅

(テイスティング)
香り:
リンゴジャム、レーズンバター、カラメル、仄かにカカオ、梅酒、バゲッドやラスクのような香ばしさ。

味:
序盤からしっかりとしたオーク様のウッディさ、タンニンが感じられる。スイートで、ボディもそれなりにしっかりした印象。中盤にはカスタードクリーム、または卵成分の多いプリン。濃厚なベリーのソース。終盤にかけてレーズン等のドライフルーツ、プルーンのジャム、僅かに硫黄っぽさも感じる。少々灰っぽいピーティさも。フィニッシュはハイカカオチョコのようなビターと控えめなスモークが長く続く。後味でやや強いエグみが残る。

感想:
樽由来の比較的しっかりとしたウッディと、フォーティファイドワイン樽らしいベリーとドライフルーツ感、およびカスタードクリームを思わせるクリーム感に控えめなピートが程良いスパイスとなって、重層感のある、なかなか楽しめる味わいに纏まっている。若干のエグみが気になるところだが、問題になる程ではない。加水すると、ややドライな方向にシフトする。


評価: 4(ゆっくり楽しめる)~
5(非常に美味しい)

コスパ:値段相応
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この春先に発売された駒ヶ岳のシングルカスクエディションの1本。もう1本は91年ヴィンテージの28年物でした。

この新旧合わせたシングルカスクリリースは昨年同時期にも行われています。折しもそれは日本におけるウイスキー・スピリッツを対象とした初のコンペティション、TWSCの開催に合わせた形となりました。結果は、見事に2本とも最高金賞を獲得。

そして今年もやはりTWSCを見据えたリリース。が、残念ながら開催は5月に先送りに。ジャッジは先のお楽しみ。

さて肝心な味わいの方はというと、やはりコンペの出品を前提としたであろうセレクトなだけあって、多少のエグみを伴いながらも重層感のある、非常に楽しめる味わいとなっていました。尚、マデイラカスク単体でのリリースは(おそらく)今回が初。

正直、信州蒸溜所のメインとされるバーボンカスク、ないし最近リリースの多い新樽熟成の原酒に比べると、シェリーカスクはじめ、ワイン系カスクの原酒に関しては少々期待値が…というのが従来の感想でした。が、このボトルはそんな心配を見事に払拭してくれる出来でした。

正直、これはなかなか良いな、と。


個人的に信州の原酒は概ね6年以上の熟成でポテンシャルを発揮してくる印象。特に近年リリースのボトルでは「マルスモルト ル・パピヨン ギフチョウ」にて、それを実感しました。

本ボトルのヴィンテージは2013年。この年はマルス信州蒸溜所が2011年に復活して以降、原酒製造の方向性が定まり、いよいよ本格的・安定的にウイスキー製造に着手しはじめた時期と聞きます。尚、2013年以降は製造量的にも増産の方向にシフトおり、貯蔵されている原酒の量的にも余裕の出始めるヴィンテージかと思われます。
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さて、自分の考察が正しければ、今後、再稼働後の原酒で熟成期間6年以上の、品質的にも比較的安定した、美味しいウイスキーが登場する機会が増えると勝手に予想。今後に期待が膨らむところです。

〇 成長を見せた信州の原酒。ウッディな味わいが好印象な1本。
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☆MARSMALT Le Papillon ギフチョウ
 Single Cask Single Malt Japanese Whisky
 Distilled and Matured at Mars Shinshu Distillery
 Distilled:Jan.2013  Botteled:Apr.2019
 度数:58%、
 樽種:アメリカンホワイトオーク(新樽)


(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
プラム、カカオやエスプレッソに近いほろ苦さ、湿り気のある木材のウッディネス、木酢や柿渋、過熟のリンゴ、クローブ、鰹出汁を思わせるニュアンスも。まだ若々しいニューポット感も残っている。

味:
オーク材のウッディで芳醇な香り、控えめで上品な甘さ、樽熟の梅酒または完熟のプラム、ハイカカオのビターチョコレート、クローブやオールスパイスのような甘くウッディなスパイス香、終盤で少々アルコール刺激があるが、度数ほどではない印象。もみ殻のような香ばしさ、梅の種の部分のような青っぽさも感じられる。フィニッシュはやや短めで穏やか。ミドルボディ程度ながら、熟成感も感じられる。

感想:
香りではやはりニューポット感が否めないものの、全体的にウッディで上品な印象。カカオのような香ばしさとともに、クローブを思わせるスイートなスパイスが心地よく、しつこい甘さや強すぎるビターも無く、予想以上に楽しめる味わい。加水でややボディ感が崩れる印象だが、ウッディな香りがよく広がる。6年熟成ながら、決して悪くはない完成度。

評価:4(美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや悪い

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マルスウイスキーのシングルカスク限定ブランドであるル・パピヨン。

ラベルに信州の野山に生息する蝶を描き、2016年よりリリース開始。第1弾はオオルリシジミ(アメリカンホワイトオーク新樽、4年熟成)、今作のギフチョウは第7弾にあたります。

原酒はライトリーピーテッドタイプで、樽はアメリカンホワイトオーク新樽。熟成期間は6年となっています。


本シリーズでリリースされる原酒は、現在のところ基本的に2011年の再稼働後の原酒に限られており、どれも若々しいニューポットの印象が強いことが特徴。シングルカスク故希少性は高いものの、ニューポットの刺々しさが先行し、シンプルに味を楽しむには少々難があるイメージでした。

一方で、シリーズを重ねるにつれて熟成期間が長いものがリリースされるようになり、信州蒸溜所の原酒の成長を体感できる、一種の物差しとしても楽しむことができるという、マニアには堪らないシリーズでもあります。ただ、アウトターンの少なさや価格設定の高さからなかなか入手が難しく、またバーでも遭遇の機会に恵まれない(特に首都圏以外)ことが少々難点ではあります。

さて今作ギフチョウですが、シリーズとしては最長熟成の6年物(信州の貯蔵庫で熟成)。前々作のミヤマカラスアゲハ(信州4年熟成原酒)が比較的ニューポット感が強く、若々しい印象だったのに対して、今作ではしっかりと熟成感を感じられ、最初に飲んだ時は予想以上に良い出来だったことにかなり驚いた記憶があります。
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今回改めてテイスティングしましたが、やはりこれまでで一番飲みやすく、樽感・酒質ともに纏まってきているなーという印象。たった2年の熟成期間の違いで(勿論他の要素も多分にあるとは思うが)これ程までに変わるものかと感心した次第です。

私感ですが、再稼働後のマルス信州の原酒は、最初のピークが10年前後に来るのではないかと勝手に予想。ニューポットの棘が取れ、ウッディなニュアンスと良い釣り合いが取れるのではないかと考えています。
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ともあれ、今後の信州蒸溜所原酒の成長に大いに期待をさせてくれる良ボトルでした。

日本の最南端、鹿児島県。その鹿児島県の南さつま市、津貫に現在日本で最も南西部となるウイスキー蒸溜所が存在する。それがここに紹介するマルス津貫蒸溜所だ。
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マルス津貫蒸溜所はマルス信州蒸溜所に続き、本坊酒造株式会社が開設したマルスウイスキー第2の蒸溜所である。実際のところ、過去には鹿児島工場、山梨ワイナリーでもウイスキーの製造が行われていた歴史があり、厳密にいえば本坊酒造史上4つ目のウイスキー製造工場ということになるだろう。
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津貫蒸溜所のある場所は元々焼酎製造を行っていた本坊酒造津貫工場があり、本坊酒造生誕の地でもある。蒸溜所敷地内に高々とそびえる建屋内には、当時焼酎やスピリッツの製造に使用されたスーパーアロスパス式の連続蒸留器が歴史の名残として展示されている。また、連続式蒸溜器は使用されていないものの、津貫蒸溜所の隣には本格焼酎の製造所、貴匠蔵が併設され、現在も焼酎の製造が続けられている。
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津貫は信州蒸溜所と比べて温暖かつ湿潤。ウイスキーの熟成も早く進むとされ、蒸散によって失われてしまう量は年間で6%(信州で約3%程度)になるという。
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また、本坊酒造は津貫蒸溜所と同時に屋久島にウイスキー用のエージングセラー(熟成庫)を開設。信州蒸溜所と合わせ、3カ所に熟成庫を持つことになった。現在、津貫と信州の2蒸溜所で製造したウイスキーを3カ所それぞれ相互に移動、保管し、それぞれ原酒に対してそれぞれの熟成庫の自然環境の影響を加え、性質の異なるウイスキーの完成が目指されている。

信州で蒸溜、津貫および屋久島で熟成した原酒はそれぞれ「駒ヶ岳 津貫エイジング」「同 屋久島エイジング」として既にリリースされている。これらはまだ短熟の製品ではあるが、それぞれ熟成環境の違いが少しずつ現れており非常に興味深い仕上がりになっている。今後5年、10年と経過することでどのような味わいに変わるのか、長熟ボトルのリリースが楽しみだ。

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尚、津貫原酒の信州、および屋久島のエイジングシリーズはまだ一般販売されていない。今年の蒸溜所イベントで初めて限定販売され、蒸溜所へ行けばまだ試飲も可能だ。信州、屋久島ともに試飲をしたが、とても面白い出来栄えになっていた。気になる方は一度蒸溜所にて試飲することをオススメしておく(残念ながらボトル販売分は完売)。

去る令和元年の8月中旬、マルス信州蒸溜所を見学に訪れた。

久しぶりの…と言いたいところだが、実はこの5月GW連休に訪れたばかり。3ヶ月振りの再訪となった。
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前回訪問から僅か3ヶ月だったが、敷地内の様子は大きく変化。
敷地内は2020年のリニューアルを控えて絶賛工事中であり、奥側の拡張工事現場は変わらずあったのだが、その時点で存在していたはずの旧事務所建屋は既に取り壊され、新建屋の基礎工事の最中であった。
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また、以前の売店スペースはバリアフリーが意識された、きれいなトイレに変わっていた。
来る度変化する蒸溜所内の景色を横目に試飲カウンター兼見学受付へ。
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既に夏季のメンテナンス期間に入っていたため、製造作業の見学はできなかった。製造作業の再開は8月の末を予定しているとのことで、この記事を書いている9月初旬には既に製造シーズン真っ只中と思う。
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設備をぐるっと見学し、お決まりの試飲へ。南信州ビールで喉を潤し、製品の試飲へ。
この日は盆期間の最初だったこともあってか、開店から断続的に団体客が来訪し、カウンター、そして併設のショップは途切れなく賑わっていた。混雑の合間を縫うようにしてスタッフさんと僅かながら情報交換。

新蒸溜エリアのレイアウトや新試飲カウンターについて等々…訪客で途切れ途切れになりながらも、有意義な会話ができた。
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製品試飲のほうでは先頃発売されたル・パピヨン ギフチョウの出来に驚かされた。
シングルカスクのシリーズとなるル・パピヨンでは初の6年物。昨年冬頃から発売された駒ヶ岳シングルカスク2012と並ぶ熟成年数であり、蒸溜所再開後の製品としては現行最長熟成年数でもある。これまでのル・パピヨンでは3~4年程度の原酒のリリースが主体であり、概ね未熟感の存在する少々飲みにくいボトルという印象が強かった。そんな飲みにくさの中にも様々あるポジティブな要素、例えば青梅や南国フルーツに繋がる要素を拾い出しては将来の原酒の出来栄えを夢想し楽しむというちょっと(というか相当)コアな飲み方をしていたのだが、今回は無用。これまでのニューポットさが大きく抜け、ウッド、バニラ、フルーツと所謂ウイスキーのわかりやすい旨さが詰まっていた。既にある程度満足できる味であると共に、これから先10年物や15年物に大きく期待が持てる出来栄えであった。
マルスウイスキーファンにはその美味しさに加え、将来の原酒の出来を想像する材料としても一度口にして頂きたい逸品である。残念ながら限定品でありアウトターンも決して多くない為、ボトルの入手は困難であるが、バー等ではまだ飲むことができる。勿論、蒸溜所でも暫くは試飲可能と思われるので現地で試してみるのも良いだろう。
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次に来るのはおそらく冬場だろう。次回訪問時はどのように変化しているのか、期待が膨らむところだ。

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