北の大地には偉大なるジャパニーズウイスキーの父が建てた蒸溜所がある。ニッカウヰスキーの第1の拠点北海道工場、又の名を余市蒸溜所である。
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余市蒸溜所はまさしくニッカウヰスキーの創業の地。創業当初の建物をほぼ当時の姿のまま残しており、その多くが国の登録有形文化財に指定されている。
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その美しさは見ての通り。それは所謂現代的なマニュファクチャリングではなく、レトロモダン。一見して日本のウイスキー蒸溜所とは思えないほど美しく、時に異国情緒すら感じさせる風景だ。異国の雰囲気が感じられるのは言うまでもなく、この蒸溜所の設計者がかの竹鶴政孝御大であるからに他ならず、彼がウイスキーの本場スコットランドで見聞き学んだ事が随所に活きているからこそなのである。

故に、そんな風景を横に眺めながら敷地内を散策するだけでも価値があり、ここがニッカ創業の地と知らずとも、その異国情緒と建築物の美しさで十分楽しめる場所なのだ。

…と非ウイスキーファン向けのアピールはさておき、ウイスキーファンにとってもここは聖地。場内の見学では随所に見所が用意されている。
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その一つが言わずと知れた石炭直火炊きのポットスチル。今や(少なくとも有名蒸溜所では)世界でここだけ、ここでしか見ることのできない手法の、これまた実にレトロな光景なのである。

言わずもがな、現代の多くの蒸溜所はスチーム加熱で蒸溜を行うのが主流であり、例え直火炊きであっても殆どがガス(例外として静岡蒸溜所は薪)を燃料にしている。石炭直火はまだガスが燃料として一般に利用される前の、もっと昔にポットスチルの熱源に利用されていたものであり、近代化・工業化が進む中で既に廃れたものである。熱源としては極めて不安定で非効率、人力を必要とする作業を、今日もずっと続けているのだ。

それが例えビジターへのサービス的に残されている慣習だったとて、ファンの心をくすぐり、感銘を与えてくれることに他ならない。今後もきっと続けられるだろうし、続けてほしいと思う。

さて、これ以外にも見所は多々ある。今も外観と機能をそのまま残すキルン棟だったり、日本では珍しい平屋建てのダンネージ式ウェアハウスだったり、製造設備だけでもハイライトだらけなのである。
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そして忘れてはいけない旧竹鶴邸。
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見所盛だくさんだ。

勿論最後には製品試飲や直営のショップでの買い物が待っているし、資料を展示した博物館や有料試飲カウンターも備えられている。広大な敷地は先述のように文化財を見ながら散策するのにもうってつけだ。ウイスキーファンにもそうじゃない人にも、非常にオススメな観光地である。