ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

カテゴリ:ジャパニーズ > マルス

〇 ライトで飲みやすい味わいの駒ヶ岳。
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☆駒ヶ岳 KOMAGATAKE Limited Edition 2019
 Single Malt Japanese Whisky
 Non-Cill Filtered
 度数:48%

(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
ピノー・デ・シャラントのような濃密な甘い香り、アンズ、リンゴ、新品のレザー生地、紅葉の森林を感じさせる湿ったウッディ、薄っすらとシナモンやナツメグも香る。奥行きはそこまで無いが、スイートでやさしく好印象。スワリングするとミントのような青い香りが立つ。乳酸っぽい酸味もある。

味:
やや強めな渋み、ほんのりと甘く、やや単調な雰囲気。序盤~中盤では焼き菓子、リンゴの皮、レザーの香り。最後に少々モルトの香ばしさを感じる。
フィニッシュは中程度であっさり軽め。余韻ではリンゴや和梨の後味を思わせる風味。加水でビター、モルティ、酸味が現れるがボディは折れてしまう。加水には耐えられない様子。

感想:
ライトかつシンプル。香りでは特にトップノートで甘く濃密な印象。次第にシナモンやナツメグといったスパイス、晩秋の森の香りといった要素も現れ、なかなか良い印象。
一方で味わいの方は、やや単調。甘さやコクといった要素は非常にライトで控えめ。ウッディな渋みが目立つ印象。香りの期待からは少々ハズれる印象だった。ただ、特にネガティブな要素は感じられず、日常で飲む分には差し支えないかと思う。また、ややハイプルーフな設定であるものの、加水ではあまり伸びず。ロックやハイボールよりもストレートが推奨される印象。もう少しリーズナブルならば…。

評価: 3 (可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:やや悪い

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マルスウイスキー(本坊酒造)より年に1回リリースされるシングルモルト駒ヶ岳のイヤーリミテッドエディション。その2019年版のボトルです。

裏ラベルおよび既出の情報によると、信州蒸留所のバーボンカスク原酒を中心にバッティングしたものだそう。

香りではバーボンカスク由来らしい、スイートなフルーツ&オリエンタルスパイスが存在。かなり濃密な甘いニュアンスを感じたものの、味わいではもう一つ。加水にも弱く、ハイボールだとちょっと物足りない感じ。一方で棘の少なくスイート方面な味わいはビギナー含め万人に向く、無難な味わいといった印象です。

使用されている原酒は勿論、マルス信州蒸溜所のもの。マルス信州蒸溜所の原酒はバーボンバレル熟成主体で、実際の酒質もバーボンバレルとの相性が最も良いとのこと。今回のリミテッドエディション2019は若々しいながらも、信州原酒の“良さ”をそれなりに体現できているような気がします。ただ、如何せん熟成年数が足りないようで、味わいの厚みには欠けている様子。今後のリリースで味わいが如何に深化するか、注目していきたいと思います。

2018年より続くこのリミテッドエディションは今後の定番リリースの布石の一つ。原酒の供給・品質が安定すれば、待望の定番品「シングルモルト駒ヶ岳」がリリースされることでしょう。

それまでは首をながーくして待つしかないですね。

〇 成長を見せた信州の原酒。ウッディな味わいが好印象な1本。
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☆MARSMALT Le Papillon ギフチョウ
 Single Cask Single Malt Japanese Whisky
 Distilled and Matured at Mars Shinshu Distillery
 Distilled:Jan.2013  Botteled:Apr.2019
 度数:58%、
 樽種:アメリカンホワイトオーク(新樽)


(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
プラム、カカオやエスプレッソに近いほろ苦さ、湿り気のある木材のウッディネス、木酢や柿渋、過熟のリンゴ、クローブ、鰹出汁を思わせるニュアンスも。まだ若々しいニューポット感も残っている。

味:
オーク材のウッディで芳醇な香り、控えめで上品な甘さ、樽熟の梅酒または完熟のプラム、ハイカカオのビターチョコレート、クローブやオールスパイスのような甘くウッディなスパイス香、終盤で少々アルコール刺激があるが、度数ほどではない印象。もみ殻のような香ばしさ、梅の種の部分のような青っぽさも感じられる。フィニッシュはやや短めで穏やか。ミドルボディ程度ながら、熟成感も感じられる。

感想:
香りではやはりニューポット感が否めないものの、全体的にウッディで上品な印象。カカオのような香ばしさとともに、クローブを思わせるスイートなスパイスが心地よく、しつこい甘さや強すぎるビターも無く、予想以上に楽しめる味わい。加水でややボディ感が崩れる印象だが、ウッディな香りがよく広がる。6年熟成ながら、決して悪くはない完成度。

評価:4(美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや悪い

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マルスウイスキーのシングルカスク限定ブランドであるル・パピヨン。

ラベルに信州の野山に生息する蝶を描き、2016年よりリリース開始。第1弾はオオルリシジミ(アメリカンホワイトオーク新樽、4年熟成)、今作のギフチョウは第7弾にあたります。

原酒はライトリーピーテッドタイプで、樽はアメリカンホワイトオーク新樽。熟成期間は6年となっています。


本シリーズでリリースされる原酒は、現在のところ基本的に2011年の再稼働後の原酒に限られており、どれも若々しいニューポットの印象が強いことが特徴。シングルカスク故希少性は高いものの、ニューポットの刺々しさが先行し、シンプルに味を楽しむには少々難があるイメージでした。

一方で、シリーズを重ねるにつれて熟成期間が長いものがリリースされるようになり、信州蒸溜所の原酒の成長を体感できる、一種の物差しとしても楽しむことができるという、マニアには堪らないシリーズでもあります。ただ、アウトターンの少なさや価格設定の高さからなかなか入手が難しく、またバーでも遭遇の機会に恵まれない(特に首都圏以外)ことが少々難点ではあります。

さて今作ギフチョウですが、シリーズとしては最長熟成の6年物(信州の貯蔵庫で熟成)。前々作のミヤマカラスアゲハ(信州4年熟成原酒)が比較的ニューポット感が強く、若々しい印象だったのに対して、今作ではしっかりと熟成感を感じられ、最初に飲んだ時は予想以上に良い出来だったことにかなり驚いた記憶があります。
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今回改めてテイスティングしましたが、やはりこれまでで一番飲みやすく、樽感・酒質ともに纏まってきているなーという印象。たった2年の熟成期間の違いで(勿論他の要素も多分にあるとは思うが)これ程までに変わるものかと感心した次第です。

私感ですが、再稼働後のマルス信州の原酒は、最初のピークが10年前後に来るのではないかと勝手に予想。ニューポットの棘が取れ、ウッディなニュアンスと良い釣り合いが取れるのではないかと考えています。
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ともあれ、今後の信州蒸溜所原酒の成長に大いに期待をさせてくれる良ボトルでした。

日本の最南端、鹿児島県。その鹿児島県の南さつま市、津貫に現在日本で最も南西部となるウイスキー蒸溜所が存在する。それがここに紹介するマルス津貫蒸溜所だ。
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マルス津貫蒸溜所はマルス信州蒸溜所に続き、本坊酒造株式会社が開設したマルスウイスキー第2の蒸溜所である。実際のところ、過去には鹿児島工場、山梨ワイナリーでもウイスキーの製造が行われていた歴史があり、厳密にいえば本坊酒造史上4つ目のウイスキー製造工場ということになるだろう。
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津貫蒸溜所のある場所は元々焼酎製造を行っていた本坊酒造津貫工場があり、本坊酒造生誕の地でもある。蒸溜所敷地内に高々とそびえる建屋内には、当時焼酎やスピリッツの製造に使用されたスーパーアロスパス式の連続蒸留器が歴史の名残として展示されている。また、連続式蒸溜器は使用されていないものの、津貫蒸溜所の隣には本格焼酎の製造所、貴匠蔵が併設され、現在も焼酎の製造が続けられている。
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津貫は信州蒸溜所と比べて温暖かつ湿潤。ウイスキーの熟成も早く進むとされ、蒸散によって失われてしまう量は年間で6%(信州で約3%程度)になるという。
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また、本坊酒造は津貫蒸溜所と同時に屋久島にウイスキー用のエージングセラー(熟成庫)を開設。信州蒸溜所と合わせ、3カ所に熟成庫を持つことになった。現在、津貫と信州の2蒸溜所で製造したウイスキーを3カ所それぞれ相互に移動、保管し、それぞれ原酒に対してそれぞれの熟成庫の自然環境の影響を加え、性質の異なるウイスキーの完成が目指されている。

信州で蒸溜、津貫および屋久島で熟成した原酒はそれぞれ「駒ヶ岳 津貫エイジング」「同 屋久島エイジング」として既にリリースされている。これらはまだ短熟の製品ではあるが、それぞれ熟成環境の違いが少しずつ現れており非常に興味深い仕上がりになっている。今後5年、10年と経過することでどのような味わいに変わるのか、長熟ボトルのリリースが楽しみだ。

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尚、津貫原酒の信州、および屋久島のエイジングシリーズはまだ一般販売されていない。今年の蒸溜所イベントで初めて限定販売され、蒸溜所へ行けばまだ試飲も可能だ。信州、屋久島ともに試飲をしたが、とても面白い出来栄えになっていた。気になる方は一度蒸溜所にて試飲することをオススメしておく(残念ながらボトル販売分は完売)。

去る令和元年の8月中旬、マルス信州蒸溜所を見学に訪れた。

久しぶりの…と言いたいところだが、実はこの5月GW連休に訪れたばかり。3ヶ月振りの再訪となった。
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前回訪問から僅か3ヶ月だったが、敷地内の様子は大きく変化。
敷地内は2020年のリニューアルを控えて絶賛工事中であり、奥側の拡張工事現場は変わらずあったのだが、その時点で存在していたはずの旧事務所建屋は既に取り壊され、新建屋の基礎工事の最中であった。
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また、以前の売店スペースはバリアフリーが意識された、きれいなトイレに変わっていた。
来る度変化する蒸溜所内の景色を横目に試飲カウンター兼見学受付へ。
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既に夏季のメンテナンス期間に入っていたため、製造作業の見学はできなかった。製造作業の再開は8月の末を予定しているとのことで、この記事を書いている9月初旬には既に製造シーズン真っ只中と思う。
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設備をぐるっと見学し、お決まりの試飲へ。南信州ビールで喉を潤し、製品の試飲へ。
この日は盆期間の最初だったこともあってか、開店から断続的に団体客が来訪し、カウンター、そして併設のショップは途切れなく賑わっていた。混雑の合間を縫うようにしてスタッフさんと僅かながら情報交換。

新蒸溜エリアのレイアウトや新試飲カウンターについて等々…訪客で途切れ途切れになりながらも、有意義な会話ができた。
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製品試飲のほうでは先頃発売されたル・パピヨン ギフチョウの出来に驚かされた。
シングルカスクのシリーズとなるル・パピヨンでは初の6年物。昨年冬頃から発売された駒ヶ岳シングルカスク2012と並ぶ熟成年数であり、蒸溜所再開後の製品としては現行最長熟成年数でもある。これまでのル・パピヨンでは3~4年程度の原酒のリリースが主体であり、概ね未熟感の存在する少々飲みにくいボトルという印象が強かった。そんな飲みにくさの中にも様々あるポジティブな要素、例えば青梅や南国フルーツに繋がる要素を拾い出しては将来の原酒の出来栄えを夢想し楽しむというちょっと(というか相当)コアな飲み方をしていたのだが、今回は無用。これまでのニューポットさが大きく抜け、ウッド、バニラ、フルーツと所謂ウイスキーのわかりやすい旨さが詰まっていた。既にある程度満足できる味であると共に、これから先10年物や15年物に大きく期待が持てる出来栄えであった。
マルスウイスキーファンにはその美味しさに加え、将来の原酒の出来を想像する材料としても一度口にして頂きたい逸品である。残念ながら限定品でありアウトターンも決して多くない為、ボトルの入手は困難であるが、バー等ではまだ飲むことができる。勿論、蒸溜所でも暫くは試飲可能と思われるので現地で試してみるのも良いだろう。
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次に来るのはおそらく冬場だろう。次回訪問時はどのように変化しているのか、期待が膨らむところだ。

マルス信州蒸溜所は通年、見学が可能。しかも料金は無料である。
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ただしツアーガイドの同行は無く、時間制限も無し。一応順路は案内されているものの、基本的には自由に見学エリアを散策する形となっている。詳しくは後程説明するが、見学後には試飲スペースにて原則有料にて製品の試飲が可能だ。

現在の見学順路は、熟成庫→製造棟(糖化→発酵→蒸溜)の順になっている。この順番だと本来ならば一番最後に来るはずの熟成が最初になってしまうが、実際には必ずしも順を追って見学する必要はないので熟成庫を後回しにしてしまうのも手だ。幸い熟成庫は製造棟とは別棟になっているので、順路を逆走して後続の見学者とぶつかることもない(移動距離はやや伸びるが…)。
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ウイスキーの製造を見学した後は試飲スペースで製品の試飲が可能だ。原則有料試飲メニューのみとなっているが、見学者はブレンデッドウイスキー信州を1杯無料で飲むことができる。カウンターテーブルの上には仕込み水にも使用している駒ヶ岳山麓の伏流水も用意されており、各種ウイスキーをストレートで楽しんだ後に加水したり水割りにすることも可能だ。ここでは現行品のボトルの他、運が良ければ既に終売になっているボトルや限定品も試飲することができる。またワイン、梅酒などの自社製品や併設されている南信州ビール工房の各種ビールをオーダーすることも可能。勿論ノンアルコールのジュース等も用意されているので幅広い客層に対応可能だ。
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試飲後は基本的に自由に退店可能であるが、再び設備の見学に戻ることもできる。蒸溜所スタッフに確認すればミドルカット等各作業のおおよその開始時刻を教えてもらえるので、自分の見たい工程に合わせて見学に向かい、待ち時間で試飲を楽しむことも可能だ。
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マルス信州蒸溜所は年末年始や工事などの特別な期間を除いて通年見学が可能である。ただし、夏場に関しては概ね7~8月の期間に設備の集中メンテナンスを行う都合、実際に稼働中の製造エリアを見ることはできない。ただ、熟成庫の見学や試飲、スタッフの方との会話は可能なのでそちらを是非楽しんでいただきたい。

尚、上記情報は2019年現在のものであり、2020年秋頃には敷地内で製造棟の新築移転、およびビジターセンターの新設等が行われるため見学方式などが変更される可能性がある。それについては公式にアナウンスされ次第、ご報告したい。

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マルス信州蒸溜所の生産量は年間10数万リットル(近年は約13万リットルといわれている)であり、他の有名大企業の蒸留所に比べると非常にミニマムである。

以下、製造に関する設備の概要。

〇 マッシュタン:ステンレス製×1基
〇 ウォッシュバック:鉄製×5基、木製×3基 (※木製は2018年導入)
〇 ポットスチル:初留×1基、再留×1基
〇 貯蔵庫:5段ラック式×1棟 他2棟

やはり目を引くのは初留と再留でサイズ・形状の異なるポットスチルだろう。
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向かって右が初留、左が再留。写真のポットスチルは2014年に更新された新しいものだが、形状は創業時に山梨から移設された初代ポットスチルを再現した精巧なレプリカである。サイズは見ての通り初留釜よりも再留釜が大きく、現在は初留3回分につき再留1回を行うペースで稼働している。

サイズ以外を細かく見ていくと、初留釜の方が直線的な形状をしており、再留釜は曲線的である。また、冷却部分も初留・再留で異なっており、初留がシェル&チューブで再留がワームタブである。サイズや形状が初留と再留で異なる蒸溜所は国内外問わず多いが、冷却システムに至るまで違う構造になっている蒸溜所は珍しいと言える(国内は他にサントリー系列の2蒸溜所があるのみ)。

このポットスチルは岩井喜一郎が設計した事で知られ、設計に際して竹鶴ノートのポットスチル見取り図が参考にされているというのは有名なお話。ジャパニーズウイスキーの歴史を語る上でも、注目すべきポットスチルである。尚、撤去された旧ポットスチルは現在モニュメントとして屋外に展示されている。
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原酒の作り分けに関しては、モルトのピートレベルで4種(ノンピート、ピーテッド、ヘビリーピーテッド、スーパーヘビリーピーテッド)に加え、イーストが3種類(ディスティラリー酵母、自家酵母、エール酵母)、さらに2018年以降は鉄製と木製のウォッシュバックによる違いも加わり多種類に及ぶ組み合わせの原酒造りがされている。
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熟成には他社同様様々な樽が使用されており、メインはバーボン樽で他はホワイトオーク新樽、シェリー樽、変わったところでは梅酒樽なども使用されている。
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信州蒸溜所でのエンジェルズ・シェアは年間約3%前後とのこと。高原ならではの澄んだ空気とダイナミックに変動する気温が熟成にどう影響を与えるか、それは皆さんの舌で実際に味わって体感していただければと思う。

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マルス信州蒸溜所は長野県の中南部、上伊那郡宮田村(かみいなぐん、みやだむら)に位置している、現在、日本で最も標高の高い蒸溜所である。

マルス信州蒸溜所は鹿児島県に本拠地を置く本坊酒造の所有するウイスキー製造工場のひとつであり、1985年に創業。建屋自体は当時新規に建てられたものであるが、製造設備に関しては1960年より稼働していた山梨県石和(いさわ)のウイスキー工場から移設したものが使用された。

創業当初の名称はマルス信州ファクトリー。1992年には折からのウイスキー不況の余波を受けて製造を休止。製造再開まで約20年もの間、新規にウイスキーの製造は行われなかった。そして2011年にようやく製造再開。これに合わせ、名称をマルス信州蒸溜所に改めて現在に至っている。
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蒸溜所が位置するのは木曽山脈の最高峰、駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)の麓である。周囲には山林が広がり、澄んだ空気に混じって山林独特の木や土、草などの香りが感じられる。蒸溜所の隣には天竜川の支流のひとつ、大田切川(おおたぎりがわ)が流れ、まさに自然に囲まれた高原の蒸溜所といった趣だ。

先述の通り、日本で最も高所に位置する蒸溜所であり、その標高は798メートル。おそらく日本以外の5大ウイスキーの中でもトップレベルの標高である。気候は冷涼…と言いたいところであるが、最近の夏場は35℃手前まで気温が上がることも珍しくなく、決して涼しいばかりの土地ではない。一方で冬場には一気にマイナスまで気温が落ち込み、-10℃程度まで下がる日も間々ある。また、東西を山脈に挟まれた地理故に日照時間が少々短く、日中に気温が高くても夜半過ぎには涼しく感じる場合もあるほど、1年はおろか1日単位で見ても気温の上下が激しい。
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そんな地理・気候条件の中、2011年の復活以降マルス信州蒸溜所では毎年約10数万リットルの原酒が仕込まれている。近年のウイスキーブームにより、今後はさらに増産する計画で、既に来年(2020年)の完成を目指し、製造エリアの新設移動、貯蔵施設の拡充、ビジターセンターの新設などの拡張工事が始まっている。

新装オープンは2020年9月の予定で、新装前の最後の蒸溜は6~7月頃になる見通し。果たしてどんな形に生まれ変わるのか、楽しみだ。

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