ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

タグ:スコッチ

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☆JURA AGED 26 YEARS
 HUNTER LAING
 ARDNAHOE DISTILLERY THE KINSIP
 One of 254 bottles

 度数:52.7%
 樽種:リフィルホグズヘッド
(状態) 開封直後/残量:90%程度/イベントにて

(テイスティング)
香り:
バナナフレーバーのケーキ、セメダインを思わせるケミカルなエステリー、青りんごフレーバー、青みを伴う穀物、塩ビのパイプ、僅かに磯の香り、オレンジやレモンのピール、フルーツのビネガー。

味:
ハニーシロップのスイート、アプリコットやリンゴのジャム、仄かにベリーのような風味、控えめに乾いたウッディ、レモンのピール、白い花のフローラル感、やや粉っぽいモルティ、ケミカルなエステリー。フィニッシュはエステリーと独特な磯の香り、少々のビターが中くらいに伸びる。アフターテイストにはライムのような柑橘が残る。時間経過でピーチやトロピカルフルーツのフレーバーも現れる。

感想:
全体的に棘が無く飲みやすいが、香りの面で少々ケミカル系エステリーの押しが強く、ビニールのような印象まで感じられた。時間経過でピーチやトロピカルフルーツのソフトな風味が出現。開栓すぐだったので、まだまだ開いていない様子だった。暫く置くことで真価を発揮しそうな雰囲気。ケミカルな部分も和らぐのではなかろうか。また、オイスターのような独特な磯の風味は、好き嫌いが分かれそう。加水で穀物感がよりクリーミーに変わる。

評価:3~4(可も不可もなし~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや悪い

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近年創業のボトラーズながら既に高い知名度を得ているハンターレイン社。

アイラ島9番目の蒸溜所であるアードナッホーを創業したことでも知られています。

そのハンターレイン社が、件のアードナッホー創業を記念して発売したシングルモルトシリーズが「ザ・キンシップ」です。

「キンシップ」とは「親族」や「血縁関係」など親密な繋がりを意味する言葉だそう。ハンターレイン社が自社ストックの原酒からの選りすぐりをボトリング・リリースしたもので、かなりハイエンドな仕上がりになっているとのことでした。

実際、価格設定もかなりアッパーであり、今回のようなイベントでの試飲でなければちょっと手が出ないところでした。

尚、このジュラ26年はザ・キンシップの2018年リリース時の1本にあたり、他にはハイランドパーク21年、スプリングバンク25年、ボウモア21年、ブナハーブン30年、ラフロイグ20年といった錚々たるメンツが揃っていました。

そんなアッパーなクラスの本ボトル。リフィルホグスヘッドらしい、クリーンで角の無い味わいがとても良い…はずだったですが、少々ケミカル系エステリーが強すぎる感があり…。その強さたるやフルーツフレーバーを通り越してビニール系に至り、個人的には配管の塩ビパイプを連想するほどでした。

これ以外はアッパーグレード品だけあってかなり優秀で、特に時間経過で開いてくるピーチやトロピカルは結構いい感じ。オイスター的磯っぽさは、ジュラらしさと取れれば寛容できるレベル(好き嫌いは出るとは思いますが…)。纏まりも悪くなく、なんとも惜しい印象でした。

まあ、開栓ほぼ直後でしたし、時間経過で強いフレーバーがこなれ、開いていなかった部分が表出すればもっと良い、値段に敵った味わいに変わることでしょう。そのあたりも含めて良い勉強になった1本でした。

こういう良いボトルがリーズナブルに試飲できるのもイベントならではの楽しみ。

以前と同じ…には戻せないんでしょうけども、願わくば形を変えてでも定番イベントは復活してほしいところです。

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☆BALBLAIR
 AGED 25 YEARS
 度数:46%
 樽種:バーボン樽→スパニッシュオーク樽
(状態) 開封後数日以内/残量:90%程度/イベントにて

(テイスティング)
香り:
ビターなココア、洋梨のコンポート、チョコクリーム、年季の入ったオーク材、アメリカンチェリー、モルトの香ばしさ、乾燥した麦わら。暫く嗅ぎ続けると奥からスモモ、リンゴジャム、酸味を伴うエステリー。

味:
軽めなスイート、オーク様なウッディ、強めのビターを伴うタンニン、ハイカカオチョコレート、控えめにドライフルーツのニュアンス、オールスパイスを思わせる甘いスパイシー、フィニッシュはタンニンとナッティ、ビターが混じり合う。アフターテイストはモルティとビター。ビター感は少々口腔内に貼り付き残る。また全体的にピリピリとした刺激あり。

感想:
結構ビターが支配的。加えて度数のわりに刺激感が強く、若々しさとは違う棘を感じる印象。オフィシャルの長熟としてはやや当たりが強く、飲みにくい。バルブレアらしいニュアンスは香りの一部に残る程度で、味わいでは強いビターとウッディ等、明らかに樽感が支配的で他の要素を潰してしまっている。また、ビター感はいつまでも残る。加水でエステリーが多少伸びる印象だったので、時間経過で改善が期待できるのかもしれない。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:悪い

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さて今回は久々にイベント飲み。

阪急英国フェアにて飲んだボトルの紹介です。

まずはバルブレア25年。

2019年にラインナップが全面リニューアルされたバルブレア。以前のシングルヴィンテージリリースから年数表示品に変更となりました。

エントリーグレードとしての12年、ミドルグレードな15、18年、そして25年はアッパーグレードな位置付けの商品となります。

さて、以前12年物に関してはテイスティングレビューを書きましたが、以前のヴィンテージリリースに比べて幾分劣る印象でした。 

で、それを受けての今回。

事前情報でスパニッシュオークが熟成に使用され、実際に酒色がアンバーカラーであるのは知っていたので、おおよその味わいとして程々の熟成感とドライフルーツ、少し強めのウッディとバルブレアらしい太いモルティ、種々のオリエンタルスパイシー、あわよくばスイートなフルーツなんかも!と期待していたの  で  す  が…

まぁ、結果は上記の通り。肩透かし…を通り越してちょっと残念な雰囲気。

やたらとビターとウッディが主張しており、フルーツや力強いモルト感等々の「バルブレアに期待する味」が、強めの樽感によって追いやられてしまった様子です。辛うじてある程度残ったのは一部のスパイス感ぐらい。ちょっとこれでは辛いですね。

加えてなかなか(相当)強気な価格設定で、まあボトルを買うのは(値段的にも味的にも)難しいでしょうし、バー飲みで推奨できるかというと…少々厳しいかなぁと…。

まあ、これ以上はただの悪口になってしまいますので控えますが、しかし、いちファンとしては少々残念に思える結果でした。

ただ、このボトルは今回のイベントの為に新たに開栓された、開栓直後のものであり、香りも味も開いておらず、本領を発揮できないなかったのかもしれません。

いつか、それも検証したうえで、改めて評価ができればいいな、と思っています。

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☆BALBLAIR 1997 SINGLE CASK
 Distilled 1997 Bottled 2015
 SHINANOYA TOKYO
 度数:52.2 Cask No. 909
 樽種:1st FILL BARREL
(状態) 開封後1年/残量:60%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
甘やかで少々溶剤的なエステリー、梨、リンゴ、ミルクのキャンディ、乾いた穀物の香ばしさ、透明感のあるスイートも感じる。仄かにウッディなビターとホワイトペッパーのスパイス感もあり。時間経過で次第にオレンジオイル。

味:
オレンジピール、ビターを伴うウッディ、クリアーなエステリー、香ばしい穀物、ボタニカルなニュアンス。終盤からはクリーミーで少しオイリー、加えてジンジャーやスパイス。フィニッシュはクリーミーでスイート、一拍置いてオレンジビター、仄かにカカオのようなニュアンスもある。後味にはシトラスの風味にバナナが混じる。

感想:
香りではリンゴや梨のエステリー、味ではオレンジが先行する。全体的に甘やかでクリーミーかつビター。程よくウッディで芯が太く、フィニッシュから後味まで長くスイートが続く。加水ではエステリーがやや強調され、クリーミーは影を潜める印象。少々アルコール感が強いが、許容範囲。後味に抜けてくるシトラスとバナナが心地よい。

評価:4(美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:値段相応~高額だが納得

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2016年に信濃屋がリリースしたバルブレアのオフィシャルプライベートボトル。バルブレアにおいては国内では初のオフィシャルPBだったようです。

味わいはオレンジや主張あるエステリーを筆頭に、クリーミーで香ばしいモルト感とスイート、そしてビターが主体。ウッディやスパイシーはそこまで前面に出ず、味を邪魔せず引き立てる印象です。

中熟のバルブレアとして期待する要素を概ね全部持っているイメージ。ただ、度数のわりに少々アルコール感が刺激的に感じられました。まあそれも含めて中熟ならではと言ったところでしょうか。良く言えば飲みごたえと飲みやすさが同居できているイメージ。どちらにせよ完全にネガティブ、という訳ではありません。

少し度数落ちすれば、また香り立ちも変わってくるかもしれませんね。そういった点でも長く楽しめそうな1本かと思います。

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☆Secret Speyside Distillery No.2
 1998 Aged 20 years
 Hemp Sparrow 五筒
 度数:49.8%
 樽種:Bourbon Barrel
(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
花の蜜、クリーンなエステリー、溶剤、塗装したての木材、少々粉っぽいモルティ、アップルシロップ、キウイフルーツ、スワリングするとココナッツオイルを主体としたナッティが現れる。

味:
リンゴのコンポート、少々のビターを伴うウッディ、少々の生木っぽさ、香ばしい穀物も。全体を通してややケミカルな(セメダインや青りんごのガムのような)エステリーが漂う。わずかながらナッティやバタークッキーも感じられる。フィニッシュはビターとモルティが交じり合いつつ、じんわりと染みる印象。ややドライ気味でもある。後味にはスミレを思わせるフローラルが残る。度数なりのアルコール刺激。

感想:
ややケミカル方面のエステリーが主体な印象。またウッド感も意外と強い。全体的には比較的シンプルで素直なイメージ。程よく果物、程よく華やか、程よくビター。加水するとエステリーが多少抑えられ、ピーチやオレンジの風味が顔を出す。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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ウィスク・イーから不定期にリリースされているボトラーズシリーズ、ヘンプスパロー。

ヘンプ(麻)スパロー(雀)ということで、麻雀牌をモチーフにしたラベルが印象的な、そのコレクション性から非常に人気の高いシリーズであります。今回のラベルは五筒(ウーピン)。

蒸溜所は「シークレットスぺイサイドNo.2」表記ですが、「創業1824年」、「スコットランド初の政府登録蒸溜所」などのヒントからグレンリベットであることがわかります。(同シリーズにおけるシークレットスぺイサイドはNo.1(No.表記なし)がグレンロセス、No.3がマッカラン)

本シリーズでは短熟~中熟程度のシングルモルトまたはブレンデッドモルトがリリースの主体(アメリカンやラムも出ましたが…)で、比較的安心して飲める、中庸な味わいのものが多い印象。また中庸ながら、それぞれの蒸溜所「らしさ」もちゃんと感じられる原酒のチョイスになっているように思います。

今回のシークレットスぺイサイドNo.2も、バーボンカスクのグレンリベット「らしさ」が生き、棘が無く、飲みやすい味わい。やはり安心感は大事ですね。

尚、麻雀牌の数牌は一から九。筒子(ピンズ)は既に八まで発売されました。他の牌も既に後半戦。さて、どのように締めくくられるのか、楽しみですね。

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☆GLENALLACHIE  AGED 15 YEARS
 度数:46%
 樽種:PXシェリー、オロロソシェリー
(状態) 開封時期不明/残量:60%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
レーズン、焼きたてのバゲットの香ばしさ、ココアパウダー、バルサミコ、カシス、プルーン、ビターと湿り気を伴うウッディ。

味:
シェリーカスクらしいドライフルーツとベリーのスイート、少々のホコリっぽさとビターを伴うウッディ、湿った木材も。中盤からバルサミコまたはベリーの酸味、クローブ、オールスパイス、香ばしさのある穀物。フィニッシュはタンニン、ベリー、意外とあっさり。余韻でグレープジュースの後味、カスタード。

感想:
シェリーカスクらしいドライフルーツのスイートが全面に出ているが、意外とあとに残らずあっさりと飲める。ビター感もはっきりしているがだが、しつこくなく、あっさりしていて心地よい。加水にも結構耐え、ビターが押さえられタンニンとベリーが伸びる。原酒由来のモルティがやや抑えられ、カスクが若干前のめり気味。だがシェリーシェリーせず飲みやすい。


評価:3(日飲みできるレベル~美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:良い

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2017年にペルノリカールから買収され、独立系となったグレンアラヒー。以後、続々とシングルモルトをリリースし、早くも市場に定着したイメージがあります。

そんなグレンアラヒーのミドルレンジ、15年は今年の1月にリリースされたボトル。樽使いはシェリー&シェリーと一見コテコテな仕様なのですが、飲んでみると思いの外軽くてクリアー。ありがちなベタベタ重い甘さが控えめで、非常に飲みやすい仕上がりでした。

ただ、アラヒーらしいモルティさが少し隠れてしまった印象。やはり甘口シェリーカスクにはあの太いモルティでも敵わなかったようです。

しかしそれはそれ、十分楽しめる良い味わいでした。そしてこのクオリティでボトル1万を割り込むのは嬉しい。やっぱりコスパも大事ですねぇ…。

ABER21
☆Aberfeldy AGED 21 YEARS
 THE HEART OF Dewar's
 度数:40%

(状態) 開封時期不明/残量:50%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
ピーチシロップ、ケミカル寄りのマンゴーフレーバー、アプリコットジャム、ハチミツ、アップルジャム。全面的にフルーツ&スイート。フルーツに隠れるようにクリーミーな穀物、柔らかいウッディとビター、僅かに土っぽいニュアンス。時間経過でココナッツとビネガーに近い酸味も出現。

味:
前面にシロップの甘さ、アプリコットジャム、オレンジママレード、マンゴーソース。湿ったウッディとカカオのようなビター、仄かに土っぽいピーティも伴う。透明感のある甘さと柔らかい口当たりである一方、ねっとりとした甘みが舌に絡む印象。フィニッシュは長く穏やかにスイートと僅かなビター、上品なモルトの香ばしさが広がる。アフターテイストに至るまでしっかりフルーツ。

感想:
非常にライトでスムーズな口当たりながら、ねっとりと甘くフルーティな味わいが印象的。とにかく甘い。加水でも芯は折れず、スイートが維持される。また、時間経過でもフルーツ感は少しずつ変化し、ゆっくりじっくり楽しめる印象。ビターや土っぽいピーティも引き立て役として好相性。オフィシャルスタンダードのアッパーグレードとしては上出来すぎる出来。

評価: 4~5(ゆっくり楽しめる~非常に美味しい)

コスパ:良い

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とにかく甘い。そして飲みやすかった1本。

さすがはアバフェルディ。もともとオフィシャルアバフェルディは、そもそもの味わいもコスパも良好と聞いていましたが、これはかなり良い感じで楽しめました。

特に際立っていたのはピーチやマンゴーのフルーツ。そしてハチミツやシロップのような濃縮された甘さ。加えて加水の絶妙さもあって口当たりは相当スムーズで柔らかい物でした。素直に「美味くて飲みやすい」と言える味。

まあ開栓から暫く時間が経ったものであり、度数落ち+開き具合が絶妙だったことも手伝っているとは思うんですけどね。それを込みで考えても、とても良いものなんじゃないでしょうか。惜しむらくは、これが所謂「旧ボトル」であり、現行の21年は少々ドライ寄りになってしまっているということ。ただ、根幹を成す部分の味わいに大差無いとのことなので、あとは好き嫌いの差で、基本的に美味しいことには変わりなさそう。

尚、今回飲んだ21年は2014年にラベルデザインが変わる以前の物。所謂先代旧ボトルでした。アバフェルディといえば赤リス。ちゃんとこのボトルにも描かれていました。現行品はデザインがおしゃれになった代わりに赤リスはお役御免、描かれなくなってしまいました。スコッチウイスキーのボトルの動物って、個人的に案外キャラ付けに有効な気がしており、無くなってしまうのはちょっと寂しいんですよね…。次回のリニューアル時には是非復活を希望。

さて、なかなかハイクオリティ・ハイコスパなアバフェルディですが、知名度は残念ながら少々低め。もともとデュワーズのキーモルトとして原酒の殆どが供給されており、シングルモルトのスタンダードラインナップは12年、16年、21年の3つ。さらに日本国内に至っては12年のみが定番で、21年はごく少量、正規ないし平行品として販売されている印象です。

ボトラーズのリリースもある程度あるように見受けられますが、決して多くはありません。故に通年リリースの12年であっても置いていないBARも少なからずあり、それ以外のオフィシャルラインナップとなるとかなりのレアキャラだったりします。勿論、今回のような旧ボトルも然り。

今後はボトラーズにも目を光らせて、遭遇次第試していこうと思います。ともあれ、オフィシャルアバフェルディは良い!

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☆BALBLAIR 12(AGED TWELVE YEARS)
 度数:46%
 樽種:EX-BOURBONCASK &
    DOUBLE-FIRED AMERICAN OAK CASK

(状態) 開封後2週間/残量:80%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
ハチミツ、オレンジピール、オレンジシロップ、焼き立てのパン、焙煎した穀物、リンゴのような酸味のあるエステリー、ボタニカルなビター、少々ケミカルなニュアンスもある。比較的シンプルな印象。

味:
シトラスフルーツの酸味、やや強いビターを伴うウッディ、中盤から穀物の香ばしさ、シロップの甘さ、若さを感じるモルティ、ホワイトペッパーやオールスパイス、若干のジンジャー。全体的にライトでフラット気味。フィニッシュはライトでさっぱり。余韻でハチミツようなスイートと粘性のあるビターが残る。

感想:
ライトでフラット。ビターがかなり主張しており、他の要素が若干押され気味。オレンジ、スパイス、ジンジャー、ハチミツなど良い要素も多く持ち合わせているが、弱い。熟成感よりも若さや荒っぽさが少々目立つ印象。加水でよりビターが際立ってしまい、他の要素が消えてしまう。アルコール感はやや強い。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:値段相応~やや悪い

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2019年にリニューアルされ、ヴィンテージシリーズからシンプルな年数表記物に切り替わったバルブレア。今回は昔(90年代終盤)のようなNASはラインナップになく、12年が実質的なエントリーグレードとなります。

ただ、エントリーグレードと言いつつ、値段はそこそこ張る印象。生産量の問題や昨今のウイスキーブームに伴う原酒不足等々が背景にあることは重々承知ですが、やはりちょっとお高い印象です。

味わいのほうは、エントリーグレードなだけあってバルブレアに期待する要素がちゃんと含まれている…のですが弱い。

全体的に樽由来らしきビターなウッディの押しが強すぎて、他の良い要素が潰れてしまっている印象です。加えて46%というオフィシャルエントリーラインとしてはハイプルーフな設定も手伝ってか、アルコール刺激と原酒の若さを強く感じてしまう印象。

加水すればなんとかなるのかと思いきや、ビターのみが浮いてしまい僅かに残ったフルーティやらスイートやらが見事に消滅。原酒が若い故か、味の淡泊さが大いに目立ってしまう印象でした。

使用している樽はおなじみバーボンカスクと、ダブルファイアード・アメリカンオークカスクという聞きなれない樽。直訳すれば「2回焼いた」ということになりますが…正体不明です。単純に2回チャーリングした樽とも、トースティング後にチャーリングしたとも、場合によっては使用後にリチャーリングした再活性樽という意味ともとれます。まあどちらにせよ謎は深まるところですが…。

尚、この樽は12年物にのみ使用され、15年以上の上位グレードでは使用されておらず、代わりにスパニッシュオークやオロロソシェリーカスクが使用されています。

現行シリーズ全体の良し悪しについては、まだ上位グレードのテイスティングの機会を得ていないのでなんとも言えませんが、12年を試した段階でやはりというかなんというか、年々淡泊でライトになってしまっているという流れには完全に乗ってしまっている印象でした。

ただ、バルブレアはプライベートボトリングでここ一番を炸裂させてくることが多く、決して原酒自体が無いとか根本的に悪くなっているといった印象ではありませんでした。つまり、良い原酒のストックはあるということです。願わくばそういう原酒を少しずつでもオフィシャルリリースに回してもらいたいところですね…。

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☆TORMORE Distilled 1988
 THE TASTER
 AGED 28 YEARS

 度数:49.3%
 樽種:バーボン樽
(状態) /残量:60%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
濃くて押しの強いモルティ、やや青くて素朴な雰囲気の穀物感、芋羊羹、白桃シロップ、やわらかいハーブの風味。

味:
桃の缶詰、ドライマンゴー、ライチ、ビターも伴う。透明感のスイート、オレンジオイル、香ばしい穀物感、干し草っぽいニュアンス。フィニッシュはドライ寄りだが、フルーティーな甘さも感じられ、長く伸びる印象。

感想:
香りではモルトの穀物感が先行、味はもっぱらフルーティ。穀物感の部分は少々野暮ったくもっさりした印象。味わいがとにかくフルーティ押しで、フルーツのコンポートやシロップを口に含んだようなジューシーな、それでいて透明感の伴うスイートが魅力的。口当たりは度数相応で強くも弱くもない。加水すると曇った穀物感が前面に出、僅かにインクのようなニュアンスが現れる。

評価: 4~5 (ゆっくり楽しめる~非常に美味しい)

コスパ:値段相応~良い

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トーモアはシーバスブラザーズ傘下の蒸溜所で、主にバランタイン等のブレンデッド用原酒として供給されています。また、シーバスブラザーズ傘下の中では、おそらくトップレベルのマイナー蒸溜所で、オフィシャルボトルのリリースは一応あるものの非常に少なく、国内の一般市場で手に入るオフィシャルボトルは殆ど無い印象。いち飲み手としては、ほぼほぼボトラーズ頼りの蒸溜所なわけです。

しかしながらそのボトラーズでのリリースも決して多いわけでなく、目を引くこともなかなか多くないためスルーしてしまいがち。特別目に付いて購入しない限りはバーでの出会いがしらに期待するしかないのですが…今回はそんな出会いがしらで出会ったトーモアなわけです。

このTHE TASTERは、日本のウイスキー専門インポーターであるスコッチモルト販売からリリースされたシリーズ。

味わいとしては、他のシーバス傘下ブレンド供給用蒸溜所のモルトに散見される野暮ったいモルト感と透明感のあるフルーツの甘みが主体。細すぎず太すぎずな口当たりで、思った以上に抵抗なく飲める印象。

特別何か飛び抜けたニュアンスも、深い重層感もありませんが、無難に、そして比較的手頃に飲める綺麗な近年スぺイサイドモルトとしては、大変うれしい1本でした。

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☆DAFTMILL 2007
 WINTER BATCH RELEASE
 bottled in 2020
 度数:46%
 樽種:ex bourbon barrels(#040~046)
(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
香ばさと粉っぽさの伴うモルティ、温めたシフォンケーキ、ピーチフレーバー、マンダリンオレンジ、みかんの皮、ビターなウッディ。薬草的な風味もある。多少のニューポッティさも僅かだが感じられる。

味:
押しの強いビター、タンニン、オレンジピール、ライトな口当たり。中盤から穀物の香ばしさ、乾いた印象のウッディを比較的強く感じる。フィニッシュはウッディとビターが続き、ドライに切れる。後味に若干のオイリーさを感じる。

感想:
香りは結構甘く、特にピーチとオレンジが目立つ。口当たりは軽いがアルコールの刺激は結構強い。味はシンプルで嫌味はあまり無い印象。やや平板か。少々ビターとウッディが強い。飲みにくくはないが、完成品としては物足りない印象。加水しても折れないが、少量では変化もあまり感じられない。若干ビターの角が取れる程度。ややしっかりめに加水し、時間をかけるとビターがこなれ、ウッディとオレンジ、モルティのバランスが取れてくる。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い
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スコットランドで近年トレンドな「シングルエステート」ディスティラリー。「エステート」とは「領地」を表しており、つまるところ、自分たちの所有する領地内で採れた大麦を原料に領地内でウイスキーを造り、発生した廃棄物(ドラフなど)を肥料として領地内の畑に還す、というクローズドなサイクルでウイスキーづくりを行う蒸溜所のことを指すようです。

ダフトミル蒸溜所はそんなシングルエステート(ボトルには“SINGLE FARM ESTATE”表記)を標榜する蒸溜所のひとつ。2005年に農家の小屋を改装してオープンしたクラフト蒸溜所で、1年のうち夏季と冬季、つまり農業の閑散期のシーズンにのみウイスキー造りを行うという、もっぱらの兼業農家蒸溜所。経営も家族で行っており、製造時期が短いが故、年生産量も少なく約6.5万リットルのみとなっています。

一時は一般流通しないとまで言われていたようですが、2018年あたりから順次市場へリリース、一般ユーザーも入手できるようになってきました。

しかし数量がリリース毎限られることや、これまでの評価が比較的良好である事などから、現状ちょっとしたレアボトルとなっています。生産者のカスバート家は「過度なレアリティを自分たちのウイスキーに付けたくない」と言っているそうですが、ちょっと裏腹な状況ですね。ちなみに過去にリリースされたシングルカスクは5万円以上したそう…。なんともねぇ;

今回のボトルはアジア向け限定のリリースでアウトターンは1685本。うち日本には450本が入荷したとのこと。シングルカスクではなくファーストフィルバーボンバレル6樽分のバッティングで、味わい的にはシンプル方面。これといって突出した要素が無く、少々物足りない印象。また、12年熟成&46%加水調整のわりにアルコール感が強く、素直な味わいと相まってちょっと棘に感じてしまいました。総じて「そこまで」な味の割にお高い…というちょっと残念な結果です。

大量生産でないぶん割高となるのは仕方ないとして、もう少し「らしさ」をしっかり感じられる味だったらなぁと思います。まあ今後も細く長くリリースは続くと思われるので、気長に付き合っていくしかなさそうですね。

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☆ROSEBANK 1990
 SIGNATORY VINTAGE LOWLAND
 Aged:16 Years
 Distilled on:22.06.1990 Bottled on:14.02.2007
 
 度数:43%
 樽種:Hogsheads Cask Nos:1514+15
(状態) 残量:20%程度/バー飲み
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(テイスティング)
香り:
透明感のあるエステリー、桃のコンポート、洋梨のフレーバー、柔らかいフローラル、奥の方に少しくぐもったモルト、僅かながらビターを伴うウッディもある。

味:
柔らかいビター、乾いた穀物または籾殻、やや粘性を感じるスイート、緩みを感じるフローラル。終盤には青みを伴うモルト、若干のメタル。洋梨に近いフルーツのエステリーも感じられるが、極めて控えめ。フィニッシュにはモルティとフローラルが残る。

感想:
香りではピーチや洋ナシなどのエステリー、味わいはシロップのようなスイートとモルト、フローラルが主体な印象。加水されているためか、口当たりはソフト。フローラルの部分はもう少しで柔軟剤や石鹸、パフュームに転じそうな危うい香り…。若干の金属臭が気になるが、悪くはない。特に突出した要素はなし。安定した味わい。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)


コスパ:良い

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閉鎖蒸溜所のなかでも相変わらず人気銘柄なローズバンク。名前がキャッチーなせいか、それとも名が体を表した(つまりバラの香りがする)わかりやすい味だからか、今もなお高騰の止まらないウイスキーのひとつです。

故に近年リリースのボトルは見つけても手が出ず、オールドボトルは機会に恵まれず、他に目移りしている間に殆ど飲んでいない銘柄となっていました。が、今回無事普通に飲めるレベルのボトルと出会い、テイスティングした次第です。

まあしかしローズバンク自体はリリースがそれほど少なかったわけでもなく、ちゃんと探せばそこかしこにあるはず…。怠慢ですねぇ;

さて、今回いただいたのはシグナトリーからリリースされたバーボンホグズヘッド熟成の16年物、2樽分をバッティングした43%加水品です。

3回蒸溜故か加水品のためか、それとも開栓後の度数落ちか、口当たりはかなりマイルドな印象。しかしながら味わいは割としっかり残っており、スイートとフローラルが心地よい印象の安定した味でした。若干青かったりメタルを感じたりもしましたが、概ね優しい味わいで口当たりも良く、悪印象は殆どありません。ただ、フローラルな部分が僅かにパフュームに傾きつつある印象。個人的には多少のソーピーやパフュームには寛容ですので、毛嫌いするほどではありませんが、これ以上傾くと好き嫌いの別れるものになりそうです。

まあ、なんというか、本当に凄いボトルは凄いんでしょうが、「ローズバンク」というだけで「美味い」に結びつけるのは早計というか…、他の閉鎖蒸溜所のボトルを含めて名前が独り歩きしている感は強いですね。随分今更ではありますが。

今回のボトルは良くも悪くもフラット。ちゃんと飲める味で安心感ってところでした。

さて、ローズバンクは復活のお話が出てましたがどうなったんでしょうか。まあこのご時世なので中断されているのか、それとも…。

まあ果報は寝て待つことにしましょう。

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