ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

タグ:シングルモルト

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☆TORMORE Distilled 1988
 THE TASTER
 AGED 28 YEARS

 度数:49.3%
 樽種:バーボン樽
(状態) /残量:60%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
濃くて押しの強いモルティ、やや青くて素朴な雰囲気の穀物感、芋羊羹、白桃シロップ、やわらかいハーブの風味。

味:
桃の缶詰、ドライマンゴー、ライチ、ビターも伴う。透明感のスイート、オレンジオイル、香ばしい穀物感、干し草っぽいニュアンス。フィニッシュはドライ寄りだが、フルーティーな甘さも感じられ、長く伸びる印象。

感想:
香りではモルトの穀物感が先行、味はもっぱらフルーティ。穀物感の部分は少々野暮ったくもっさりした印象。味わいがとにかくフルーティ押しで、フルーツのコンポートやシロップを口に含んだようなジューシーな、それでいて透明感の伴うスイートが魅力的。口当たりは度数相応で強くも弱くもない。加水すると曇った穀物感が前面に出、僅かにインクのようなニュアンスが現れる。

評価: 4~5 (ゆっくり楽しめる~非常に美味しい)

コスパ:値段相応~良い

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トーモアはシーバスブラザーズ傘下の蒸溜所で、主にバランタイン等のブレンデッド用原酒として供給されています。また、シーバスブラザーズ傘下の中では、おそらくトップレベルのマイナー蒸溜所で、オフィシャルボトルのリリースは一応あるものの非常に少なく、国内の一般市場で手に入るオフィシャルボトルは殆ど無い印象。いち飲み手としては、ほぼほぼボトラーズ頼りの蒸溜所なわけです。

しかしながらそのボトラーズでのリリースも決して多いわけでなく、目を引くこともなかなか多くないためスルーしてしまいがち。特別目に付いて購入しない限りはバーでの出会いがしらに期待するしかないのですが…今回はそんな出会いがしらで出会ったトーモアなわけです。

このTHE TASTERは、日本のウイスキー専門インポーターであるスコッチモルト販売からリリースされたシリーズ。

味わいとしては、他のシーバス傘下ブレンド供給用蒸溜所のモルトに散見される野暮ったいモルト感と透明感のあるフルーツの甘みが主体。細すぎず太すぎずな口当たりで、思った以上に抵抗なく飲める印象。

特別何か飛び抜けたニュアンスも、深い重層感もありませんが、無難に、そして比較的手頃に飲める綺麗な近年スぺイサイドモルトとしては、大変うれしい1本でした。

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☆DAFTMILL 2007
 WINTER BATCH RELEASE
 bottled in 2020
 度数:46%
 樽種:ex bourbon barrels(#040~046)
(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
香ばさと粉っぽさの伴うモルティ、温めたシフォンケーキ、ピーチフレーバー、マンダリンオレンジ、みかんの皮、ビターなウッディ。薬草的な風味もある。多少のニューポッティさも僅かだが感じられる。

味:
押しの強いビター、タンニン、オレンジピール、ライトな口当たり。中盤から穀物の香ばしさ、乾いた印象のウッディを比較的強く感じる。フィニッシュはウッディとビターが続き、ドライに切れる。後味に若干のオイリーさを感じる。

感想:
香りは結構甘く、特にピーチとオレンジが目立つ。口当たりは軽いがアルコールの刺激は結構強い。味はシンプルで嫌味はあまり無い印象。やや平板か。少々ビターとウッディが強い。飲みにくくはないが、完成品としては物足りない印象。加水しても折れないが、少量では変化もあまり感じられない。若干ビターの角が取れる程度。ややしっかりめに加水し、時間をかけるとビターがこなれ、ウッディとオレンジ、モルティのバランスが取れてくる。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い
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スコットランドで近年トレンドな「シングルエステート」ディスティラリー。「エステート」とは「領地」を表しており、つまるところ、自分たちの所有する領地内で採れた大麦を原料に領地内でウイスキーを造り、発生した廃棄物(ドラフなど)を肥料として領地内の畑に還す、というクローズドなサイクルでウイスキーづくりを行う蒸溜所のことを指すようです。

ダフトミル蒸溜所はそんなシングルエステート(ボトルには“SINGLE FARM ESTATE”表記)を標榜する蒸溜所のひとつ。2005年に農家の小屋を改装してオープンしたクラフト蒸溜所で、1年のうち夏季と冬季、つまり農業の閑散期のシーズンにのみウイスキー造りを行うという、もっぱらの兼業農家蒸溜所。経営も家族で行っており、製造時期が短いが故、年生産量も少なく約6.5万リットルのみとなっています。

一時は一般流通しないとまで言われていたようですが、2018年あたりから順次市場へリリース、一般ユーザーも入手できるようになってきました。

しかし数量がリリース毎限られることや、これまでの評価が比較的良好である事などから、現状ちょっとしたレアボトルとなっています。生産者のカスバート家は「過度なレアリティを自分たちのウイスキーに付けたくない」と言っているそうですが、ちょっと裏腹な状況ですね。ちなみに過去にリリースされたシングルカスクは5万円以上したそう…。なんともねぇ;

今回のボトルはアジア向け限定のリリースでアウトターンは1685本。うち日本には450本が入荷したとのこと。シングルカスクではなくファーストフィルバーボンバレル6樽分のバッティングで、味わい的にはシンプル方面。これといって突出した要素が無く、少々物足りない印象。また、12年熟成&46%加水調整のわりにアルコール感が強く、素直な味わいと相まってちょっと棘に感じてしまいました。総じて「そこまで」な味の割にお高い…というちょっと残念な結果です。

大量生産でないぶん割高となるのは仕方ないとして、もう少し「らしさ」をしっかり感じられる味だったらなぁと思います。まあ今後も細く長くリリースは続くと思われるので、気長に付き合っていくしかなさそうですね。

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☆ROSEBANK 1990
 SIGNATORY VINTAGE LOWLAND
 Aged:16 Years
 Distilled on:22.06.1990 Bottled on:14.02.2007
 
 度数:43%
 樽種:Hogsheads Cask Nos:1514+15
(状態) 残量:20%程度/バー飲み
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(テイスティング)
香り:
透明感のあるエステリー、桃のコンポート、洋梨のフレーバー、柔らかいフローラル、奥の方に少しくぐもったモルト、僅かながらビターを伴うウッディもある。

味:
柔らかいビター、乾いた穀物または籾殻、やや粘性を感じるスイート、緩みを感じるフローラル。終盤には青みを伴うモルト、若干のメタル。洋梨に近いフルーツのエステリーも感じられるが、極めて控えめ。フィニッシュにはモルティとフローラルが残る。

感想:
香りではピーチや洋ナシなどのエステリー、味わいはシロップのようなスイートとモルト、フローラルが主体な印象。加水されているためか、口当たりはソフト。フローラルの部分はもう少しで柔軟剤や石鹸、パフュームに転じそうな危うい香り…。若干の金属臭が気になるが、悪くはない。特に突出した要素はなし。安定した味わい。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)


コスパ:良い

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閉鎖蒸溜所のなかでも相変わらず人気銘柄なローズバンク。名前がキャッチーなせいか、それとも名が体を表した(つまりバラの香りがする)わかりやすい味だからか、今もなお高騰の止まらないウイスキーのひとつです。

故に近年リリースのボトルは見つけても手が出ず、オールドボトルは機会に恵まれず、他に目移りしている間に殆ど飲んでいない銘柄となっていました。が、今回無事普通に飲めるレベルのボトルと出会い、テイスティングした次第です。

まあしかしローズバンク自体はリリースがそれほど少なかったわけでもなく、ちゃんと探せばそこかしこにあるはず…。怠慢ですねぇ;

さて、今回いただいたのはシグナトリーからリリースされたバーボンホグズヘッド熟成の16年物、2樽分をバッティングした43%加水品です。

3回蒸溜故か加水品のためか、それとも開栓後の度数落ちか、口当たりはかなりマイルドな印象。しかしながら味わいは割としっかり残っており、スイートとフローラルが心地よい印象の安定した味でした。若干青かったりメタルを感じたりもしましたが、概ね優しい味わいで口当たりも良く、悪印象は殆どありません。ただ、フローラルな部分が僅かにパフュームに傾きつつある印象。個人的には多少のソーピーやパフュームには寛容ですので、毛嫌いするほどではありませんが、これ以上傾くと好き嫌いの別れるものになりそうです。

まあ、なんというか、本当に凄いボトルは凄いんでしょうが、「ローズバンク」というだけで「美味い」に結びつけるのは早計というか…、他の閉鎖蒸溜所のボトルを含めて名前が独り歩きしている感は強いですね。随分今更ではありますが。

今回のボトルは良くも悪くもフラット。ちゃんと飲める味で安心感ってところでした。

さて、ローズバンクは復活のお話が出てましたがどうなったんでしょうか。まあこのご時世なので中断されているのか、それとも…。

まあ果報は寝て待つことにしましょう。

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☆PORTCHARLOTTE 16 AGED YEARS
 LIMITED RELEASE
 度数:55.8%
(状態) 残量:70%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
ベリーのクリーム、赤ワインのタンニン、スイートで少々くもったエステリー、クリーミーな穀物感、ワインビネガーや甘酢のような酸味、青竹のような青っぽさ、灰のようなニュアンスもあり。次第にキャンディのようなスイートも現れる。

味:
ジューシーなベリーの甘みと酸味。籾殻または乾いた穀物感、出汁っぽいニュアンス。中盤以降は燃えさしのようなスモークが現れる。フィニッシュはややドライ気味で、ベリーや赤ワインのニュアンスが残る。やや下に貼り付く口当たり。

感想:
ブルックラディの原酒に共通するベリーやクリームの風味がよく出ており、ピーティとの纏まりもよく美味い。16年物としては上出来な印象。加水でもかなり伸びるが、ベリーの感じは曇ってしまう。

評価:3~4(美味しく感じる)

コスパ:値段相応~やや悪い
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今年残念ながら中止となってしまったFes Ile向けに用意されたボトル。

フェス自体は中止になったものの、ボトルはデジタル・エクスクルーシヴとしてオンライン上にて限定販売されました。

バッティングに使用された原酒に関しては少々複雑で、スコティッシュバーレイを原料とした2003年蒸溜のニューメイクを

①リフィル・ホグスヘッド原酒を、2012年に1stフィル・バーボンバレルに詰め替えたもの。
②1stフィル・バーボンバレル原酒を、2013年にソーテルヌカスクに詰め替えたもの。
③シェリーカスクとバーボンカスク、新樽を複雑に組み合わせたもの。
(「whiskybase.com」より)

以上3種類とあります。

各個非常に複雑な樽使いで熟成をしたうえに、それら3種類をバッティングしていることからか、どの樽が主張するともなくPC原酒の良さだけが上手く際立っている印象でした(単に舌が馬鹿なだけかも…)。

尚、新樽を使っているという割にウッディさは主張しない印象でした。とにかくベリー感とクリーミーさ、スモークが良く纏まっていてシンプルに美味しい。

個人的には、これまで飲んだPCの中では結構上位にくる味わい。
流石はフェス向けの出来。こういう出来のボトルが定番化してくれるとありがたいんですけどね…。

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☆BALBLAIR Aged 16 Years
 (オフィシャル)
 度数:40%
(状態) 開封後1年半/残量:70%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
プラムのような酸味の伴うエステリー、リンゴ、香ばしいモルト、土っぽさをもったピーティ、腐葉土、朽ちた木々。漢方のような薬草の香りもある。

味:
ビターと柔らかい酸味が先行。徐々にウッディとスパイシーに移行。土っぽさをアクセントにしつつ、実山椒のような刺激も存在。終盤にはモルトの香ばしさが出現。フィニッシュは意外と長く、ウッディとタンニン、小豆を思わせるスイートが伸びる。後味は比較的ドライ。

感想:
低めの度数ながら、思いの外しっかりとした味わい。全体的に起伏が小さく、素朴な雰囲気ではあるが、悪くない。香りでは土っぽいピートがはっきり出ているが、味ではそこまで主張せず、良いアクセントに終始。地味ながら悪印象のない味わい。加水でビター感が増す。意外とボディは崩れにくい。

評価:3~4 (日飲みできるレベル/美味しく感じる)

コスパ:値段相応

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ヴィンテージシリーズの発売される以前にリリースされていたボトルで、同時期の物としてはNASの「エレメンツ」があります。具体的に何年頃のリリースかは不明ながら、ラベル明記の会社名がインバーハウスであることから、少なくとも1996年~2005年の間と思われます。

味わいとしては、全体的に振り幅の少ない、フラットかつドライな印象。一時期のオールドオフィシャルボトルで感じられることが多い味わいと似ています。

しかしながら、フラットの中にもしっかりとモルトの太さやスパイシーさも含まれ、ちゃんとバルブレアらしさも持ち合わせています。一方、近年のものと大きく異なって、土っぽい内陸系ピートのフレーバーが、このボトルには感じられます。もしかすると、アライド時代には一部、ピーティな原酒を仕込んでいた時期があったのかもしれません(このあたりの情報は調べても出てきませんでした…)。

このピートの風味、決して味わいを邪魔せずスパイス的に効いており、意外といい感じです。雰囲気としては、過去のOBグレンギリーに似ています。

不明な点は幾らかあるものの、かつてのバルブレアを知るには良い教材かと思います。

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☆Ardbeg WEE BEASTIE
 GUARANTEED 5 YEARS OLD
 度数:47.4%
 樽種:バーボン&オロロソシェリー
(状態) 開封後数週間程度/残量:70%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
甘さの際立ったエステリー、アップルパイ、ヨードと燃えさしの合わさったピーティ、クリームの伴ったモルティ、僅かにドライフルーツのベリー感、洋梨のジャム。

味:
しっかりとした小豆餡のような甘さ、乾いたスモークのピーティ、クリーンなフルーティーとエステリー。仄かに脂肪っぽいオイリーも感じられる。フィニッシュは長めで、ビターとスモーキーとエステリーが混じりあう。後味に多少のエグみが残るも悪い印象ではない。口当たりはやや刺激的。

感想:
5年物という、非常に若いウイスキーでありながら、荒っぽさはそこまで強くは感じられず。ニューポッティな部分はスモーキーさによって上手く隠されている印象。若く、若干の色物感はあるが、ちゃんと近年のオフィシャルアードベッグのバリエーションの範疇に留まっている味わい。加水も多少は耐える。値段は少々高い。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い

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プレスリリースを見て、正直食指の動かなかった一本。が、実際に飲んでみるとそれほど悪くもなく、ちゃんとアードベッグの良さ、若いながら纏まった味わいの両方を担保した、「これはこれでちゃんと楽しめる」味わいでした。

アルコール度数は47.4%と半端な数字であり、もしかしてカスクストレングス?!と一瞬疑いましたが、5年熟成のスコッチウイスキーでそれは流石になく(ラベルに表記されていないし…)、おそらく丁度良いところまで加水調整した度数と思われます。結果としてその調整加減が絶妙らしく、若々しさを上手く抑えつつも、ちゃんとアードベッグらしさを残したものとして完成されています。

唯一惜しむらくは価格設定。アードベッグTENとほぼ同額~やや高めになっており、素人感覚からするとちょっとイマイチに感じてしまいます。まあ特殊なリリースという位置づけなのでしょうがないんでしょうけどね…。

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☆GLENUGIE AGED 37 YEARS
 THE DISTILLERY Reserve Collection
 SINGLE CASK EDITTION
 19th June 1981
 6th August 2018
 度数:48.8%
 樽種:3rd Fill Hogshead #3197
(状態) 開封直後/残量:90%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
しっかりとしたモルティ、オーキーな香り。続いて和の柑橘(温州みかん、剥きたての夏みかん)のソフトでスイートな香り、ピーチフレーバー。少々ケミカルっぽい柑橘フレーバーも伴う。甘く滑らかで、透明感すら感じさせる柑橘のフルーティなニュアンス。非常に期待感の高まる印象。

味:
口に含んだ瞬間からミカン、柑橘のオイル、白ブドウのジュース、ピーチ等々の甘くジューシーで優しいフルーツ感が溢れる。中盤より徐々に太さのあるモルト、クリーミーな穀物感、非常に柔らかいオークの樽感。フィニッシュはソフトで細く長い。柑橘系のクリアな甘さが長く長く最後まで続く。非常に僅かにオイリー。

感想:
素晴らしい。開栓直後ながらとても満足度の高い充実感。とにかくフルーティで、特に柑橘、それも和のミカンを思わせる要素が溢れる印象。それでいて、しっかりとモルティな部分もあり、飲みごたえもある。このままでも充分だが、今後さらに開いてフレーバーが豊かになることが期待できる。加水にも耐えるが、ストレートで全く過不足ない。

評価:5~5+ (特別な時に飲みたいレベル/極上の味)

コスパ:高額だが納得

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言うことなし。とにかく美味いグレンアギーでした。

ちょっと今まで飲んだことのないレベル。閉鎖蒸溜所という特別さを差し引いても、全く素晴らしいボトルです。

トップノートでは、長熟のグレンキースやキャパドニック等に共通する、個人的にシーバス香と呼んでいるモルト&オークの香りがあり。しかし間髪入れず、
柑橘などのスイートなフルーツフレーバーが押し寄せます。

味わいでも当然フルーツが凝縮。しかも非常にクリアーなフルーツフレーバーで、甘く、伸びやか。一方でモルト感や樽感も極めて程よいバランスで含まれ、線が細くなり過ぎず、後を引く美味さです。

ここまで顕著なフルーツがあり、且つ棘の無い味わいなのは使用樽がサードフィルのホグズヘッドなお陰でしょうか。ここまで原酒由来と思われるフレーバーが良く活かされたモルトは、これまで出会ったことがありませんでした。

限定とはいえ、オフィシャルでここまでのボトルがあるのか!と驚くとともに、心底満足のいく1本。飲めたことに感謝。そしてお値段は内緒。

グレンアギーは1983年に閉鎖。ブランド権および原酒の保有はアライド社を経て、現在はペルノリカール(シーバスブラザーズ)が保有しています。往時はブレンド用原酒にその殆どを供給していたため、オフィシャルシングルモルトとしてのリリースは皆無で、市場に出てくるのはボトラーズのものばかり。近年、ようやくシーバスブラザーズよりオフィシャルのリミテッドリリースが発売されるようになった模様です。

さて、今後開いてくるとどうなるのか…まだまだ楽しみは続きそうです。

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☆BALBLAIR 1979 (オフィシャル)
 Bottled in 2007
 度数:46%
(状態) 開封後8ヶ月/残量:60%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
ソフトだが主張のあるエステリー、リンゴジャム、バナナ。スイートなナッティ、マジパン、クリーム。僅かに柔軟剤っぽいフローラルもある。次第にオレンジピール、ビネガー。全体的に柔らかくてスイート。

味:
最初こそソフトだが、徐々にパワフルに。序盤はオレンジオイルとキャラメルクリーム。中盤からはビター、ウッディ、ペッパーが加わる。さらにソフトで穏やかなエステリー、オイリーを伴うナッツまたはクリームも出現。終盤からは次第にドライに切れ上がり、フィニッシュではソフトなウッディと、仄かなフローラルとエステリーが感じられ、乾いたビターとスパイスの余韻が残る。

感想:
香りは非常にソフトでエステリー&ナッティの柔らかい印象だが、いざ飲んでみると思いの外ビターでスパイシー。結構パンチが効いている。フィニッシュはそれほど長くなく、意外にもあっさりで、メリハリが効いた口当たり。飲み進めるとパンチの中にスイートやエステリー、クリーミーなニュアンスが重層的に現れ、後を引く。加水するとよりシャープな口当たりに変化。ウッドとオイリーなニュアンスが強調される。

評価:4~5(ゆっくり楽しめるレベル/非常に美味しい)

コスパ:値段相応

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バルブレアがオフィシャルボトルをヴィンテージシリーズに置き換えた際のファーストリリースのうちの1本。同時リリースには1989、1997ヴィンテージがあったようです。

味わいとしては、長熟らしい柔らかめなエステリーに、香ばしさとリッチ感の合わさったナッティ、クリーミーにこなれたモルティと多彩。樽感もいい具合の効き方で邪魔しない印象。加えてボディの太さ、モルトとスパイシーがはっきりと感じられる、安定感・満足感ともに抜群の1本です。さらに加水品ながら、これから開いてくる要素も期待できるところ。まだまだゆっくり楽しめそうです。

しかし、、やはりバルブレアはこうでなくちゃ、、とは無い物ねだりなんですかね(汗
懐古厨になってはいけないと思いつつも、、ね。

最近リニューアルされた年数表記ボトルではボディが結構細く、味わいもモルト感よりも若いイメージが先行する印象。それに比べこのボトルは…それこそ良い時代の遺物であり、今後ますます出会う機会の減る味わいと思うと、なんとも残念至極ですね。

しかしながら、前回のレビューでアップしたハイランドウィスキーフェス向けの1997シングルカスクのように「これぞバルブレア!」といった方向性の原酒もちゃんと残されている様子。

またこういうボトル出ないかなぁ…

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☆BALBLAIR 1997 (OB)
 HIGHLAND WHISKY FESTIVAL EXCLUSIVE
 FILLED ON “1st may 2019”
 度数:56.7%
(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
ツンとするエステリー、バナナ、メロン。香ばしい穀物感、ややビターなウッディ、ナッツ入りのミルクチョコ、ミントとミルクのキャンディ、若々しい雰囲気とフルーツのスイート感が混在。

味:
最初に押し出しの強いウッディとエステリー。僅かに石鹸のようなニュアンス。中盤からオイリーでクリーミー。オレンジソース、アーモンドクリーム、ホワイトペッパー。少々青みも感じられる。フィニッシュは意外と穏やかで、焙煎したような香ばしいモルト、クリームのフレーバーが残る。全体的にリッチでスパイシー、かつドライ。飲み進めると洋梨や白ブドウのようなニュアンスも現れる。

感想:
香りではエステリーが前面に出る印象だが、味わいとしては結構ファッティでスパイシー。骨太な印象だが相当ドライで、まだまだ開いていないと思われる印象。ドライだが決してライトではない。骨太で、近年のバルブレアの中でもなかなか飲みごたえのある1本。

評価:4(美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:値段相応

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バルブレアが、スコットランド本土・ハイランドエリアで開催される「ハイランド・ウィスキー・フェスティバル」向けに限定発売したボトル。

カスクタイプは未記載ですが、味わいから予想するにバーボンカスクでしょう(※海外記事にて“Ex-Bourbon Cask”表記あり。2020.08.12追記)。香りはややエステリーの押し出しが強め。遅れてナッツやクリーム系のソフトな甘い香りが前面に感じられました。一方で味わいはファッティ&ドライ。フルーツの要素も見え隠れしますが、まだまだ開栓直後ということもあってか、固い印象でした。何気にうっすらとフローラルなニュアンスも見え隠れ。放置でどれだけ開いてくるか、期待です。

バルブレアは比較的マイナーな部類のシングルモルトながら、しっかりとしたボディと分厚いモルト感が好印象なウイスキーです。アライド社所有時代にはバランタインの主要な原酒供給元として知られており、シングルモルトでの発売は極めて限定的でした。

シングルモルトとしてのリリースが活発化したのは現在のインバーハウス傘下になってから。当初はノンエイジと16年等数種の年数表記物で発売されていたようですが、2007年からはシングルヴィンテージ品のみを定番商品としてリリースするという異例のラインナップを見せました。しかし、世界的なウイスキーブームの中で原酒量が厳しくなってきたようで、2018年にはシングルヴィンテージでのリリースを終了。12年~25年の年数表記物に置き換えられてしまいました。

このボトルはシングルヴィンテージシリーズの終売後に登場したもの。

過去のシングルヴィンテージシリーズは物により差はあるものの、加水品ながら概ね厚みのある味わいと線の太さが個人的に好みで、かなり愛飲したシリーズでした。が、新ラインナップへの切り替わりで味わいが若くてライトな方向にシフト。加えて全体的な価格の上方修正によりコストパフォーマンスが合わなくなったために敬遠。以降しばらく疎遠になっていた次第です。

そんな中で故あって手元に来たこのボトルは、かつてのシングルヴィンテージの品々を彷彿とさせてくれるような厚みとナッティな甘い香りが好印象な一本でした。

やっぱちゃんといい原酒も持ってるんですねぇ。そして出るところには出ると。

バルブレアは最近ボトラーズでのリリースがとんとご無沙汰で、ちょっと寂しかったところ。こういうリリースは本当に有難く、そして次のリリースが待ち遠しいです。

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☆BALBLAIR aged 10 years
 GORDON&MACPHAIL
 度数:43%

(状態) 開封後2年程度/残量:40%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
スイートなモルトの香り、青リンゴを思わせるフレッシュフルーツ、少しくぐもったエステル、干し草。

味:
控えめなスイートとフレッシュな酸味、はっきりとしたビターを伴うウッディ、バタートーストを思わせるオイリー、バニラクリーム、僅かに青リンゴフレーバー、全体的にシンプルにまとまっているイメージ。フィニッシュにかけて籾殻(もみがら)のような乾いた香ばしさが感じられ、比較的ドライに終わる印象。余韻もかなりさっぱり気味。少し若々しい刺激もある。ボディは意外としっかり太いイメージ。

感想:
全体的にシンプル&ドライ。樽由来のニュアンスはあまり強くなく、どちらかというとニューポット由来と思われる粉っぽいモルティと乳製品っぽいオイリーが主体。フィニッシュも短くドライでシンプル。10年物らしく若い荒っぽさも感じられる。加水すると、よりビターでモルトの香ばしさが際立つ印象。逆にスイートさは遠のく。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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ボトラーズのゴードン&マクファイル社からリリースされている、所謂蒸溜所ラベルシリーズの一本。

バルブレア蒸溜所が標榜するビターでモルティ、かつドライな味わいをしっかりと体現した味わいで、短熟らしく樽感よりも酒質由来の風味がメインなイメージです。

樽に関しては特に記載がありませんが、色・味わいからバーボン樽メインまたはバーボン樽オンリーと考えて間違いないかと思います。10年表記ながら非常に樽感がライトなことから、セカンドフィルとも推測できます。

どちらにせよ、樽由来の要素が少なく、バルブレアの原酒本来の味わいを存分に堪能できる一本。色々試す前にキャラを把握するには丁度良いかと思います。願わくば値段がもうちょい手頃なら助かるのですが…。

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