ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

カテゴリ: 蒸留所

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日本一小さな蒸溜所である長濱蒸溜所。ここではそのサイズ感ならではとも言えるイベントを開催している。それが「長濱蒸溜所 蒸溜体験ツアー」である。
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これは所謂ウイスキーファン向けのウイスキー製造体験会であり、1泊2日の日程でウイスキーの製造プロセスを実地体験できるプログラムとなっている。

ここまで聞くと、ニッカが余市・宮城峡各蒸溜所で開催している「マイウイスキーづくり」と差して変わらないように思えるが、実際は、こちらの「蒸溜体験ツアー」のほうがディープでマニアックだ。

どの辺がディープかというと、具体的には本当に製造作業を自分の手で行うというところだ。
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「え、ニッカも実際の作業を体験できるじゃん!」という意見が飛んできそうなところである。確かにニッカの開催するマイウイスキーづくりも製造作業の体験はある。しかしそれはあくまで製造工程の一部を切り取って、イベント用に行う「体験」であって、実際の業務と細部が異なっている。

一方、長濱の蒸溜体験は本当にウイスキー製造を体験できる。マッシュタンからドラフを掻き出して袋に詰め、スチル・冷却器を掃除してモロミを張り…と、もう殆ど労働と同じ状況だ。

2日にわたって汗をかきつつ、筋肉痛になりつつ作業を体験する。人によってはバイト代を請求したいと思うかもしれない。
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しかし、本当に製造現場の空気を知るためにはこれ以上の体験プログラムは無いだろう。なにせモルトの粉砕、ウォッシュバックへの酵母の投入、スチルへの火入れ、ローワインのアルコール度数測定、ニューポットのバレルエントリーに至るまで、本当に殆ど全ての工程を体験できるのだから。
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これは流石にニッカでも真似できない。この日本一小さな規模だからこそ、できることなのだ。

惜しむらくは、実際のウェアハウスを見ることができないという所だろうか。しかし、それすら霞むぐらいに、この蒸溜体験は楽しい。
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参加人数も最大6人に抑えられているため、暇を持て余すこともほぼない。また、質問も聞き放題だ。

また、ここはレストラン併設であるため、1日目の昼・夜、2日目の昼と、食事が提供される。特に1日目の夕食は懇親会を兼ねた宴会となっており、参加者同士またはスタッフの方々とビールやウイスキーを片手に談笑しながら豪華なメニューを楽しめる。
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スタッフの方々からは、ちょっとした裏話や立ち上げ当初の苦労話、こぼれ話も聞けたり…。

他にもお楽しみポイントはいっぱいあるのだが…、この先は実際に参加し、ご自身で体験していただきたいと思う。

応募は公式サイト「https://www.romanbeer.com/nagahama-distillery/tour/」より可能。参加費は宿泊費および2食+宴会、ニューポット(ハンドフィル!)やグラス等のプレゼントを含めて44000円(税込)となっている。
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値段としては決してリーズナブルではないが、得られるものは相当に大きい。そして楽しい。

ウイスキーファンを自称するならば、是非1度はご参加いただきたいと思う。

前回:「蒸溜所への行き方」

前回、サントリー山崎蒸溜所へのアクセスとツアー予約について解説したが、今回は各見学ツアーの具体的な内容や違いについて紹介したいと思う。
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有料の見学ツアーが2種類あることは前回述べた通り。見学費用が1000円で、予約できる時間枠の多いノーマルの見学ツアーと、2000円の「シングルモルト山崎誕生の物語」という上級の見学ツアーがある。
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2つのツアーの大きな違いは試飲メニューにあり、1000円のツアーではシングルモルト山崎ノンエイジとその構成原酒2種(ホワイトオーク樽原酒、ワイン樽原酒)を、2000円のほうではシングルモルト山崎12年と構成原酒3種(ホワイトオーク樽原酒、シェリー樽原酒、ミズナラ樽原酒)をそれぞれ楽しむことができる。
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また、1000円のツアーが試飲以外はずっと立ったままで進行するのに対し、2000円のツアーでは最初にツアー用のホールに案内され、着席しながら蒸溜所紹介の動画を見てから工場見学、さらに戻って今度は山崎12年の紹介動画を見て、それから試飲という流れになっている。
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工場見学の部分に関しては全く同じ順路、基本的に同じ内容となっているが、1000円のツアーが時間的に少々タイトな設定なのに対し、2000円のツアーでは多少余裕のある進行になっており、個人での質問やエリア毎の写真撮影がしやすくなっている。
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この時間的な余裕の差は非常に大きく、1000円のツアーでは説明を細かく聞いていると写真を撮る暇が無く、逆に写真をしっかり撮ろうとすれば説明を聞きそびれてしまいがちだ。その点、2000円のツアーではゆったりと見学を楽しむことができ、値段相応に満足度が上がっている印象だ。

尚、どちらのツアーも原酒は1杯ずつ、製品は2杯ずつ(2杯目は多めの量で)用意され、さらにグラスと氷、炭酸水も配られ、製品2杯目を好みの方法で楽しめるようになっている。ツアー推奨の飲み方はハイボールだが(美味しいハイボールの作り方をレクチャーされる)、ロックでも水割りでもストレートでもどれで楽しんでも良いだろう。また、おつまみとしてナッツやチョコレート等も用意されている。
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1000円もしくは2000円でここまで至れり尽くせりなツアーも珍しいだろう。ただ、1000円のツアーではやはり時間の制限がタイトであり、ゆっくりじっくり楽しむのは少々難しい。一方2000円のツアーでは試飲時間もかなり余裕をもって取られていて、テイスティングアイテムが1種類増えているにも関わらず最後までゆっくり味うことが可能だ。

全体的にみてやはり2000円のツアーのほうが満足度は高めになっている。が、1000円のツアーも決してレベルが低いわけではない。ウイスキー蒸溜所の見学ツアーとしてはどちらも非常に優秀で完成度が高く、十分楽しむことができる。
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たまたま2000円のツアーが予約できれば良し、ダメでも1000円のツアーで基本的な部分は十分に見て回ることができるし、一部の原酒や製品は試飲カウンターでも楽しむことができる。

さてツアーの内容についてはここまで。具体的な内容は是非ご自身で参加し、体験していただきたい。

日本の最南端、鹿児島県。その鹿児島県の南さつま市、津貫に現在日本で最も南西部となるウイスキー蒸溜所が存在する。それがここに紹介するマルス津貫蒸溜所だ。
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マルス津貫蒸溜所はマルス信州蒸溜所に続き、本坊酒造株式会社が開設したマルスウイスキー第2の蒸溜所である。実際のところ、過去には鹿児島工場、山梨ワイナリーでもウイスキーの製造が行われていた歴史があり、厳密にいえば本坊酒造史上4つ目のウイスキー製造工場ということになるだろう。
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津貫蒸溜所のある場所は元々焼酎製造を行っていた本坊酒造津貫工場があり、本坊酒造生誕の地でもある。蒸溜所敷地内に高々とそびえる建屋内には、当時焼酎やスピリッツの製造に使用されたスーパーアロスパス式の連続蒸留器が歴史の名残として展示されている。また、連続式蒸溜器は使用されていないものの、津貫蒸溜所の隣には本格焼酎の製造所、貴匠蔵が併設され、現在も焼酎の製造が続けられている。
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津貫は信州蒸溜所と比べて温暖かつ湿潤。ウイスキーの熟成も早く進むとされ、蒸散によって失われてしまう量は年間で6%(信州で約3%程度)になるという。
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また、本坊酒造は津貫蒸溜所と同時に屋久島にウイスキー用のエージングセラー(熟成庫)を開設。信州蒸溜所と合わせ、3カ所に熟成庫を持つことになった。現在、津貫と信州の2蒸溜所で製造したウイスキーを3カ所それぞれ相互に移動、保管し、それぞれ原酒に対してそれぞれの熟成庫の自然環境の影響を加え、性質の異なるウイスキーの完成が目指されている。

信州で蒸溜、津貫および屋久島で熟成した原酒はそれぞれ「駒ヶ岳 津貫エイジング」「同 屋久島エイジング」として既にリリースされている。これらはまだ短熟の製品ではあるが、それぞれ熟成環境の違いが少しずつ現れており非常に興味深い仕上がりになっている。今後5年、10年と経過することでどのような味わいに変わるのか、長熟ボトルのリリースが楽しみだ。

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尚、津貫原酒の信州、および屋久島のエイジングシリーズはまだ一般販売されていない。今年の蒸溜所イベントで初めて限定販売され、蒸溜所へ行けばまだ試飲も可能だ。信州、屋久島ともに試飲をしたが、とても面白い出来栄えになっていた。気になる方は一度蒸溜所にて試飲することをオススメしておく(残念ながらボトル販売分は完売)。

2日目は製樽作業の見学からスタート。

昨日キルン塔でたっぷり燻され焚火の香りとなったツナギに着替え、前日同様雨の中の移動となった。
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製樽工場では実際に蒲の葉を樽の隙間に通して詰める作業の体験の他、樽の修理、チャー等実際の作業を間近に見学。スタッフの方からは日々の製樽作業のポイントや苦労など様々なお話を伺うことができた。

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お次はいよいよ原酒の樽詰め作業へ。
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この会のために用意された樽に専用のタンクからニューポットを注いでゆく。
少量だがニューポットの試飲も経験。直火焚き蒸留らしい、重厚な味わいだった。

ここで天候が好転。一時は樽の運び込み体験が省略される可能性が出ていたが、無事、行える運びとなった。
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馴れない樽運搬に四苦八苦しつつ、無事運び込み完了。これにてマイウイスキーづくりの全プログラムが終了となった。
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最後に昼食を頂きながらの修了式。余市マイウイスキーづくり修了証が1人づつ授与された。これを持ていると余市蒸留所再訪時、自分達のマイウイスキー樽を見学することが可能とのこと。なかなか嬉しい特典である。

10年後には自分達の樽からシングルカスクウイスキーがボトリングされ、さらにこの回のメンバーで再び集まり10年目の懇親パーティが開かれるとのこと。後にもまだまだ楽しみが残された訳だ。10年目の再会を皆々と約束しつつ、解散。帰途に就いた。

(終わり)

以上、ざっくりではあるがマイウイスキーづくりの内容であった。

記事の通り、ウイスキーファン歓喜の内容が目白押しであり、次から次へといろいろな体験が用意されている。各工程の体験では実際にその部門の現場のスタッフの方から説明、方法のレクチャーが行われ、写真撮影の時間もたっぷり確保される等かなり配慮の行き届いた充実のプログラムであった。

また、各自の質問にも随時お答えくださり、普段聞けない現場の話もじっくり聞くことができた。

今後まだまだウイスキーブーム冷めやらぬ中で応募も増え、なかなか参加の機会に恵まれ難い状況が続くだろう。しかし、諦めず応募いただき、是非参加していただきたいと思う。それだけの価値がこの会にはある。

2018年5月中旬の話ではあるが、幸運にも余市のマイウイスキーづくりに参加することができた。

既に1年以上前の話で恐縮であるが、本記事は参加時の様子を体験記として簡単にまとめてみたものである。
お暇な方は是非どうぞ。
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さて前回の記事で紹介した通り、マイウイスキーづくりは2日間にわたって開催される。といっても丸々2日間使う訳ではなく、1日目の昼過ぎから始まり2日目の昼で終了。遠隔地からの参加者にも十分配慮されたスケジュールとなっている。
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尚、この時はウイスキーブーム加熱の真っ只中だったことに加え時期が良かった(5月半ば)ということもあって応募が殺到。通常20~30倍程度(それでも十分多いが…)のところ約40倍もの倍率だったそうだ。参加枠が約20人であることを考えると今回だけで800人あまりの応募があったことになる。その凄まじき倍率を勝ち抜けたのだから本当に価値ある参加だったと思う。
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蒸溜所までは空港から小樽までJR特急で直通、小樽でローカル線またはバスに乗り換えて余市へと向かう。この乗り換え時間が曲者で、なかなか上手く乗り継ぎできない。小樽から先の函館本線が単線で本数が限られることが原因だが、そのために時に30分近く乗り継ぎ待ちになることもある。

そこでバスである。ちょうど昼時間帯には電車と前後して小樽駅前から出発のバスが運行しており、運賃も所要時間も電車とほぼ同等になため、都合の良いほうを選ぶことができる。自分はこの時ちょうど待ち時間なしで乗れるバスがあったため、これを利用した。
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さて余市に到着して早々に天候が悪化。集合時間前には本降りの雨となってしまった。5月中旬の北海道はまだ肌寒く、加えて雨降りで一気に気温が低下。春先とは思えない寒さの中での体験となった。

この日集まったのは総勢18名ほど。地元北海道はもとより東京、静岡、大阪、九州は福岡と全国各地から参加者が集まった。そしてなんとハワイからの参加者もおられ、ジャパニーズウイスキーの知名度の高さを思い知らされた。

1日目のスタートはまず座学。スライドを利用し、ウイスキーの製法やニッカおよび余市蒸溜所の成り立ちの説明がされた。その後外に出てキルン棟を見学、続いて糖化槽、発酵槽の順に見学を案内された。発酵槽の棟では麦汁とモロミを試飲。モロミは他の蒸溜所と比べて酸味の効いた味わいだった。
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お次はポットスチルへの石炭投入体験、糖化槽へ戻って清掃体験と肉体労働が続いて製造エリアの体験は終了。その後は構成原酒を使ったマイブレンド体験、旧竹鶴邸内部の見学を終え懇親会となった。
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悪天候だったことも手伝ってか若干ビジーな進行となった1日目だったが、各場所での解説、対応は大変丁寧で行き届いたものであり、満足度高めだった。また、最初は初対面であまり会話の進まなかった参加者同士も終盤になるにつれて打ち解け、懇親会ではお互い大いに盛り上がった。
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尚、懇親会では今年10年目を迎えたマイウイスキーづくりのシングルカスク余市(2008-2018)も登場。10年後に向けて大いに期待を高めつつ、1日目の終了となった。

2日目に続く

余市蒸溜所ではウイスキーファンに向け、年に数回とあるイベントを開催している。
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その名も「余市マイウイスキーづくり」である。

これはニッカウヰスキー主催で行われる一般客向けのサービスイベントで、余市蒸溜所および宮城峡蒸溜所の2カ所で開催されている。開催される回数は余市が年に8回、宮城峡が4回程度で、概ね金曜~土曜または土曜から日曜の2日間の日程で行われている。

「マイウイスキーづくり」は元々ニッカの得意先など、特別なゲストを集めて開催される身内向けの企画だったものを一般顧客向けにも開催したのが始まりだそうで、いまや酒類メーカー屈指のファンサービスイベントとして国内はおろか海外からも参加者が集まるほどの人気。毎年参加募集には応募が殺到するのが恒例であり、抽選によって参加者が決まるが、その倍率はざっと20~30倍、ときに40倍近くにもなるという。
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2日間の主な内容は、
(1日目)
① キルン棟見学およびピート燃焼の見学
② ポットスチルの直火釜への石炭投入
③ 糖化槽の清掃体験
④ 原酒のブレンド体験
⑤ 旧竹鶴邸の見学
⑥ 懇親会

(2日目)
① 製樽工場見学
② ニューポット樽詰め
③ 熟成庫への樽の運搬、搬入
④ 修了式

となっており、かなり盛沢山だ。さらに1日目には合間合間に一般見学では入ることのできないエリアの見学があり、麦汁やモロミの試飲も用意され、2日間通してニッカに限らず全ウイスキーファンにとって夢のような企画となっている。
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勿論、自分たちで詰めた原酒もちゃんと配布される。ただしそれはマイウイスキーづくりからきっかり10年後。息の長い話ではあるが、貴重な余市のシングルカスク、カスクストレングス10年ものを入手できると思えば惜しくない時間だろう。それに自分たちで詰めた樽が10年間掛けて熟成していく様を想像する楽しみもある。
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それに他の参加者とのコミュニケーションも楽しい。皆ウイスキー好きな方々ばかりで、自分が参加した時は北は北海道から南は福岡、加えてハワイから来られた方まで老若男女様々な出身地、そして様々な職業の方が参加されていた。そんな方々とウイスキーという一つの共通言語を元に情報交換から雑談までいろいろな会話を楽しめた。これもまたファンイベントとしての醍醐味だろう。

大変人気の企画であるため、まず抽選に当たらなければならないというハードルはあるが、しかし、ウイスキーファンなれば是非一度ご参加頂きたいイベントである。

今や世界でも屈指の規模の酒類メーカーとなったサントリー。そんなサントリーが山崎蒸溜所に次ぐ第2蒸溜所としてオープンさせたのが、山梨県北杜市に位置する白州蒸溜所だ。
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白州蒸溜所があるのは山梨県北杜市。街や駅から遠く離れた森林の中に位置している。日本国内で山や海、はたまた都市部や工業地帯に立地する蒸溜所はあれど、深い森林の中に位置する蒸溜所は珍しい。
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白州蒸溜所が創業したのは1973年。後、1981年に同敷地内にもう1つ蒸溜所を建造し、最初の蒸溜所を「白州西」、新しい蒸溜所を「白州東」蒸溜所とした。その後、白州東蒸溜所が本格稼働するのと同時に白州西蒸溜所は事実上閉鎖。現在「白州蒸溜所」と呼ばれている施設は「東」蒸溜所のほうである。

尚、「西」の建物は取り壊されずそのまま保存され、現在はコンサートホールやセミナールームとして利用されているようだ。
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敷地内には所謂蒸溜所としてウイスキーの製造が行われる棟、樽の貯蔵庫、クーパレッジ、他ビジター用のショップ、レストラン、博物館など多くの施設・棟が林立している。製造設備の規模は同じくサントリーの山崎蒸溜所に匹敵する大きさで、やはり他社の蒸溜所とは一線を画す印象だ。さらに敷地内には多くの木々が立ち、野鳥の森「バードサンクチュアリ」として観光スポットの一つとしており、自然と融合したナチュラルなイメージが強調されている。

これだけ多くの施設があり、さらに合間合間に森林が広っていることからも解るように、白州蒸溜所は極めて広大な敷地に存在している。実際、見学で訪れるとエントランスからビジターセンター、ビジターセンターから製造棟、製造棟から貯蔵庫までの距離が大きく開いていることに気づく。製造棟から貯蔵庫に至ってはバスで移動するほどの距離があり、全行程徒歩で見学する山崎とは大きな違いである。
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先述の通り蒸溜所敷地内には木々が生い茂り、移動中にちょっとした森林浴が楽しめるし、四季によって変わる景色も非常に良い。都市に近く、非常に工業的なイメージの山崎蒸溜所と好対照な、まさに「森の蒸溜所」だ。

この3年間、ギュギュっと詰め込むように国内の蒸溜所を訪問してきた。回数にして20回以上、場所でいうと9カ所。主に古株で企業傘下の蒸溜所が多く、所謂有名どころばかりと言えばばかりなのだが、どの蒸溜所もその蒸溜所なりの良さ、楽しさ、学べるポイントがあった。
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自分の故郷に程近く、しょっちゅう通っているマルス信州ではウイスキーが生まれる様を手が届くほどの近さで体感し、現居住地のご近所さん山崎では大企業傘下蒸溜所の大きさ・立派さに圧倒され、遠く北の余市では異国情緒に心揺さぶられた。
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さらに長濱の日本一小さな蒸溜所、明石海峡を望む江井ヶ島の古参の酒造では、驚くほど明け透けに(今考えても極めて貴重な)情報を教えていただき、自分の引き出しを大いに増やすことができた。
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そして富士御殿場や宮城峡では同志、ウイスキーラバーの先輩方と交流の機会を得、楽しいひと時を過ごすことができた。

他にもたくさんの良い経験、トラブル、人生の勉強の機会に直面した(それこそ書ききれない程に)。

ウイスキーは日本において未だ嗜好品であり、それを愛する人間はコアな(そしてヲタクな)人種だと思う。だが、既に100年に及ぶ歴史を持ち、それこそ老いも若きも女も男も長きにわたって楽しんできた文化の一つとして、ウイスキーは確固たる地位を得た嗜好品でもある。それを生み出す蒸溜所には長い長い歴史のロマン、携わってきた先人達の足跡が脈々と刻まれている。

蒸溜所はそんな歴史や先人達の想いに触れることができ、訪れた先々で出会いやら発見やら多くの刺激が得られる、良い場だと思う。

ウイスキーファン、ないしラバーをかたる皆様、一度でいいので蒸溜所を訪れてみてください。行ったことがあるという方は今度は別の蒸溜所を訪ねてみてください。きっと良い経験が待っていると思います。


…酔いに任せてダラダラ書いたが、着地がよくわからなくなってきたので、このへんで〆にしたいと思う。

以上。(お酒は程々に…)
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北の大地には偉大なるジャパニーズウイスキーの父が建てた蒸溜所がある。ニッカウヰスキーの第1の拠点北海道工場、又の名を余市蒸溜所である。
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余市蒸溜所はまさしくニッカウヰスキーの創業の地。創業当初の建物をほぼ当時の姿のまま残しており、その多くが国の登録有形文化財に指定されている。
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その美しさは見ての通り。それは所謂現代的なマニュファクチャリングではなく、レトロモダン。一見して日本のウイスキー蒸溜所とは思えないほど美しく、時に異国情緒すら感じさせる風景だ。異国の雰囲気が感じられるのは言うまでもなく、この蒸溜所の設計者がかの竹鶴政孝御大であるからに他ならず、彼がウイスキーの本場スコットランドで見聞き学んだ事が随所に活きているからこそなのである。

故に、そんな風景を横に眺めながら敷地内を散策するだけでも価値があり、ここがニッカ創業の地と知らずとも、その異国情緒と建築物の美しさで十分楽しめる場所なのだ。

…と非ウイスキーファン向けのアピールはさておき、ウイスキーファンにとってもここは聖地。場内の見学では随所に見所が用意されている。
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その一つが言わずと知れた石炭直火炊きのポットスチル。今や(少なくとも有名蒸溜所では)世界でここだけ、ここでしか見ることのできない手法の、これまた実にレトロな光景なのである。

言わずもがな、現代の多くの蒸溜所はスチーム加熱で蒸溜を行うのが主流であり、例え直火炊きであっても殆どがガス(例外として静岡蒸溜所は薪)を燃料にしている。石炭直火はまだガスが燃料として一般に利用される前の、もっと昔にポットスチルの熱源に利用されていたものであり、近代化・工業化が進む中で既に廃れたものである。熱源としては極めて不安定で非効率、人力を必要とする作業を、今日もずっと続けているのだ。

それが例えビジターへのサービス的に残されている慣習だったとて、ファンの心をくすぐり、感銘を与えてくれることに他ならない。今後もきっと続けられるだろうし、続けてほしいと思う。

さて、これ以外にも見所は多々ある。今も外観と機能をそのまま残すキルン棟だったり、日本では珍しい平屋建てのダンネージ式ウェアハウスだったり、製造設備だけでもハイライトだらけなのである。
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そして忘れてはいけない旧竹鶴邸。
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見所盛だくさんだ。

勿論最後には製品試飲や直営のショップでの買い物が待っているし、資料を展示した博物館や有料試飲カウンターも備えられている。広大な敷地は先述のように文化財を見ながら散策するのにもうってつけだ。ウイスキーファンにもそうじゃない人にも、非常にオススメな観光地である。

日本で最古参の蒸溜所といえば言わずと知れたサントリー山崎蒸溜所であるが、実はそれより以前にウイスキー製造免許を取得している蒸溜所が、しかも案外近所に存在していた事実は意外と知られていない。
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江井ヶ嶋酒造。兵庫県明石市、瀬戸内海に面した場所に本社工場を持つ酒類メーカーであり、1888年に設立、1919年にウイスキーの製造免許を取得している。取得後すぐにはウイスキーの製造は行われず、実際に製造が開始されたのは1960年代頃、奈良県のシルバーウイスキーから製造設備を譲り受けてからとされる。
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1984年には新たに「ホワイトオーク蒸溜所」棟が建ち、以降はこちらでウイスキーを製造している。江井ヶ嶋酒造は元より日本酒の製造が主体であり、ウイスキーの製造は日本酒の仕込みが終わった夏頃に数か月程度行われるのみであったが、ウイスキーの需要が高まった現在は春頃から秋の中頃、日本酒の仕込み準備を始めるギリギリの時期までウイスキーの製造を行っている。
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また、一昨年までは使用するモルトのピートレベルは1種類(ライトピート)のみだったそうだが、昨年よりノンピートとヘビーピートを加えた3種類のバリエーションで製造が行われている。

古参ながらこれまで特段注目の的となることが少ない印象だった江井ヶ嶋だが、増産体制に入り、造られる原酒の幅が広がったことで可能性が大きく広がった。最近はイモシェリーカスクの商品を販売する等、実験的なリリースも見られ、ますます目が離せなくなっている。

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