ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

カテゴリ: ジャパニーズ

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☆Vacation Whisky 2015
 Always Christmas
 Komagatake Singlemalt
 Aged 5 Years

 度数:61%
 樽種:ANEJO CASK
(状態) 開封直後/残量:100%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
シルバーテキーラ、アガベシロップ、仄かに焙煎感を伴う穀物、おがくずのようなウッディ、スイート感のあるエステリー、木酢、腐葉土。時間を掛けると僅かにマンゴージャムのようなトロピカルフルーツが開く。

味:
シルバーテキーラの独特な芳香と甘み、ビターなウッディ、仄かにラムネっぽいフレーバー、香ばしい穀物、僅かに金属感とナッツ系のファッティ。フィニッシュは中くらいで、タンニンと独特な青っぽさ、仄かな土系ピートを残しつつ、ドライに切れる印象。若さと度数相応にしっかりとした刺激感がある。

感想:
なかなかの変わり種。ウイスキーっぽさよりもテキーラの風味が勝る印象で、良くも悪くもテキーラ味。それも原酒のニューポット感と相まってか非熟成のシルバーテキーラの風味に感じられた。一方、時間をかけてじっくり香りをみていくと僅かながらにトロピカルフルーツのフレーバーも顔を出す。香りがしっかりと開いてくれば、化ける可能性があるかもしれないが、現状では「変わり種」以上の評価は付け難い。尚、加水するとよりテキーラの風味が浮き上がる。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い

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Sake Shop Satoが不定期にリリースしているクリスマスラベルの第5弾。

中身は『ANEJO(アネホ)CASK』との表記からわかる通り、テキーラカスクで熟成された5年熟成のシングルモルト駒ヶ岳(マルス信州)です。

駒ヶ岳シリーズといえば、直近で発売されたIPAカスクやTWSCにも出品されたマデイラカスク、ブレンデッドウイスキーのフィニッシュにしようされた桜カスク等、レギュラー外の変わり種の樽を所有していることで知られています。その中でも今回のテキーラカスクは恐らく変わり種中の変わり種。

実際にテイスティングしてみると、予想以上にテキーラ色の強い仕上がりになっており、好き嫌いによって賛否分かれそうな印象。

以前、同シリーズにて江井ヶ嶋(旧ホワイトオーク)蒸溜所のシングルモルトあかし・テキーラカスクがリリースされ、こちらも一度テイスティングをした経験があり、なかなかのテキーラ感に驚いた記憶があったのですが、今回の駒ヶ岳も負けず劣らず、なかなかパンチが効いておりました。

ただ、単純に全てテキーラ一色なのかというとそんなことはなく、駒ヶ岳らしいエステリーや、バーボンカスク(テキーラの熟成には多くバーボンカスクが用いられる)由来と思わしきトロピカルフレーバーの片鱗が見え隠れしており、今後の開き具合によってはそれなりに楽しめる仕上りになる可能性も感じられました。

ただ、やはり開けたてはなかなか難しい…。また時間を空けて、どのように変化するのか、楽しみに待ちたいと思います。

セッション
(画像:ニッカウヰスキー「セッション」公式サイトより転載)
☆NIKKA Session 奏楽
 度数:43%
(状態) 開封時期不明/残量:60%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
スイートかつ香ばしさを伴うモルティ、白桃のシロップ、洋梨のコンポート、リンゴのグラッセ、クリーンなイメージのエステリー、蜜柑のピール。クリーミーやフローラルもある。控えめにウッディ、バニラ、土っぽいピーティ。徐々にマンゴーのようなトロピカルフルーツフレーバーが現れる。

味:
ややエッジの効いたビターとウッディ、土と灰のピーティ、シロップのようなクリアーな甘み、マンゴーフレーバー、少々出汁っぽいニュアンスもある。徐々にビターキャラメル、バニラクリーム、仄かなナッティが現れる。フィニッシュはドライ。椎茸の出汁を思わせる土っぽいピーティと、やや石鹸寄りのフローラル、少々のビターが残る。度数のわりに多少刺激が強い印象。

感想:
香りでは圧倒的にスイートとフルーツが優勢で、味ではビターとウッディ、ピーティがメインなイメージ。それぞれの要素がある程度独立して感じられる一方、強く突出する訳でもなく纏まりは良い。加水でビターが和らぎ、ナッツの香ばしい風味が増す。また、それほどバランスが崩れる様子もなかった。普段飲みでもおそらく充分楽しめる印象。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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先日より発売となったニッカウヰスキーの新製品。

国内のモルト原酒(余市、宮城峡)と海外のモルト原酒をブレンドしたブレンデッドモルトです。

本ボトルでは大々的に「海外原酒の使用」が謳われており、原酒の出元として「ベンネヴィス等」と紹介されています。

ウイスキーにお詳しい方でしたら既にご存じの通り、ベンネヴィスはニッカウヰスキーが所有するスコットランドの蒸溜所。ややケミカルなトロピカルフレーバーが特徴的なウイスキーを造っています。

このベンネヴィスの原酒とニッカウヰスキーの製品に関しては、ウイスキーファンの間でこれまでグレーな談義が多く交わされてきたわけなのですが(特にブレンデッドモルト既製品のアレとか)、いよいよ「使ってます」を明示した製品が登場してきた訳です。

これは勿論時代の流れ、ワールドブレンデッドの台頭が大きく影響していると考えるのが自然なんでしょうが、国内製品のレギュレーション(所謂“ジャパニーズウイスキー”表記に係る部分)を考慮した際の、明確な住み分けを行うための準備的な意味合いも感じられます。

つまり、今後は「純国内原酒」製品と「国内と海外のブレンド」製品でブランディングや価格帯の位置づけを区切り、販売していこうという戦略があるように感じられた訳です。あくまで個人の推測ですがね…。


さて余談はさておき肝心の中身ですが、エステリー、トロピカルフルーティ、ピーティがそれぞれ単独でそれぞれしっかり活きている印象でした。つまり、「宮城峡のエステリー」、「海外(ネヴィス)のトロピカル」、「余市のピーティ」という特徴的な要素を活かしたまま、一つの製品の中に詰め込むようなブレンドをしている…といったところでしょうか。

下手をすれば個性どうしが喧嘩し、潰し合ってしまいかねない方向性な訳ですが、絶妙に上手く纏まっています。老舗のブレンド技術は侮れませんね。

ただ、モルト原酒の個性はそれぞれ際立ってはいますが、味わいの印象は、やはりというか当然というか中庸のやや上ぐらい。また、若い原酒由来と思わしき刺激感も多少あり。日飲み用やライトに飲む酒として食中や1杯目あたりに楽しむのが良さそうです。値段的にもちょっとアッパーですが、許容範囲かなと。

飲み方としては加水に耐える印象だったので、ハイボール、ロック、水割り、ストレート等々なんでもいけそう。

多彩な楽しみ方ができるという点では、海外原酒を使っているとはいえ非常に日本らしいブレンデッドモルトであり、間口の広いウイスキーであると言えるでしょう。

海外原酒のブレンド使用に関しては賛否含め様々が意見が飛び交っているところですが、余程のものでない限り、フラットに捉え、先入観なく楽しむのが良いと思います。本ボトルはまさにその好例。斜に構えず楽しめば、無難に充分楽しめる1本です。

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☆KOMAGATAKE(駒ヶ岳)
 Double Cask
 Tsunuki Aging
 Hojo Selection 2020
 Distilled:Apr.2013・May.2016
 [Finishing:Gin Cask]
 度数:54%
 樽種:Bourbon Barrel×2 ⇒ Gin Cask
(状態) 開封後数日/残量:90%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
ナッツチョコ、キャラメルソース、灰と土のピーティ、針葉樹の木材、駄菓子のラムネフレーバー、乾燥したジュニパー、仄かにシトラスのニュアンス、ポテトサラダのようなファッティで粉っぽい穀物のイメージ。

味:
比較的尖った口当たり。ビターかつスパイシーさを伴うウッディ、シトラスのピール、レモンフレーバー、和山椒のホットなスパイシーさ、仄かに穀物系のスイート。ボタニカルなビター感と清涼感。次第に脂肪のファッティ、松ヤニが現れる。フィニッシュはライトかつドライ。

感想:
香り、味ともにジンらしいフレーバーが混ざる。また同時に若いバーボンカスク原酒らしいファッティさと乾いたウッディのニュアンスも前面に出ている印象。味わいは結構ドライでさっぱりした仕上がりで、香りほど複雑ではない。刺激的な面では如何にも若々しいが、ニューポッティな部分はジンカスク由来のフレーバーがカバーしているようだ。トニックウォーターで割ると、また違った印象に変貌し面白い。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い
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マルス津貫蒸溜所に併設された「寶常」。

本坊家旧邸を改装したビジターセンターで、内装は古き良き日本家屋の中に、アンティーク調の家具・調度品と装飾が施された和洋折衷、モダンで美しい空間に仕上がっています。

ここには試飲用のバーカウンター、ショップが設置されているほか、食事用のテーブルや中庭を望むテラス席も完備。バーカウンターではマルスウイスキーの各製品が試飲できることに加え、コーヒーやソフトドリンク、軽食も可能です。

この寶常のショップ限定で販売されているのが「駒ヶ岳 津貫エイジング寶常セレクションシリーズ」。マルス信州で蒸溜された原酒を津貫で熟成させたものをボトリングしたもので、一般販売の「駒ヶ岳 津貫エイジングシリーズ」とは違いシングルカスクまたはダブルカスクでのボトリングです。

また、寶常セレクションは基本的にイヤーボトリング品で、毎年毎年ボトルのカラーリングと使用する樽種、またはフィニッシュを変えてリリースされており、今回はマルス津貫で製造されているジン、「和美人」のカスクエイジド品に使用された樽をフィニッシュに使用したものとなっています。

ちなみにイヤーボトリングと言いつつ、今回の寶常セレクションは2020年内2種類目というイレギュラーリリース。どうやら前ボトル寶常セレクション2020バーボンカスクの売れ行きが良く、年内に在庫を売り切ってしまったため急遽追加されたボトルのようです。

さてそんなボトルの中身としては、ラベル通りといいますか、バーボンバレルの駒ヶ岳とジンの双方のニュアンスをわかりやすく併せ持っているという印象。ただし、それぞれが結構ピーキーに現れているため、必ずしもバランスよく飲みやすいという味わいではありません。

バーボンバレルの部分としてはウッディやスパイシー、ファッティ。ジンの部分はボタニカル、シトラス、ラムネフレーバー等がそれぞれ顕著。複雑味というよりは、全部の要素を放り込んだような、ちょっと取り留めのない雰囲気を強く感じました。

また、注ぎたてよりも時間が経ったほうが、ストレートよりも何か割材を加えたほうが、棘のある風味が抑えられるような印象でした。私はマスターお薦めのトニックウォーター(常温)割で最後は楽しみましたが、ファッティさとシトラスが程よく立って、口当たりも多少穏やかに収まり飲みやすかったです。

まあ良くも悪くも蒸溜所ショップの限定品。機会に恵まれたなら、一度お試しください。

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☆MARS MALT Le Papillon
 クモマツマキチョウ
 Singlu Cask Single Malt
 Distilled:Nov.2015
 Botteled:Jun.2020
 ボトリング本数 643

 度数:58%
 樽種:Sherry Butt
(状態) 開封時期不明/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
過熟のブドウ、スイートなデザートワイン、濃厚なドライフルーツ、フルーツソース、やや刺激的なウッディとアルコール感、洋梨のフレーバー、ピーチやプラムのニュアンス、全体的にクリアなスイート感。

味:
口に含んだ瞬間に強めな刺激。真新しい木材のウッディ、ビターを伴うタンニン、焙煎したモルト、挽きたてのコーヒー。中盤以降はスイートなレーズン、バタークリーム、マロングラッセ、ラズベリー、洋梨のジャム。フィニッシュは短く、淡泊な印象。ドライに切れ上がりながら、ドライフルーツと黒蜜のスイートが残る。

感想:
香り・口当たりともに若い原酒故の刺激と、樽由来のウッディがかなり強い。しかしながら全体的にスイートで癖が少なく、時間を掛ければ案外楽しめる印象でもある。特にドライフルーツの風味はかなり濃厚でスイート。また、それ以外にも洋梨を思わせるエステリーや、乳製品のようなファッティさも感じられ、決して単調なシェリーカスク味にはなっていない。加水すると刺激は多少緩和されるが、一方でタンニンやビターが強調され、隠れていた硫黄の香りが現れてしまう。ストレートで時間を掛けて楽しむのが無難。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:値段相応~やや悪い

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マルスウイスキーが不定期にリリースしているル・パピヨンシリーズ。

ル・パピヨンはマルス信州蒸溜所で蒸溜されたウイスキーをシングルカスクでリリースしている一連のシリーズ。2016年から始まったこのシリーズも本ボトルで9本目。遂に大台が見えてきました。

そんなル・パピヨン第9弾はシェリーバットを信州で熟成した5年物。信州熟成のシェリーカスクというスペックは、本シリーズ初登場だったりします。ついでに、復活後の原酒を使ったリリースとしても、シェリーカスク単体でのリリースは結構レアケース。

尚、原酒のタイプは2014年から仕込みを開始したノンピートタイプとなっています。

個人的意見として、マルス信州の原酒は概ね6~7年物ぐらいからポテンシャルを発揮してくる印象。それ未満のものでは若さが先立ち過ぎてしまい、または樽感が目立ってしまうような気がします。そして本ボトルはその6~7年を下回るもの。

試飲前は少々の心配がありましたが、実際飲んでみるとこれが案外GOOD。

香りも味もそれほど嫌味が無く、たしかに原酒の若い感じと樽感の強さは伴うものの全体的にスイートでフルーティ。しかもシェリー樽に特徴的なニュアンス以外にも、マルス信州らしい木の実系エステリーとファッティが活きている印象で、悪くありません。

ただ、やはりというか当然というか、味わい全体は濃いめで強めなので、ずっと飲んでいられる程やさしくなく、また加水で少々ネガティブなニュアンスが浮き出てしまうため、厳しめですが評価「3」と表記しました。

しかしながら、なかなかリリースの機会の無かった信州のシェリーカスクであることに加え、これまた近年から仕込み始めたため出番の少なかったノンピート原酒、そして現行(復活後)のマルス信州では比較的長い酒齢となる5年熟成ということで、試す価値は大いにあるボトルかと思います。

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☆MARS WHISKY 浅葱斑
 Blended Japanese Whisky
 AGED 8 YEARS
 2020 Limited Release
 度数:48%
(状態) 開封後数日/蒸留所にて

(テイスティング)
香り:
オーク材のウッディ、熟成庫の樽香、ふんわりとしたバターケーキ、桃のジャム、プラム、グレーン由来のスイート、ゆで小豆、バニラ、仄かにシトラスのピール、漢方を思わせるボタニカルなニュアンス。

味:
軽快な口当たり。柑橘のピールを思わせるビター、乾いた針葉樹の木材、プラム、土蔵の中のような土っぽさ、バタークッキー、バニラフレーバー。終盤からグレーン原酒らしい穀物のスイート。フィニッシュにかけて乾いたウッディと穀物のスイート、クローブのようなオリエンタルスパイスが交じり合い、ゆっくりと消える。後味にはボタニカルなビターテイストが残る印象。

感想:
程よい熟成感とマルス信州のモルトらしさが現れ、予想以上に良く纏まっている。特に香りはウッディさとスイート、ふくよかさのバランスが良く、なかなかの出来。味わいもややライトで単調気味ながらバランスを崩さず、口当たり軽く飲みやすい。何よりグレーンが出過ぎず、モルトの下支えとしてしっかり機能しているのが良い。加水ではファッティさとビターなウッディが強調されるが、悪印象はない。

評価:3~4(日飲みできる~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:良い~値段相応

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この度創業35周年を迎え、製造棟およびビジターセンターの全面リニューアルを果たしたマルス信州蒸溜所。

その記念として数量限定でリリースされたのが本ボトルです。

ラベルに描かれているのはボトル名称の由来でもある「浅葱斑(アサギマダラ)」。アジア圏の大陸および日本に分布し、長距離を飛行移動する蝶として有名です。

実はマルス信州蒸溜所のある上伊那郡宮田村にも浅葱斑は飛来し、観光の目玉ともなっています。

そんな地元に馴染みのある蝶をラベルとした本ボトルは、マルスでは数少ないオールジャパニーズを標榜したブレンデッドウイスキー。それも年数表記としては操業再開後の最長熟成年数に匹敵する8年表記となっています。

使用されているモルト原酒は逆算すれば判る通り、旧岩井式ポットスチルで蒸溜した2011~2012年頃のもの。当然、再開後に製造した原酒としては最長熟成のものです。グレーン原酒は当然他社のものではありますが、かつて、操業再開と前後して国内から買い付けたものを自社で8~9年貯蔵・熟成したものとされています。つまり、蒸溜所の再開から今日までの時間をまさに一緒に過ごしてきた原酒たちが使われている訳であって、そういった意味でもアニバーサリーにふさわしく、なかなか贅沢な逸品と言えます。

さらにモルト原酒も従来品に比べて多い割合で使用され、度数もやや高めに設定されています。アニバーサリーを祝したリリースとしては十分すぎるスペックかもしれません。しかもマルスのブレンデッド限定品として飛び過ぎない価格設定。結果、相対的にとはいえ、なかなか満足度・コスパ高めなボトルとなっています。


さて、実際に味わった感想ですが、香り・味ともにモルト原酒由来のニュアンスが主体な印象。グレーン原酒の要素は、その使用割合と熟成年数のおかげか下支えに徹しており、主張せずともしっかりと仕事をしているなぁという感じでした。

うん。良いねこれ。


8年熟成と、他と比べればまだまだ若い部類に入る原酒を使用していながら、若いネガティブな部分はおおよそ気にならず、しかししっかりとモルトが活きています。特にバターケーキやクッキーのような心地よい穀物感とファッティの合わせ技はかなり好印象。ピート感も上手くこなれ、土っぽさが良いスパイスとして効いています。

多少のビター感とやや主張のあるウッディが一瞬気になりましたが、グレーンの甘さと風味が上手くフォローしてくれているようで、嫌味に感じることはありませんでした。勿論、グレーンの甘さが際立つ感じでもなし。ホントいい具合です。

失礼を承知のうえで言うと、正直なところマルスのブレンデッドに対して一定以上の期待はこれまで抱いていませんでした。そして実際に飲んでみた感想としても一線を画すほどの出来を感じたことはなく、良くも悪くもない中頃の出来、といったイメージだったわけです。

今回もリリース情報からスペックは知っていたものの、まあ一回飲めればいいか程度に考えていた訳なのですが、いやはやびっくり。思いの外な良さに驚いた次第です。

無論、原酒の豊富な大手国内メーカーや歴史の長い海外ブランドに及ばない部分は当然ながらあるのですが、こういう出来の商品を出せるということは、今後のリリースに大いに期待が持てる訳で、いちファンとしては大変嬉しい1本でした。


尚、詳細なスペックや考察、マルスウイスキー史に関してはこちらの動画が詳しいので、興味のある方は一見の価値ありです。

Youtube:SILKHATチャンネル
MARS WHISKY 浅葱斑・テイスティング動画(前編)
MARS WHISKY 浅葱斑・テイスティング動画(後編)

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☆駒ヶ岳 KOMAGATAKE Limited Edition 2020
 度数:50%
 樽種:シェリー樽、アメリカンホワイトオーク樽が中心
(状態) 開封後1週間以内/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
若木のような青さを伴うウッディ、ドライフルーツのスイート、和山椒のニュアンス、リンゴのコンポート、ビターを伴うレモンピール、柑橘の爽やかな風味、青梅や未熟なプラム。スワリングすると次第に粉っぽい穀物感やナッティが現れる。仄かにスモークが漂う。

味:
ビターを伴うウッディ、控えめにシロップのスイート。中盤から徐々にタンニン、梅の種、バニラ、柔らかいエステリーなどが開く。控えめながらドライフルーツもある。フィニッシュはタンニンとビターなウッディ、リンゴを思わせる柔らかいエステリーが重層的に伸びる印象。アフターテイストで仄かに土っぽさとバルサミコ。全体的にビターでドライ寄り。

感想:
全体を通してビターな風味・味わいが支配的ではあるが、悪目立ちする要素も無く、落ち着いていて飲みやすい。シェリー樽由来の風味よりもアメリカンホワイトオーク樽のニュアンスが強い印象で、マルス信州のモルトに特徴的な風味(プラム、リンゴのエステリー、ウッディ等)もしっかりと出ており、悪くない。加水するとウッディがより薫り高く広がる。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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毎年恒例のマルス信州発の駒ヶ岳リミテッドエディション。

今年はシェリー樽とアメリカンホワイトオーク樽の原酒をメインにバッティングしているとのことですが、実際に味わってみるとシェリー樽の要素は相当控えめに感じられました。どちらかといえばアメリカンホワイトオーク(新樽)の風味が支配的。

全体的に見ると、味わいの方向性として比較的ビターに寄っており、この辺りもおそらく新樽の要素が強く出ている証拠なんじゃないかなぁ…と思っている次第です。

しかしビター主体と言っても決して悪い印象は無く、どちらかというと落ち着きのある感じで、加えてマルス信州のモルト原酒らしい要素もしっかりと持ち合わせた、駒ヶ岳のスタンダード品らしい仕上がりでした。

しかしやはり惜しむらくは価格面。まだまだ安定供給の難しい状況であることは承知のうえなのですが、もうちょっと落としていただけると有難いなぁ…なんて思ったり思わなかったり(汗

さて、本ボトルを以て駒ヶ岳リミテッドエディションは3年目となります。毎年毎年バッティングの内容、特に軸となる原酒の樽種を変えながら続いているこのシリーズは、いつの日かリリースされるであろう定番品シングルモルト駒ヶ岳のプロトタイプともいえます。

そしてあくまで主観ではありますが、リリースの度に味わいの良さがアップしているように感じています。それは使用できる原酒の酒齢が上がってきていることは勿論のこと、製造スタッフの方々のブレンド技術が向上している証拠でもあります。ということは今後どんどん製品の品質が上がっていくという期待が出来るわけでもあって、とにかく成長株であり続けてくれることは、いち飲み手にとって本当に有難いことな訳です。これからも変わらず頑張っていただきたいですね。

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☆Single Cask 駒ヶ岳 
 MINAMISHINSHU BEER
 IPA CASK FINISH
 Distilled 2016.2-3 Bottled 2019.10
 度数:59%
 樽種:Bourbon Barrel
(フィニッシュ:IPA CASK)

(状態) 残量:80%程度/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
かなり明確にホップのアロマ、ボタニカルな風味を伴うビター、レモンピール、柔らかめなウッディ、甘さを伴うエステリー、僅かにトロピカルフルーツのスイート感もある。経時的にホップの風味はこなれてゆく印象。アルコール感はやや刺激的。

味:
口に含んだ瞬間からIPAらしいホップとボタニカルなビター感が入り混じる。続けてタンニン、松ヤニを思わせるオイリー、モルトの香ばしさ。中盤からはマンゴー等のトロピカルフルーツも感じられる。経時的にオレンジのシトラスフレーバーやバニラも現れる。
フィニッシュはほろ苦いビター感とボタニカルのアロマ、トロピカルのフレーバー、少しクリーミーな穀物感が中くらいに続く。全体を通して多少のニューポット感も感じられるが、ホップの風味とビターが上手に覆い隠している印象。余韻はドライ。

感想:
最初はホップの香りに圧倒されるが、時間を掛けることで様々な香りが開き、驚くほど楽しめる。熟成年数なりの若さも内包していると思われるが、ホップの風味とビターテイストが絶妙にカバーしており、そのためか若いながらもバーボンカスク由来と思わしきトロピカルのニュアンスが出現。ボタニカルな風味と相まって美味しく仕上がっている印象。ただ、アルコール感はキツめ。尚、加水には耐えられず、ビターな部分だけが強調されてしまう。

評価: 3~4(日飲みできる~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや高額だが納得

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今年の初めにマルス信州蒸溜所ショップ限定で発売されたボトル。

先日、越県が可能になったタイミングに訪問したマルス信州蒸溜所で久々に味わってきました。

フィニッシュに使用されているのは、同敷地内にて操業しているクラフトブリュワリー:南信州ビールのIPAを仕込んでいた樽。フィニッシュの期間は、記憶が確かなら数か月単位で行ったとのことなので、メインの熟成樽であるバーボンバレルにて約6年熟成されていたと考えられます。尚、IPAカスクに入っていたIPAは樽詰め時にホップを相当量追加した物だったらしく、その樽でフィニッシュした結果、スタッフの方々も驚くほどのホップ風味のウイスキーになったとのこと。

実際最初に飲んだ時はその鮮烈なまでのホップの香りに圧倒されました。が、しかし、香りが飛ぶのか自分が香りに慣れるのか、経時的にどんどんホップが気にならなくなり、それどころかバーボンバレル由来と思わしきトロピカルフレーバーが現れ、一気に味わい豊かに変貌。ホップからくるボタニカルな風味やビター感と相まって非常に楽しめる一本でした。

尚、使用されているモルトは3.5ppmのライトリーピーテッドタイプ。…ですが実際の味わいや香りにそれが反映されている雰囲気は殆どなく、言われなければわからないレベルだったように思います。また、原酒の若さからくるニューポット感も多少感じられるものの、気になりそうな部分はすべからくホップがカバーしてくれている印象でした。正直、結構良い感じの出来かと思います。

マルス信州蒸溜所と南信州ビールはお互いに別会社でありながら同敷地内で操業。マルス信州を所有している本坊酒造が南信州ビールの出資者のひとつだったり、前蒸溜所所長の竹平さんが現南信州ビール常務だったりと、いろいろと深い繋がりを持つ企業だったりします。
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今回の駒ヶ岳IPAカスクフィニッシュは、まさにその繋がりが生んだ逸品。コラボレーション商品なわけです。そして勿論、南信州ビールからは逆バージョンともいえる「南信州ビールIPA 駒ヶ岳カスク」がリリースされており、こちらも味わい豊かで美味しい仕上がりとなっています。機会があったら是非お試しあれ。

尚、マルス信州蒸溜所では南信州ビールの樽を使用した製品の開発を、今後も随時行っていく予定とのことです。次なるリリースが待ち遠しいですね。

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☆MARS MALTAGE “COSMO” 越百
 WINE CASK FINISH BOTTLED IN 2020
 度数:43%

(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
イチゴジャム、ラズベリーのフレーバー、煮詰めた赤ワイン、僅かにピーティ、全体的にスイートでスムースな印象。使い込んだ皮製品のような風味もある。

味:
酸味を伴うタンニン、ベリージャムの甘さ、終盤にかけてゆで小豆ような風味も。若干の硫黄っぽさ。仄かにピーティ。口当たりは比較的スムースで、全体的にライトな印象。フィニッシュはタンニンとベリーの風味で、ドライ気味。

感想:
全体的にワインカスクのフレーバーがカバーしており、元の越百らしい部分(特に酸味のある穀物感)は隠れてしまっている印象。良くも悪くもマルスのワインカスク味。加水することでモルティと柔らかいピーティが顔を出す。中庸なイメージだが、ベリーとピーティのバランスの良さが好印象。ハイボールではベリーが失われ、硫黄とエグみが強く出てしまう。もう一声安ければ…。

評価:3~
4 (可も不可もなし/美味しく感じる)

コスパ:やや悪い

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つい先日リリースされたマルスのブレンデッドモルト、越百のカスクフィニッシュシリーズの1本。昨年のマンサニージャカスクに続き、今年は自社のワインカスクがフィニッシュに使用されています。

マルスウイスキー(本坊酒造)といえば、駒ヶ岳や岩井トラディションなどのバリエーションとして、ワインカスクフィニッシュの製品を数多くリリースしていることで有名。

使用されているワインカスクは、本坊酒造が山梨に持つワイナリーから取り寄せたもの。ワイナリーから蒸溜所のある南信州までは車でおよそ2時間程度と近く、ワインの樽出しからウイスキーのフィリングまでに余計な時間が掛かりません。つまりワイン樽の劣化を最小限に抑え、比較的フレッシュな状態で使用できるわけです。

この比較的フレッシュなワインカスクを使用しているためかどうか定かではありませんが、マルス信州のリリースする各ワインカスクフィニッシュ品はフレッシュでスイートなベリーの香味がより強く、味わいもラズベリージャムのような甘酸っぱい印象にマスクされていることが個人的に多い印象です。

本ボトルも漏れなくそっち系の香りがしっかりと上乗せされたイメージの出来。加えて越百が本来持ち合わせているソフトなピート香がスパイス的に効いて、意外と悪くないバランスでした。

ただし、多めの加水でエグみや硫黄臭といったネガティブな要素が表出してしまい、残念ながらハイボールではその良さを発揮しきれない印象。ストレートか、いっそカクテルベースにするのが良さそうです。

昨年のマンサニージャがハイボールと好相性だったが故に、ちょっと残念な結果でした。が、ストレートや少量の加水ならば十分に楽しめる出来かと思います。ただし、お値段と入手のハードルはちょっと高め。

尚、この越百のカスクフィニッシュシリーズは現在のところ、年替わりで1種類ずつリリースされる予定とのこと。ロット数の問題なのか、それとも試験的なリリースという位置づけなのか、そのポジションは判然としないものの、意外と粒ぞろいなボトルが続いている本シリーズ。さて次回はどんなボトルが登場するのでしょうか、楽しみではあります。

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☆津貫ニューメイク 931DAYS
 Yakushima Aging Peat:3.5ppm
 Distilled:2017.02 Bottled:2019.10
 度数:60%
 樽種:Burbon Barrel
(状態) 開封後5ヶ月/残量:70%程度/自宅

(テイスティング)
香り:
やや酸味の際立つニューポッティな香り、やや強めのアルコール感、ミカンジュース、カボスや柚子を思わせる青々とした柑橘、ややしっかりとした木材、クリーミーな穀物のニュアンス、僅かにスパイシー。

味:
かなり棘のあるアタックとドライなモルトの風味、柑橘のピールを思わせるビターな果実味、しっかりと主張のあるウッディ、僅かにファッティな部分もある。フィニッシュは短く、強めのウッディと独特な酸味、穀物の香りが残る。

感想:
口当たりは相当に若々しく、刺激的。一方で青々とした柑橘のニュアンスが非常に顕著に現れており、決して飲みやすくはないものの面白さはある。加水しても荒々しさは残るが、よりカボスや柚子のような青い柑橘系の風味が強調される。

評価:なし(ニューメイクのため)

コスパ:なし(イベント用のため)

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2017年以降、毎年11月に開催されている本坊酒造株式会社主催のマルス津貫蒸溜所祭り。

津貫蒸溜所の周年祝いとして催されるこのイベントは、同時にファン感謝祭といった趣向も併せ持ち、毎年多くの参加者で賑わいます。

そんな津貫蒸溜所祭り限定で販売されるのが、500mlのボトルに詰められた津貫ニューメイクシリーズです。このボトルは、未だシングルモルトの発売されていない津貫の原酒の味わいを、いち早くマルスウイスキーファンに味わって欲しいという本坊酒造の方々の好意であると同時に、津貫原酒の方向性を一般のウイスキーファンが体感できる数少ない機会のひとつでもあります。

2018年までは津貫製造のニューポットを津貫蒸溜所の熟成庫で熟成した純津貫製のニューメイク(未だ3年の熟成期間を経ていないもの)をボトリングしていましたが、2019年は過去2回とは趣向を変え、津貫製造のニューポットを信州および屋久島の熟成庫にて熟成した、所謂「信州エージング」と「屋久島エージング」のリリースとなりました。

本ボトルはその1本、「屋久島エージング」です。

屋久島エージングはフェノール値:3.5ppmのライトリーピーテッド麦芽で仕込まれた原酒。熟成期間は3年に僅かに届かぬ931日です。

やはり熟成途中のニューメイクということだけあって、ニューポットのニュアンスが全面に現れたテイストで、アルコール度数もバレルエントリーから殆ど変わらない(マルスは基本的に60%で樽詰め)60%である為に非常に刺激の強い口当たりです。

その一方でウイスキーとしての味わいも、しっかりと付き始めている印象。とりわけ駒ヶ岳(信州蒸溜所原酒)の屋久島エージングのものに共通して現れている「青っぽい柑橘」の要素が同様に現れていました。

また、温暖な気候が影響してか樽のウッディさが非常に強く出ており、スパイシーさと相まって結構刺激的。津貫原酒の目指す「深みとエネルギッシュさ」といったニュアンスはこのウッディさとニューポットのアルコール感に紛れ、判然としない印象でした。

ともあれ、そのあたりは熟成を重ねていくことで改善が期待できる部分。今後、熟成年数に従って順にこなれてくるのではないかと思います。これからのリリースに期待ですね。

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☆Single Malt 駒ヶ岳 Yakushima Aging 
 Bottled in 2020

 度数:53%
(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅

(テイスティング)
香り:
すだちの皮、スポンジケーキのような甘さを伴う香ばしさ、清涼感を伴うハーブオイル、ウッディ、オレンジピール、仄かにスモーキー。

味:
序盤はバニラ・バナナ等を思わせるしっかりとした甘みと、ドライなウッディ。中盤からは青みと酸味を伴う柑橘が加わる。終盤にかけて穀物様の香ばしさ、オイリー、灰汁っぽさとスモーキーさを感じる。アルコールの刺激は結構強め。フィニッシュはビターでドライ。さっぱりとした印象。

感想:
全体的にシンプル。特にフィニッシュはかなりあっさりしている。また、若く荒っぽい部分も相当に感じられたが、その中にも屋久島エイジングらしい青っぽい柑橘、バーボンカスク由来らしいバニラやオレンジのフレーバーをしっかり感じることができる。加水にもそれなりに耐える印象。

評価: 
2(飲めないことはないレベル)~ 3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い

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マルスウイスキー(本坊酒造)より年に1回のペースでリリースされている、シングルモルト駒ヶ岳・屋久島エージングシリーズ。このボトルは先日発売となったシリーズ第3弾です。

屋久島エージングは、マルス信州蒸溜所で造られた原酒を、遠く屋久島の専用熟成庫(エージングセラー)まで運んで熟成させた原酒で構成されているシリーズで、第1弾がバーボンカスク、第2弾がシェリーカスクをそれぞれ主体としたバッティングでした。

今回は再びバーボンカスク原酒、それもノンピートのものが主体だそう。しかしながら、スパイス的にピートタイプ原酒もある程度加えられているようで、全体を纏める良いアクセントとして感じられました。

一方で、やはり酒齢が若いことから荒々しさはかなり残っている印象。まだまだ道半ばといった印象です。

屋久島エージングセラーは2016年に建設された熟成専用の施設。信州や津貫で製造された原酒を移送・熟成しています。気温湿度共に高い環境故、ウイスキーの熟成は早く進むと考えられますが、今回のテイスティングの具合からすると、ここで眠る原酒がその真価を発揮するのは、まだもう少し先のことと思われます。

尚、先述の通り屋久島では信州原酒の他に津貫の原酒も熟成中。こちらのボトリングも待たれるところです。

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