ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

タグ:ブレンデッドモルト

セッション
(画像:ニッカウヰスキー「セッション」公式サイトより転載)
☆NIKKA Session 奏楽
 度数:43%
(状態) 開封時期不明/残量:60%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
スイートかつ香ばしさを伴うモルティ、白桃のシロップ、洋梨のコンポート、リンゴのグラッセ、クリーンなイメージのエステリー、蜜柑のピール。クリーミーやフローラルもある。控えめにウッディ、バニラ、土っぽいピーティ。徐々にマンゴーのようなトロピカルフルーツフレーバーが現れる。

味:
ややエッジの効いたビターとウッディ、土と灰のピーティ、シロップのようなクリアーな甘み、マンゴーフレーバー、少々出汁っぽいニュアンスもある。徐々にビターキャラメル、バニラクリーム、仄かなナッティが現れる。フィニッシュはドライ。椎茸の出汁を思わせる土っぽいピーティと、やや石鹸寄りのフローラル、少々のビターが残る。度数のわりに多少刺激が強い印象。

感想:
香りでは圧倒的にスイートとフルーツが優勢で、味ではビターとウッディ、ピーティがメインなイメージ。それぞれの要素がある程度独立して感じられる一方、強く突出する訳でもなく纏まりは良い。加水でビターが和らぎ、ナッツの香ばしい風味が増す。また、それほどバランスが崩れる様子もなかった。普段飲みでもおそらく充分楽しめる印象。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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先日より発売となったニッカウヰスキーの新製品。

国内のモルト原酒(余市、宮城峡)と海外のモルト原酒をブレンドしたブレンデッドモルトです。

本ボトルでは大々的に「海外原酒の使用」が謳われており、原酒の出元として「ベンネヴィス等」と紹介されています。

ウイスキーにお詳しい方でしたら既にご存じの通り、ベンネヴィスはニッカウヰスキーが所有するスコットランドの蒸溜所。ややケミカルなトロピカルフレーバーが特徴的なウイスキーを造っています。

このベンネヴィスの原酒とニッカウヰスキーの製品に関しては、ウイスキーファンの間でこれまでグレーな談義が多く交わされてきたわけなのですが(特にブレンデッドモルト既製品のアレとか)、いよいよ「使ってます」を明示した製品が登場してきた訳です。

これは勿論時代の流れ、ワールドブレンデッドの台頭が大きく影響していると考えるのが自然なんでしょうが、国内製品のレギュレーション(所謂“ジャパニーズウイスキー”表記に係る部分)を考慮した際の、明確な住み分けを行うための準備的な意味合いも感じられます。

つまり、今後は「純国内原酒」製品と「国内と海外のブレンド」製品でブランディングや価格帯の位置づけを区切り、販売していこうという戦略があるように感じられた訳です。あくまで個人の推測ですがね…。


さて余談はさておき肝心の中身ですが、エステリー、トロピカルフルーティ、ピーティがそれぞれ単独でそれぞれしっかり活きている印象でした。つまり、「宮城峡のエステリー」、「海外(ネヴィス)のトロピカル」、「余市のピーティ」という特徴的な要素を活かしたまま、一つの製品の中に詰め込むようなブレンドをしている…といったところでしょうか。

下手をすれば個性どうしが喧嘩し、潰し合ってしまいかねない方向性な訳ですが、絶妙に上手く纏まっています。老舗のブレンド技術は侮れませんね。

ただ、モルト原酒の個性はそれぞれ際立ってはいますが、味わいの印象は、やはりというか当然というか中庸のやや上ぐらい。また、若い原酒由来と思わしき刺激感も多少あり。日飲み用やライトに飲む酒として食中や1杯目あたりに楽しむのが良さそうです。値段的にもちょっとアッパーですが、許容範囲かなと。

飲み方としては加水に耐える印象だったので、ハイボール、ロック、水割り、ストレート等々なんでもいけそう。

多彩な楽しみ方ができるという点では、海外原酒を使っているとはいえ非常に日本らしいブレンデッドモルトであり、間口の広いウイスキーであると言えるでしょう。

海外原酒のブレンド使用に関しては賛否含め様々が意見が飛び交っているところですが、余程のものでない限り、フラットに捉え、先入観なく楽しむのが良いと思います。本ボトルはまさにその好例。斜に構えず楽しめば、無難に充分楽しめる1本です。

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☆MARS MALTAGE “COSMO” 越百
 WINE CASK FINISH BOTTLED IN 2020
 度数:43%

(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
イチゴジャム、ラズベリーのフレーバー、煮詰めた赤ワイン、僅かにピーティ、全体的にスイートでスムースな印象。使い込んだ皮製品のような風味もある。

味:
酸味を伴うタンニン、ベリージャムの甘さ、終盤にかけてゆで小豆ような風味も。若干の硫黄っぽさ。仄かにピーティ。口当たりは比較的スムースで、全体的にライトな印象。フィニッシュはタンニンとベリーの風味で、ドライ気味。

感想:
全体的にワインカスクのフレーバーがカバーしており、元の越百らしい部分(特に酸味のある穀物感)は隠れてしまっている印象。良くも悪くもマルスのワインカスク味。加水することでモルティと柔らかいピーティが顔を出す。中庸なイメージだが、ベリーとピーティのバランスの良さが好印象。ハイボールではベリーが失われ、硫黄とエグみが強く出てしまう。もう一声安ければ…。

評価:3~
4 (可も不可もなし/美味しく感じる)

コスパ:やや悪い

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つい先日リリースされたマルスのブレンデッドモルト、越百のカスクフィニッシュシリーズの1本。昨年のマンサニージャカスクに続き、今年は自社のワインカスクがフィニッシュに使用されています。

マルスウイスキー(本坊酒造)といえば、駒ヶ岳や岩井トラディションなどのバリエーションとして、ワインカスクフィニッシュの製品を数多くリリースしていることで有名。

使用されているワインカスクは、本坊酒造が山梨に持つワイナリーから取り寄せたもの。ワイナリーから蒸溜所のある南信州までは車でおよそ2時間程度と近く、ワインの樽出しからウイスキーのフィリングまでに余計な時間が掛かりません。つまりワイン樽の劣化を最小限に抑え、比較的フレッシュな状態で使用できるわけです。

この比較的フレッシュなワインカスクを使用しているためかどうか定かではありませんが、マルス信州のリリースする各ワインカスクフィニッシュ品はフレッシュでスイートなベリーの香味がより強く、味わいもラズベリージャムのような甘酸っぱい印象にマスクされていることが個人的に多い印象です。

本ボトルも漏れなくそっち系の香りがしっかりと上乗せされたイメージの出来。加えて越百が本来持ち合わせているソフトなピート香がスパイス的に効いて、意外と悪くないバランスでした。

ただし、多めの加水でエグみや硫黄臭といったネガティブな要素が表出してしまい、残念ながらハイボールではその良さを発揮しきれない印象。ストレートか、いっそカクテルベースにするのが良さそうです。

昨年のマンサニージャがハイボールと好相性だったが故に、ちょっと残念な結果でした。が、ストレートや少量の加水ならば十分に楽しめる出来かと思います。ただし、お値段と入手のハードルはちょっと高め。

尚、この越百のカスクフィニッシュシリーズは現在のところ、年替わりで1種類ずつリリースされる予定とのこと。ロット数の問題なのか、それとも試験的なリリースという位置づけなのか、そのポジションは判然としないものの、意外と粒ぞろいなボトルが続いている本シリーズ。さて次回はどんなボトルが登場するのでしょうか、楽しみではあります。

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