ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

2020年01月

〇 フルーティで華やか。安定感のあるシェリー樽アラン。
CIMG0162 (2)
☆The Arran Malt LIMITED EDITION 20Years Old
 DISTILLATON DATE:02/09/1996
 BOTTLED DATE:08/08/2017
 度数:52.0%
 樽種:SHERRY HOGSHEAD #1220

(状態) 開封後1年6ヶ月/残量:60%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
黄桃の缶詰、ベリージャム、ホイップクリーム、洋梨、パンケーキまたは焼き菓子のような香ばしさ。スイートで厚めな印象。スワリングするとウッディさを伴うワインビネガー。

味:
柔らかい酸とフルーティで伸びやかなスイート。中盤からはプディング、バターソテー、カラメルソース。終盤にはドライフルーツとタンニンのしっかりとした渋み、スパイシーさ。フィニッシュではウッディ、ビター感が穏やかに広がる。薄っすらとインク的な香りも感じられた。
加水でよりウッディとビターが前面に。

感想:
トップノートでベリー系、黄桃、洋梨といったスイートなフルーツ香が漂い、香り的には非常にグッド。味わいもスイートで厚めのボディ、穏やかで上品なフィニッシュと、概ね裏切らない方向性で満足度高め。樽感も強烈ではなく、程良い現行シェリーカスク味。値段もそれなりにお手頃で悪くない。

評価:4(美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:良い

~アイル・オブ・アラン(現ロックランザ)蒸溜所~

キャンベルタウンのあるキンタイア半島の東側に位置するアラン島。そのロックランザ村に存在する蒸溜所で、創業は1995年。

アラン蒸溜所が創業するまでは約160年もの間、アラン島でウイスキーは造られていなかった(最後にウイスキーが造られたのは1836年とのこと)。

企業傘下ではない独立資本の蒸溜所であり、「The Arran Malt」名義のシングルモルトおよび自社のブレンデッドウイスキーに原酒供給している模様。生産規模は年間120万リットル(2019年現在)とかなりコンパクト。

島内に自社第2蒸溜所となる「ラッグ」の創業計画が進行中で、それに伴い名称を「ロックランザ」に変更した。

尚、日本国内の正規輸入代理店はウィスク・イーが務めている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
比較的評判が良いリミテッドリリースのアラン。本ボトルも例に漏れず、なかなか悪くない味わいでした。

リリース初期のボトルには、味わいのバランスやオフフレーバー等、ネガティブなイメージのあるものも少なくなかったようですが、近年のものは定番・限定版ともに比較的良くなってきているようです。

特にリミテッドエディションで発売される20年前後の物に関しては、この頃合いがアランの熟成のピークの一つと言われるほど、しっかりとした出来のものが多い模様。残念ながら管理人自身が他のボトルを試す機会に恵まれていないため、今後要検証です。

ただ一点、インクのような香りが気になるところ。特段悪い印象は受けませんでしたが、時にオフフレーバーの一種として云われることもある香りであり、酒質の不安定さが出ているのではと勘ぐってしまいました。

そこに目をつむれば、普通に楽しめる良いボトルでした。

〇 成長を見せた信州の原酒。ウッディな味わいが好印象な1本。
CIMG0152
☆MARSMALT Le Papillon ギフチョウ
 Single Cask Single Malt Japanese Whisky
 Distilled and Matured at Mars Shinshu Distillery
 Distilled:Jan.2013  Botteled:Apr.2019
 度数:58%、
 樽種:アメリカンホワイトオーク(新樽)


(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
プラム、カカオやエスプレッソに近いほろ苦さ、湿り気のある木材のウッディネス、木酢や柿渋、過熟のリンゴ、クローブ、鰹出汁を思わせるニュアンスも。まだ若々しいニューポット感も残っている。

味:
オーク材のウッディで芳醇な香り、控えめで上品な甘さ、樽熟の梅酒または完熟のプラム、ハイカカオのビターチョコレート、クローブやオールスパイスのような甘くウッディなスパイス香、終盤で少々アルコール刺激があるが、度数ほどではない印象。もみ殻のような香ばしさ、梅の種の部分のような青っぽさも感じられる。フィニッシュはやや短めで穏やか。ミドルボディ程度ながら、熟成感も感じられる。

感想:
香りではやはりニューポット感が否めないものの、全体的にウッディで上品な印象。カカオのような香ばしさとともに、クローブを思わせるスイートなスパイスが心地よく、しつこい甘さや強すぎるビターも無く、予想以上に楽しめる味わい。加水でややボディ感が崩れる印象だが、ウッディな香りがよく広がる。6年熟成ながら、決して悪くはない完成度。

評価:4(美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや悪い

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マルスウイスキーのシングルカスク限定ブランドであるル・パピヨン。

ラベルに信州の野山に生息する蝶を描き、2016年よりリリース開始。第1弾はオオルリシジミ(アメリカンホワイトオーク新樽、4年熟成)、今作のギフチョウは第7弾にあたります。

原酒はライトリーピーテッドタイプで、樽はアメリカンホワイトオーク新樽。熟成期間は6年となっています。


本シリーズでリリースされる原酒は、現在のところ基本的に2011年の再稼働後の原酒に限られており、どれも若々しいニューポットの印象が強いことが特徴。シングルカスク故希少性は高いものの、ニューポットの刺々しさが先行し、シンプルに味を楽しむには少々難があるイメージでした。

一方で、シリーズを重ねるにつれて熟成期間が長いものがリリースされるようになり、信州蒸溜所の原酒の成長を体感できる、一種の物差しとしても楽しむことができるという、マニアには堪らないシリーズでもあります。ただ、アウトターンの少なさや価格設定の高さからなかなか入手が難しく、またバーでも遭遇の機会に恵まれない(特に首都圏以外)ことが少々難点ではあります。

さて今作ギフチョウですが、シリーズとしては最長熟成の6年物(信州の貯蔵庫で熟成)。前々作のミヤマカラスアゲハ(信州4年熟成原酒)が比較的ニューポット感が強く、若々しい印象だったのに対して、今作ではしっかりと熟成感を感じられ、最初に飲んだ時は予想以上に良い出来だったことにかなり驚いた記憶があります。
CIMG0153
今回改めてテイスティングしましたが、やはりこれまでで一番飲みやすく、樽感・酒質ともに纏まってきているなーという印象。たった2年の熟成期間の違いで(勿論他の要素も多分にあるとは思うが)これ程までに変わるものかと感心した次第です。

私感ですが、再稼働後のマルス信州の原酒は、最初のピークが10年前後に来るのではないかと勝手に予想。ニューポットの棘が取れ、ウッディなニュアンスと良い釣り合いが取れるのではないかと考えています。
DSC_1150
ともあれ、今後の信州蒸溜所原酒の成長に大いに期待をさせてくれる良ボトルでした。

〇 シトラスフルーツと程良いスパイス、少々刺激的な口当たり。今後の伸びしろに期待。
CIMG0148
☆GLENLOSSIE Vintage 1992  Aged: 24Years
 SIGNATORY VINTAGE 
 CASK HAND PICKED BY THE WHISKY EXCHANGE
 度数:56.3%
 樽種:ホグズヘッド


(状態) 開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
オレンジオイルまたはオレンジビターズ、シトラス系のフルーツシロップ、切りたての洋梨、麦汁の甘くて香ばしい風味、ホワイトペッパーやクローブのスパイシー、全体的にライトでスイート。少しワクシーでパラフィンを思わせるニュアンスもある。

味:
最初はビターでスパイシー、クローブやペッパーを強く感じ、フレッシュな酸味も伴う。中盤から控えめながらシロップのようなスイート、ワクシー、オレンジ等の柑橘系のドライフルーツの印象が強い。終盤に向かってクリーム、ウッディ、少々刺激的な口当たりが押し寄せる。フィニッシュで刺激的な口当たりから穏やかに変化、オレンジピールなどのフレッシュフルーツ香を残しつつ、ドライに切れ上がる印象。刺激的である一方で、さらっとした口当たり。

感想:
香りではオレンジや洋梨を中心にフレッシュで甘いいんしょだが、味わいは比較的ドライでビター、かつスパイシー。アルコール刺激もそれなりに強く感じられる。中盤~後半に向かって甘さやフルーツが後追いしてくる印象。余韻でオレンジが残る。加水すると角が取れ、オレンジやピーチのようなフルーツ感と薬草的な青さが前面に現れる。瓶熟でどこまで伸びるのか期待。

評価: 3(可も不可もなし)~ 4(美味しく感じる)

コスパ:値段相応
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
シグナトリーが英国のウイスキーバイヤー、ウイスキーエクスチェンジ向けに販売したボトルで、前回レビューしたシグナトリー×信濃屋ジョイントボトル第2弾、グレンロッシーのシスターカスクにあたるものです。
CIMG0150

使用されている樽は双方ともホグズヘッド。おそらくバーボン樽と考えて間違えないでしょう。ボトリングの時期も2ヶ月程度(信濃屋:3月、エクスチェンジ:5月)の差であり、度数もほぼ同程度。ただし、ボトリング数は70本程度の差が生じています。

味わいとしては信濃屋ロッシーと似た方向にありつつも、こちらの方がわずかにビター&スパイシーが先行するイメージ。余韻も結構ドライで甘さ控えめな印象でした。

個人的にはもっとスイートかつフルーティなものを期待していたのですが、現時点では期待していたほどのスペックではない模様…。信濃屋ロッシー同様に瓶熟にて今後様子見していく必要がありそうです。

余談ながら、1992ヴィンテージのグレンロッシーは2017年頃にシグナトリーより複数本がリリースされていたようで、これら2本の他にシグナトリービンテージのシリーズとして直接販売されたものが現在確認できます。機会があれば他のリリースも試してみたいですね。

今後の味わいの伸び方次第ではコスパ優良なボトルに変化する可能性もあり、半年~1年ぐらいかけてゆっくりと様子を伺っていきたいと思います。

〇 フレッシュなシトラス。ポテンシャルを感じさせるスペイサイドの佳酒。
DSC_3520
☆GLENLOSSIE Vintage 1992  Aged: 24Years
 SIGNATORY VINTAGE 
 EXCLUSIVELY CHOSEN BY SHINANOYA, TOKYO, JAPAN
 度数:57.4%
 樽種:ホグズヘッド


(状態)開封直後/残量:90%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
オレンジオイル、オレンジピール、ワクシーな印象、未熟なキウイ、シロップ薬、青レモンのピールのような若干の青さ、やや尖ったアルコール刺激。甘くオイリーな印象だが、次第にフレッシュフルーツの酸味も現れる。徐々に焼きたてパンのような香ばしさ、イースト的な酸味、キャラメルのようなニュアンスも出てくる。

味:
フルーツのシロップのような甘さ、フレッシュな酸味、オレンジソース、やや青っぽい印象。中盤あたりからはワクシーで刺激的、ビター、薬草っぽさも。さらに終盤からフィニッシュにかけてはスパイシーで、ペッパー、クローブを感じる。フィニッシュはやや長めで、ビターの中に青さとウッディさが混ざる。口当たりはさらっとしており、ややヒリつくが不快ではない。

感想:
開栓したてからそれなりに良い子なイメージ。ワクシーだが、ちゃんとオレンジや青レモンのフルーティさもしっかり感じられ、開栓直後ながらしっかり楽しめる印象。時間経過で酸味方面のニュアンスが引き立ってくる。加水するとワクシー&オイリーが抜け、よりフルーツのニュアンスを感じやすくなる。また原酒に由来すると思われるイースティなニュアンスも現れる。今後、瓶熟でこなれることが期待できそうな味わい。

評価: 4 (美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ: 良い

~グレンロッシー蒸溜所~
現在ディアジオの傘下で、主にブレンド用に原酒を提供。オフィシャルのシングルモルトはリミテッドリリースを除けば「花と動物」の10年物のみ。ボトラーズでは近年も度々リリースされているので、個人的にはオフィシャルよりもボトラーズのほうが馴染みがあるイメージ。

ブレンド用原酒の提供先と著名なのはヘイグ(ディンプル)。姉妹蒸溜所としてマノックモアが併設されており、ディアジオ社の巨大集中熟成庫、およびドラフの処理施設(ダークグレイン工場)も完備されている等、大規模な複合施設を成している。

ポットスチルは現在6基。スピリットスチルには精留器が取り付けられている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

数年前に発売され、ネットでは解禁されてから数十分で完売したといわれるボトル。故あって手元にあったものを開栓、テイスティングしました。

販売元は日本におけるウイスキー販売の雄、信濃屋。原酒の提供元はこちらも著名なスコットランドのボトラーズ、シグナトリーです。本ボトルは所謂シグナトリー×信濃屋ジョイントボトルと呼ばれるリリースの第2弾にあたるもので、第1弾のグレンタレット 1987年と同時発売でした。

この2本は販売開始前より評判上々で、ネットでは先述の通りほぼ即完売(タレットに至っては数分程度で完売)してしまったそうです。これ以降も同ジョイントボトルとしてブルックラディやバルメナック、グレンバーギーなどがリリースされ、その度に早々に完売してしまう、人気のシリーズとなっています。

また、同シリーズ各ボトルに対するネット上での評価を見ていると、概ね「開栓すぐでも美味しく飲める」「瓶熟でもっと伸びそうなスペック」等のレビューが散見され、どれも品質面では高評価な模様。樽をチョイスしたバイヤーさんの敏腕ぶりが窺えます。

本ボトルも例に漏れず開けたてで十分楽しめるレベルで、オレンジ系シトラスのフレッシュな甘さに若レモンや未熟キウイの酸味が合わさり、かなり自分好みな仕上がり。樽感含め主張の強いフレーバーもほぼ無く、いい意味でブレンド向け原酒を造っている蒸溜所らしい上品な味わいでした。

価格は1万数千円程度でコスパ面も非常に良く、現状の日本の市場を考慮すれば、即完売も充分頷けるクオリティです。

ワクシーさやツンツンした部分は、今後徐々にこなれて新たなフレーバーを生みそうな予感がしますし、現状で控えめなシトラス感やフレッシュな酸味はまだまだ伸びしろがありそう。しっかりと瓶熟させて楽しみたい反面、現状でもドンドンいけてしまう程に良い味わいであり、飲むか飲まざるかのジレンマの対象でもあります。とりあえずは飲みたい欲望をグッと我慢して、まずは半年を目安に経過観察ですかね。魔が差さないように注意注意と…。

このページのトップヘ