ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

カテゴリ:ジャパニーズ > サントリー

前回:「蒸溜所への行き方」

前回、サントリー山崎蒸溜所へのアクセスとツアー予約について解説したが、今回は各見学ツアーの具体的な内容や違いについて紹介したいと思う。
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有料の見学ツアーが2種類あることは前回述べた通り。見学費用が1000円で、予約できる時間枠の多いノーマルの見学ツアーと、2000円の「シングルモルト山崎誕生の物語」という上級の見学ツアーがある。
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2つのツアーの大きな違いは試飲メニューにあり、1000円のツアーではシングルモルト山崎ノンエイジとその構成原酒2種(ホワイトオーク樽原酒、ワイン樽原酒)を、2000円のほうではシングルモルト山崎12年と構成原酒3種(ホワイトオーク樽原酒、シェリー樽原酒、ミズナラ樽原酒)をそれぞれ楽しむことができる。
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また、1000円のツアーが試飲以外はずっと立ったままで進行するのに対し、2000円のツアーでは最初にツアー用のホールに案内され、着席しながら蒸溜所紹介の動画を見てから工場見学、さらに戻って今度は山崎12年の紹介動画を見て、それから試飲という流れになっている。
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工場見学の部分に関しては全く同じ順路、基本的に同じ内容となっているが、1000円のツアーが時間的に少々タイトな設定なのに対し、2000円のツアーでは多少余裕のある進行になっており、個人での質問やエリア毎の写真撮影がしやすくなっている。
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この時間的な余裕の差は非常に大きく、1000円のツアーでは説明を細かく聞いていると写真を撮る暇が無く、逆に写真をしっかり撮ろうとすれば説明を聞きそびれてしまいがちだ。その点、2000円のツアーではゆったりと見学を楽しむことができ、値段相応に満足度が上がっている印象だ。

尚、どちらのツアーも原酒は1杯ずつ、製品は2杯ずつ(2杯目は多めの量で)用意され、さらにグラスと氷、炭酸水も配られ、製品2杯目を好みの方法で楽しめるようになっている。ツアー推奨の飲み方はハイボールだが(美味しいハイボールの作り方をレクチャーされる)、ロックでも水割りでもストレートでもどれで楽しんでも良いだろう。また、おつまみとしてナッツやチョコレート等も用意されている。
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1000円もしくは2000円でここまで至れり尽くせりなツアーも珍しいだろう。ただ、1000円のツアーではやはり時間の制限がタイトであり、ゆっくりじっくり楽しむのは少々難しい。一方2000円のツアーでは試飲時間もかなり余裕をもって取られていて、テイスティングアイテムが1種類増えているにも関わらず最後までゆっくり味うことが可能だ。

全体的にみてやはり2000円のツアーのほうが満足度は高めになっている。が、1000円のツアーも決してレベルが低いわけではない。ウイスキー蒸溜所の見学ツアーとしてはどちらも非常に優秀で完成度が高く、十分楽しむことができる。
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たまたま2000円のツアーが予約できれば良し、ダメでも1000円のツアーで基本的な部分は十分に見て回ることができるし、一部の原酒や製品は試飲カウンターでも楽しむことができる。

さてツアーの内容についてはここまで。具体的な内容は是非ご自身で参加し、体験していただきたい。

ウイスキーの蒸溜所は今や日本全国各地に点在している。ここ数年でその数は20を超える勢いであり、半数以上の蒸溜所が一般客に対して設備の見学を実施している状況だ。
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ウイスキーファンの方々の中には、住まいの地域に蒸溜所があるという方もいらっしゃるだろうし、また、旅行に行かれる先が蒸溜所が立地する地域であることも同様に少なくないと思う。ならば、是非とも暇なときに、観光ついでで構わないので蒸溜所に立ち寄って欲しいと思う。

このブログでは自分自身で訪問経験のある蒸溜所に関して、訪問の経路や交通手段、見所や見学のポイント、宿泊や周辺施設の情報までできるだけ幅広く情報を発信したいと思い、「〇〇蒸溜所へ行こう」というシリーズでこれを順番に紹介していきたいと思う。


シリーズ最初は国内第1号蒸溜所で知られるサントリー山崎蒸溜所から始めたいと思う。

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山崎蒸溜所が位置するのは大阪府と京都府の府境「大阪府三島郡 島本町」。最寄り駅は「山崎(JR)」または「大山崎(阪急)」の2つである。
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どちらの駅も大阪、京都から約30分程度で往来できる距離であり、駅からも徒歩で5~10分程度とかなりアクセスの良好な立地である。行き方に困ることはないだろう。

また、蒸溜所敷地内に一般客用駐車場の用意が無いため、訪問の際には電車+徒歩での移動が基本となる(駐輪場も無し)。また、当然ながら運転する予定があってのウイスキー試飲はご法度なので、蒸溜所を満喫するためにもできるだけ公共交通機関のみを利用して向かって欲しい。

さて、蒸溜所に向かう前に一つ注意して頂きたいことがある。それは山崎蒸溜所が見学コースも見学無しで立ち入る場合にも必ず事前予約が必要であるということである。予約は山崎蒸溜所公式ウェブサイトか電話(番号は公式サイトを参照のこと)にて行うことができ、月初めの最初の平日に3か月後の月の1か月分の枠が開放されるようになっている(開放日時は前後する可能性あり。公式サイトにて次月の開放日の案内がされるので参照してほしい)。

土日祝日など人気のある曜日は開放と同時に埋まることも珍しくないので、絶対に行きたいという方は早めに予定を組み、開放と同時に予約するなど尽力していただきたい。

予約できるコースは、通常の見学ツアー(1000円)、「シングルモルトウイスキー山崎誕生の物語」という特別コース(2000円)、山崎ウイスキー館(ショップ、試飲、展示)見学コース(無料)の3コースとなっている。

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通常のツアーは年末年始やメンテナンスによる休止期間を除き通年で開催されており、時間も朝から夕方まで5枠ずつ設定されている。無料コースも同じ日程で予約可能で、こちらは7枠となっている。一方、特別コースは土日祝日限定となっており、時間は13:00からの1枠のみとかなり制限されているので注意が必要だ。

予約さえ取れてしまえば、あとは蒸溜所に行くのみ。入口の受付で手続きを行い、見学ツアーは所定の場所にて待機、入場のみの場合はそのままショップや試飲コーナーへ向かおう。

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先述の通り、大阪または京都からのアクセスが非常に良好であるため、関西圏の観光のついでに立ち寄ることも容易。宿泊に関しても都市部周辺にホテルが点在しているので困ることはないだろう。ただ周辺に飲食店が無いことだけが唯一の欠点だろう。蒸溜所内にもレストランは無いので、どうしても現地で食事が必要な場合には駅近くのコンビニを利用するほかない。

尚、JR山崎駅前からはJRA京都競馬場への直通バスも運行中。蒸留所でウイスキーを飲んでから競馬場へ行くというオトナな(ジャンキーな)楽しみ方もできるということを付記しておこう。


[アクセス]
≪JR京都線≫
〇 大阪駅(京都・滋賀方面)→ 山崎駅
〇 京都駅(大阪・神戸方面)→ 山崎駅

≪阪急京都線≫
〇 梅田駅(京都河原町方面)→ 大山崎駅
〇 京都河原町駅(大阪梅田方面)→ 大山崎駅

最寄りの都市は大阪または京都。飛行機ならば関西空港または大阪空港から大阪駅へ移動し、そこからJR線で移動するのが一般的なルートになるだろう。大阪空港からの場合は大阪モノレールより阪急宝塚線へと乗り継いで、梅田方面途中の十三駅にて京都方面行きに乗り換えてもよい。

新幹線の場合には西方から来るなら新大阪駅、東方からならば京都駅でJR線にそれぞれ乗り換えればよい。JR線で大阪や新大阪から乗る場合は「快速」または「新快速」列車に乗り、高槻駅で普通列車に乗り換えると時間短縮ができる。京都からは快速列車からの乗り換えができないので、普通列車一択となる。

移動の際の注意として、JR京都線が比較的遅延が発生しやすい路線となっているので、時間に余裕をもって移動することをお勧めしておく。

次回:「蒸留所ツアーの楽しみ方」編

〇 直球と見せかけた変化球? サントリーブレンデッドの変わり種
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☆ THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY BLENDED JAPANESE WHISKY RITCH TYPE
 (Alc.48%、オフィシャル、ブレンデッドウイスキー)

(状態)
開封直後/残量:100%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
キャンディー、ジンジャー、ドライフルーツ、牛脂のようなファッティ、少々金属臭。次第にミルククリーム、トマトピューレ、ビーフブイヨン、セロリの葉、バルサミコが現れる。さらに経過するとメープルも。

味:
はっきりしたシロップの甘さ、リンゴのバターソテー、少々カスタードクリームやバニラ、スパイシーで程良い刺激。次第に杉板のようなウッディ、タンニン。ミネストローネを思わせるスープ。余韻にかけてピーチやマスカットのフルーティ。みたらし団子。余韻は長めで、ビターとドライフルーツが残る。

感想:
最初から山崎の原酒らしい香りがはっきり現れ、サントリーのブレンデッドの王道路線の雰囲気で始まるが、徐々に杉板由来の個性が顔を出し始める。特に中盤以降はトマトスープ感や金属、杉板の風味が現れ少々異質。それでも最後はピーチやマスカットなどフレッシュフルーツやみたらし団子の風味が現れスイートに収まる。所謂リッチ感もそれなりに感じられ、普通に楽しめる。余韻はやや長い印象。

評価: 3 ~ 4 (可も不可もなし ~ 美味しく感じる)

コスパ:値段相応~やや高い


前回に引き続きTHE ESSENCE of SUNTORY WHISKYの第3弾、の2種のうちのもう片方。

クリーンタイプに比べると圧倒的にサントリーのブレンデッドウイスキー感が出ており、一見するとド正統派に見える1本。しかししか~し、飲み進めば進むほど明らかに異質な雰囲気のフレーバーが顔を出してきます。

やはり際立つのは金属やトマトスープのイメージ。クリーンタイプに比べて動物性のファッティ感が強く、そのせいかビーフブイヨンのようなコクを感じ、よくあるフルーツやバニラクリームのようなデザート系ではない料理的な味わいを連想させます。やはり杉樽の影響か、一般的なブレンデッドと比較すると明らかに個性的。それでもクリーンタイプより纏まりの良い印象で、飲みやすさではこちらに軍配。ただし加水ではエグみが増すように感じられ、ボディも折れるので飲み方は個人的にはストレート一択かなと思いました。
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さて、最新作を2種類とも飲んだ結果は…まあ良くも悪くも実験的なボトル…と言ったところでしょうか。決して万人にオススメできないし、だからといって不味いとか飲めないとかではなく、良くも悪くも玄人向けな、お試し的な要素の大きな仕上がりに感じました。そもそもエッセンスオブシリーズが料飲店限定流通品であり、リミテッド商品なので当たり前といえば当たり前なんですがね。

ただ、杉樽の影響がどういうものかを知る上では非常に勉強になるボトルだと思います。もしバー等で見かけられたら一度試してみてはいかがでしょうか。

〇 変化球だが悪くない、サントリーブレンデッドの異端
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☆ THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY BLENDED JAPANESE WHISKY CLEAN TYPE
 (Alc.48%、オフィシャル、ブレンデッドウイスキー)

(状態)
開封後数日/残量:90%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
最初は驚くほどはっきりした杉材の香り。木材加工所、高級家具屋の香りを思わせる。その後徐々にピーチ、洋梨、梅酒、バニラキャラメル、トマトソース、スパイスが香る。時間経過とともに松ヤニ、ミルククリーム。僅かにピートも感じる。かなり個性的な印象。

味:
ピーチネクターやマスカットのガム、リンゴ、あっさりした甘さとウッディなニュアンス、しっかりとビター。杉の香りは程良く感じる程度。ややスパイシーで、トマト風味、サルサソースのような独特の旨味、ジンジャーも感じる。少々青っぽくて金属的な風味も感じる。余韻はドライ寄りで短め。飲み進めるとトマトや青さが目立つようになる。少々オイリー、ミルキー、若い印象。

感想:
とても個性的!だが不味かったり飲めないという訳ではない。杉の風味は思ったほど強くない。杉の香りとの相互作用なのか、トマトまたは金属的なフレーバーが目立つ。また杉樽香がこなれてくると少しファッティな印象に変わってくる。加水は数滴なら伸びる印象だが、ウッド感が強くなってくる。多く加水するとボディが崩れる印象。

評価: 3 (可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや高い


先日発売開始となったサントリーの料飲店限定シリーズ、THE ESSENCE of SUNTORY WHISKYの第3弾

今回のエッセンスオブサントリーは「杉樽」がテーマ。片や白州蒸溜所の若いモルト、もう一方は山崎蒸溜所の長熟モルトを軸に、知多のグレーンを加え杉樽をアクセントとして使用した独特のブレンデッドウイスキーです。

正直「杉樽」と聞いてかなり構えていたのですが、いざテイスティングしてみると意外と楽しめる香り&味わいに驚かされました。ただ、ブレンデッドとはいえピーキーなリリースであるエッセンスオブシリーズなだけあってか決して万人受けする雰囲気ではない、一癖二癖ある印象。

杉樽由来と思わしき独特なファッティなコクや木材感、そこはかとなく香る青さやトマト、金属臭などかなり個性的なフレーバーを含んでおり、ブラインドならばまずサントリーのブレンデッドとは答えないような、かなり異端を感じさせるキャラクターでした。

杉樽といえば過去にサントリーからリリースされていた「膳」や「座」、「響12年」等の原酒に杉樽が使用されていたことで知られています。また、非常に個性が強く、短期間の熟成でもかなり香りが出たとか出ないとか…。まあだからこそ樽全体に使用せず鏡板のみの使用に留まったということなんでしょう。

杉樽といえば、先頃「神息(かみき)ウイスキー」という日本”っぽい”謎のブランドが海外で発売され、「マリッジに奈良県の吉野杉を使った」とアピールしていましたね…。ブランドページには「杉樽」と明記されておらず、一体どのような形で使用したのか謎ではありますが、もし全面杉製の樽を使っていたとするのならば、どのような味がするのか興味をそそられるところでもあります。まあテイスティングの機会、無いと思われますが…

今や世界でも屈指の規模の酒類メーカーとなったサントリー。そんなサントリーが山崎蒸溜所に次ぐ第2蒸溜所としてオープンさせたのが、山梨県北杜市に位置する白州蒸溜所だ。
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白州蒸溜所があるのは山梨県北杜市。街や駅から遠く離れた森林の中に位置している。日本国内で山や海、はたまた都市部や工業地帯に立地する蒸溜所はあれど、深い森林の中に位置する蒸溜所は珍しい。
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白州蒸溜所が創業したのは1973年。後、1981年に同敷地内にもう1つ蒸溜所を建造し、最初の蒸溜所を「白州西」、新しい蒸溜所を「白州東」蒸溜所とした。その後、白州東蒸溜所が本格稼働するのと同時に白州西蒸溜所は事実上閉鎖。現在「白州蒸溜所」と呼ばれている施設は「東」蒸溜所のほうである。

尚、「西」の建物は取り壊されずそのまま保存され、現在はコンサートホールやセミナールームとして利用されているようだ。
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敷地内には所謂蒸溜所としてウイスキーの製造が行われる棟、樽の貯蔵庫、クーパレッジ、他ビジター用のショップ、レストラン、博物館など多くの施設・棟が林立している。製造設備の規模は同じくサントリーの山崎蒸溜所に匹敵する大きさで、やはり他社の蒸溜所とは一線を画す印象だ。さらに敷地内には多くの木々が立ち、野鳥の森「バードサンクチュアリ」として観光スポットの一つとしており、自然と融合したナチュラルなイメージが強調されている。

これだけ多くの施設があり、さらに合間合間に森林が広っていることからも解るように、白州蒸溜所は極めて広大な敷地に存在している。実際、見学で訪れるとエントランスからビジターセンター、ビジターセンターから製造棟、製造棟から貯蔵庫までの距離が大きく開いていることに気づく。製造棟から貯蔵庫に至ってはバスで移動するほどの距離があり、全行程徒歩で見学する山崎とは大きな違いである。
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先述の通り蒸溜所敷地内には木々が生い茂り、移動中にちょっとした森林浴が楽しめるし、四季によって変わる景色も非常に良い。都市に近く、非常に工業的なイメージの山崎蒸溜所と好対照な、まさに「森の蒸溜所」だ。

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