ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

2019年11月

〇  重層なオークとベリー、フルボディの羽生シングルモルト
DSC_3164
☆Ichiro's Malt AGED 20 YEARS Cask Strength
 from the Hanyu distillery
 度数:57.5%

(状態)
開封直後/バー飲み

(テイスティング)
香り:
上品なウッディとピーティ。ビターで奥行きを感じる印象。次第にフランボワーズやストロベリーを感じさせるフルーティ、高級家具屋を思わせるオーク、もしくは香木。時間経過とともにモルティやバニラ、キャラメルのような香りも現れる。まだまだ開いていない印象。

味:
赤ワインのようなタンニン、ハイカカオチョコレートのようなビター、樽由来のウッディさを感じる。最初は甘さよりもビター感が強い印象。重層的でフルボディ。次第にベリーやカラメルソースのようなニュアンスもある。余韻はしっかり長めで、上品なウッディとビター、ほのかなピートが最後までじわじわと続く。時間経過でスイート感やバニラ、フルーツが開いてくる。アルコール度数のわりにピリピリしない。

感想:
最初はビターが強く、ドライで少し難しい印象だが、時間経過で徐々にキャラクターが現れてくる。重層感や上品な旨味、タンニンを感じ、フルボディのカベルネ・ソーヴィニヨンのようなリッチな味わい。ビター感はカカオの強いチョコレートを思わせる。さすがの風格というか、ちょっと他で味わったことのない樽感。加水や時間経過で表情が変わるのでゆっくりしっかり楽しめる。さらに開いたら一体どんな味わいになるのだろうか…興味をそそられる。

評価: 5 (非常に美味しい/特別な時に飲みたいレベル)

コスパ:高いが納得


はい。どえらい代物を賞味致しました。高いとはいえ、払える額で飲めたのはなんと僥倖なことか!

もっと舌が肥えていたなら、もっと香りが拾えたなら、もっと気の利いた感想を書けたなら… とまあ悔やんでも仕方なし、現状でもしっかり楽しめたわけなので後悔しちゃいけません。

さて、イチローズモルトのシングルモルト20年(羽生モルト原酒)としてはセカンドリリースとなるこのボトル(ファーストリリースは46%加水)。メインの樽はシェリーだそうですが、香木のような香りも感じられ、もしかするとミズナラ樽も入ってるのかな~…などと分かりもせず推測してみたり。ボトルがボトル故、バイアスを掛けずに味わうことに相当苦慮致しました(汗

DSC_3166
もう既に10年も昔のボトルなんですね…

先日イチローズモルトカードシリーズセットが香港のオークションで1億で落札されたことは有名なお話ですが、このボトルもこのボトルで市井に出たらいったいいくらになるのやら…なんていう邪な考えはさておき、大変貴重なボトルであり、しかも口開けで味わえるというこれまた僥倖かつド貴重な体験をさせていだいたわけです。ホント感謝ですよ。

自身のテイスティング術と語彙力の拙さ故にその魅力をきっちり書き表わせないのが癪ですが、まず第一印象ではビター以外に上手く拾うことができず、かなり難しい印象を受けました。が、時間を掛けてゆっくり探ってゆくとベリーやカカオといった要素、ビターの中にもボディをしっかり感じ、独特な旨味やとても良い樽感を見つけることができました。それ以上は形容しがたく、重層でリッチであるとしか言いようがない、本当に残念な表現力です(大汗

ただひとつ、これは間違いなく良いお酒(語彙力)!と言って差し支えないでしょう。いやホントに。

今回はバーでのイベントの中で振舞われたため、口開けで既に残り6割程度まで減っており、今後しっかり開くまでそれほど時間が掛からないと思われます。果たして次があるのやら…いや、是非とも開いた状態でもう一度味わってみたい!恐らく、いえ間違いなく相当なポテンシャルを秘めているはず。その機会が巡ってくるよう、心より願うところです。

前回:「蒸溜所への行き方」

前回、サントリー山崎蒸溜所へのアクセスとツアー予約について解説したが、今回は各見学ツアーの具体的な内容や違いについて紹介したいと思う。
DSC_0530_R
有料の見学ツアーが2種類あることは前回述べた通り。見学費用が1000円で、予約できる時間枠の多いノーマルの見学ツアーと、2000円の「シングルモルト山崎誕生の物語」という上級の見学ツアーがある。
DSC_1779_R
2つのツアーの大きな違いは試飲メニューにあり、1000円のツアーではシングルモルト山崎ノンエイジとその構成原酒2種(ホワイトオーク樽原酒、ワイン樽原酒)を、2000円のほうではシングルモルト山崎12年と構成原酒3種(ホワイトオーク樽原酒、シェリー樽原酒、ミズナラ樽原酒)をそれぞれ楽しむことができる。
DSC_1471_R
また、1000円のツアーが試飲以外はずっと立ったままで進行するのに対し、2000円のツアーでは最初にツアー用のホールに案内され、着席しながら蒸溜所紹介の動画を見てから工場見学、さらに戻って今度は山崎12年の紹介動画を見て、それから試飲という流れになっている。
DSC_0081_R
工場見学の部分に関しては全く同じ順路、基本的に同じ内容となっているが、1000円のツアーが時間的に少々タイトな設定なのに対し、2000円のツアーでは多少余裕のある進行になっており、個人での質問やエリア毎の写真撮影がしやすくなっている。
DSC_0059_R
この時間的な余裕の差は非常に大きく、1000円のツアーでは説明を細かく聞いていると写真を撮る暇が無く、逆に写真をしっかり撮ろうとすれば説明を聞きそびれてしまいがちだ。その点、2000円のツアーではゆったりと見学を楽しむことができ、値段相応に満足度が上がっている印象だ。

尚、どちらのツアーも原酒は1杯ずつ、製品は2杯ずつ(2杯目は多めの量で)用意され、さらにグラスと氷、炭酸水も配られ、製品2杯目を好みの方法で楽しめるようになっている。ツアー推奨の飲み方はハイボールだが(美味しいハイボールの作り方をレクチャーされる)、ロックでも水割りでもストレートでもどれで楽しんでも良いだろう。また、おつまみとしてナッツやチョコレート等も用意されている。
DSC_0060_R
1000円もしくは2000円でここまで至れり尽くせりなツアーも珍しいだろう。ただ、1000円のツアーではやはり時間の制限がタイトであり、ゆっくりじっくり楽しむのは少々難しい。一方2000円のツアーでは試飲時間もかなり余裕をもって取られていて、テイスティングアイテムが1種類増えているにも関わらず最後までゆっくり味うことが可能だ。

全体的にみてやはり2000円のツアーのほうが満足度は高めになっている。が、1000円のツアーも決してレベルが低いわけではない。ウイスキー蒸溜所の見学ツアーとしてはどちらも非常に優秀で完成度が高く、十分楽しむことができる。
DSC_0051_R
たまたま2000円のツアーが予約できれば良し、ダメでも1000円のツアーで基本的な部分は十分に見て回ることができるし、一部の原酒や製品は試飲カウンターでも楽しむことができる。

さてツアーの内容についてはここまで。具体的な内容は是非ご自身で参加し、体験していただきたい。

ウイスキーの蒸溜所は今や日本全国各地に点在している。ここ数年でその数は20を超える勢いであり、半数以上の蒸溜所が一般客に対して設備の見学を実施している状況だ。
DSC_2559
ウイスキーファンの方々の中には、住まいの地域に蒸溜所があるという方もいらっしゃるだろうし、また、旅行に行かれる先が蒸溜所が立地する地域であることも同様に少なくないと思う。ならば、是非とも暇なときに、観光ついでで構わないので蒸溜所に立ち寄って欲しいと思う。

このブログでは自分自身で訪問経験のある蒸溜所に関して、訪問の経路や交通手段、見所や見学のポイント、宿泊や周辺施設の情報までできるだけ幅広く情報を発信したいと思い、「〇〇蒸溜所へ行こう」というシリーズでこれを順番に紹介していきたいと思う。


シリーズ最初は国内第1号蒸溜所で知られるサントリー山崎蒸溜所から始めたいと思う。

DSC_0047
山崎蒸溜所が位置するのは大阪府と京都府の府境「大阪府三島郡 島本町」。最寄り駅は「山崎(JR)」または「大山崎(阪急)」の2つである。
DSC_0046
どちらの駅も大阪、京都から約30分程度で往来できる距離であり、駅からも徒歩で5~10分程度とかなりアクセスの良好な立地である。行き方に困ることはないだろう。

また、蒸溜所敷地内に一般客用駐車場の用意が無いため、訪問の際には電車+徒歩での移動が基本となる(駐輪場も無し)。また、当然ながら運転する予定があってのウイスキー試飲はご法度なので、蒸溜所を満喫するためにもできるだけ公共交通機関のみを利用して向かって欲しい。

さて、蒸溜所に向かう前に一つ注意して頂きたいことがある。それは山崎蒸溜所が見学コースも見学無しで立ち入る場合にも必ず事前予約が必要であるということである。予約は山崎蒸溜所公式ウェブサイトか電話(番号は公式サイトを参照のこと)にて行うことができ、月初めの最初の平日に3か月後の月の1か月分の枠が開放されるようになっている(開放日時は前後する可能性あり。公式サイトにて次月の開放日の案内がされるので参照してほしい)。

土日祝日など人気のある曜日は開放と同時に埋まることも珍しくないので、絶対に行きたいという方は早めに予定を組み、開放と同時に予約するなど尽力していただきたい。

予約できるコースは、通常の見学ツアー(1000円)、「シングルモルトウイスキー山崎誕生の物語」という特別コース(2000円)、山崎ウイスキー館(ショップ、試飲、展示)見学コース(無料)の3コースとなっている。

DSC_0061
通常のツアーは年末年始やメンテナンスによる休止期間を除き通年で開催されており、時間も朝から夕方まで5枠ずつ設定されている。無料コースも同じ日程で予約可能で、こちらは7枠となっている。一方、特別コースは土日祝日限定となっており、時間は13:00からの1枠のみとかなり制限されているので注意が必要だ。

予約さえ取れてしまえば、あとは蒸溜所に行くのみ。入口の受付で手続きを行い、見学ツアーは所定の場所にて待機、入場のみの場合はそのままショップや試飲コーナーへ向かおう。

DSC_2543
先述の通り、大阪または京都からのアクセスが非常に良好であるため、関西圏の観光のついでに立ち寄ることも容易。宿泊に関しても都市部周辺にホテルが点在しているので困ることはないだろう。ただ周辺に飲食店が無いことだけが唯一の欠点だろう。蒸溜所内にもレストランは無いので、どうしても現地で食事が必要な場合には駅近くのコンビニを利用するほかない。

尚、JR山崎駅前からはJRA京都競馬場への直通バスも運行中。蒸留所でウイスキーを飲んでから競馬場へ行くというオトナな(ジャンキーな)楽しみ方もできるということを付記しておこう。


[アクセス]
≪JR京都線≫
〇 大阪駅(京都・滋賀方面)→ 山崎駅
〇 京都駅(大阪・神戸方面)→ 山崎駅

≪阪急京都線≫
〇 梅田駅(京都河原町方面)→ 大山崎駅
〇 京都河原町駅(大阪梅田方面)→ 大山崎駅

最寄りの都市は大阪または京都。飛行機ならば関西空港または大阪空港から大阪駅へ移動し、そこからJR線で移動するのが一般的なルートになるだろう。大阪空港からの場合は大阪モノレールより阪急宝塚線へと乗り継いで、梅田方面途中の十三駅にて京都方面行きに乗り換えてもよい。

新幹線の場合には西方から来るなら新大阪駅、東方からならば京都駅でJR線にそれぞれ乗り換えればよい。JR線で大阪や新大阪から乗る場合は「快速」または「新快速」列車に乗り、高槻駅で普通列車に乗り換えると時間短縮ができる。京都からは快速列車からの乗り換えができないので、普通列車一択となる。

移動の際の注意として、JR京都線が比較的遅延が発生しやすい路線となっているので、時間に余裕をもって移動することをお勧めしておく。

次回:「蒸留所ツアーの楽しみ方」編

日本の最南端、鹿児島県。その鹿児島県の南さつま市、津貫に現在日本で最も南西部となるウイスキー蒸溜所が存在する。それがここに紹介するマルス津貫蒸溜所だ。
DSC_0725
マルス津貫蒸溜所はマルス信州蒸溜所に続き、本坊酒造株式会社が開設したマルスウイスキー第2の蒸溜所である。実際のところ、過去には鹿児島工場、山梨ワイナリーでもウイスキーの製造が行われていた歴史があり、厳密にいえば本坊酒造史上4つ目のウイスキー製造工場ということになるだろう。
DSC_2972
DSC_2973
津貫蒸溜所のある場所は元々焼酎製造を行っていた本坊酒造津貫工場があり、本坊酒造生誕の地でもある。蒸溜所敷地内に高々とそびえる建屋内には、当時焼酎やスピリッツの製造に使用されたスーパーアロスパス式の連続蒸留器が歴史の名残として展示されている。また、連続式蒸溜器は使用されていないものの、津貫蒸溜所の隣には本格焼酎の製造所、貴匠蔵が併設され、現在も焼酎の製造が続けられている。
DSC_3084
津貫は信州蒸溜所と比べて温暖かつ湿潤。ウイスキーの熟成も早く進むとされ、蒸散によって失われてしまう量は年間で6%(信州で約3%程度)になるという。
DSC_2961
また、本坊酒造は津貫蒸溜所と同時に屋久島にウイスキー用のエージングセラー(熟成庫)を開設。信州蒸溜所と合わせ、3カ所に熟成庫を持つことになった。現在、津貫と信州の2蒸溜所で製造したウイスキーを3カ所それぞれ相互に移動、保管し、それぞれ原酒に対してそれぞれの熟成庫の自然環境の影響を加え、性質の異なるウイスキーの完成が目指されている。

信州で蒸溜、津貫および屋久島で熟成した原酒はそれぞれ「駒ヶ岳 津貫エイジング」「同 屋久島エイジング」として既にリリースされている。これらはまだ短熟の製品ではあるが、それぞれ熟成環境の違いが少しずつ現れており非常に興味深い仕上がりになっている。今後5年、10年と経過することでどのような味わいに変わるのか、長熟ボトルのリリースが楽しみだ。

DSC_3136
尚、津貫原酒の信州、および屋久島のエイジングシリーズはまだ一般販売されていない。今年の蒸溜所イベントで初めて限定販売され、蒸溜所へ行けばまだ試飲も可能だ。信州、屋久島ともに試飲をしたが、とても面白い出来栄えになっていた。気になる方は一度蒸溜所にて試飲することをオススメしておく(残念ながらボトル販売分は完売)。

〇 スイート&ココナッツ&トロピカル!なグレン〇ーレンジ
DSC_2950
☆Westport 1995 Aged 19 years Brihgt Snowflaks
 度数:52%
 樽種:ホグズヘッド

(状態)開封後約1年/残量:80%程度/自宅保管

(テイスティング)
香り:
かなりスイートで、ココナッツミルク、クリームのキャンディ。続いてバナナ、マンゴー、黄桃の缶詰、わずかに柑橘のワタの部分の香りもする。モルトの香ばしさも控えめながら感じられる。

味:
はっきりと甘さを感じる。レモンクリームのケーキ、ココナッツチャンク(実の部分)、ハニーシロップ、ミルクチョコレート。途中から渋みやウッディなフレーバーが現れる。余韻は中程度でややドライ。心地よい暖かさを感じつつ、緩やかに消える。

感想:
ココナッツやトロピカルフルーツ、バニラといった、所謂バーボン樽の良いフレーバーがしっかりと、しかしバランスよく感じられるボトル。香り、味ともにスイートでフルーティ。加水するとウッディさが強調され、渋みが優位になって少々飲みにくくなる印象。それほど刺激的な口当たりではないので、ストレートでゆっくり味わうのが良いか。

評価: 4 (美味しく感じる/ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:良い
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウィスク・イ―からリリースされているスノーフレークシリーズの1本。「ウエストポート」は所謂ティースプーンモルトの1種で、メイン原酒の蒸溜所について販売元コメントには「テインの町にある…」「5m以上の首の長いポットスチルの…」というヒント(というか殆ど答え)が載っています。

つまるところグレンモーレンジな訳なんですが、オフィシャルスタンダードのミドルグレードによく感じられるオレンジや柑橘の風味よりもココナッツやフルーツといったバーボンカスク由来のフレーバーが前面に出ている印象です。開封当初は香り、味ともにかなりドライな印象で、スイートやフルーティなフレーバーはあまり感じられませんでした。一方で柑橘系ピールの風味やオレンジオイルっぽい印象は開封直後のほうが顕著に感じられ、最初の印象は薄味でドライなグレンモーレンジという感じ。正直良い買い物ではなかったかもと落胆していましたが、半年経過ぐらいからココナッツとトロピカルが開き始め、今やすっかり美味く変化したわけです。侮れませんね。結果として値段に対してかなりお得感のあるボトルとなりました。



さて、「ティースプーンモルト」について簡単に説明しておきましょう。

ティースプーンモルトはある1カ所の蒸溜所のモルト原酒1樽分に、ティースプーン1杯ぐらいの僅かな量の別の蒸溜所のモルト原酒を加えてブレンドしたもので、規制上ブレンデッドモルトとなりますが中身はほぼシングルモルトの状態で販売されるものをいいます。

ティースプーンの銘柄で有名どころでは上記紹介済みの「ウエストポート:モーレンジ」のほか、「ウォードヘッド:グレンフィディック」や「バーンサイド:バルヴェニー」、「ダルリンプル:アイルサベイ」等が比較的リリースのあるところでしょう。加えられる原酒は概ね同系列や関係性のある蒸溜所の原酒が多いようです。

これらは全てボトラーズからのリリース。つまりはオフィシャルボトル以外からでのモルト原酒のリリースを大っぴらに行いたくない、または行えない事情がある蒸溜所がボトラーズリリースする際の措置と考えることができます(勿論、他に理由がある場合もあるかと思います)。

これと似た形式として「シークレット~」というリリースがあります。シークレットスペイサイドやシークレットアイラ、シークレットオークニーなどが有名で、最近特に目立ってリリースが多い印象です。

ぱっと見で正体がわからないために触れにくい印象がありますが、販売店や販売サイトにてヒントとなる要素、または正体そのものを紹介していることが殆どなので、情報をちゃんと確認すれば問題なく楽しめると思いますので、臆せず試してみましょう。

〇 直球と見せかけた変化球? サントリーブレンデッドの変わり種
DSC_2953
☆ THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY BLENDED JAPANESE WHISKY RITCH TYPE
 (Alc.48%、オフィシャル、ブレンデッドウイスキー)

(状態)
開封直後/残量:100%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
キャンディー、ジンジャー、ドライフルーツ、牛脂のようなファッティ、少々金属臭。次第にミルククリーム、トマトピューレ、ビーフブイヨン、セロリの葉、バルサミコが現れる。さらに経過するとメープルも。

味:
はっきりしたシロップの甘さ、リンゴのバターソテー、少々カスタードクリームやバニラ、スパイシーで程良い刺激。次第に杉板のようなウッディ、タンニン。ミネストローネを思わせるスープ。余韻にかけてピーチやマスカットのフルーティ。みたらし団子。余韻は長めで、ビターとドライフルーツが残る。

感想:
最初から山崎の原酒らしい香りがはっきり現れ、サントリーのブレンデッドの王道路線の雰囲気で始まるが、徐々に杉板由来の個性が顔を出し始める。特に中盤以降はトマトスープ感や金属、杉板の風味が現れ少々異質。それでも最後はピーチやマスカットなどフレッシュフルーツやみたらし団子の風味が現れスイートに収まる。所謂リッチ感もそれなりに感じられ、普通に楽しめる。余韻はやや長い印象。

評価: 3 ~ 4 (可も不可もなし ~ 美味しく感じる)

コスパ:値段相応~やや高い


前回に引き続きTHE ESSENCE of SUNTORY WHISKYの第3弾、の2種のうちのもう片方。

クリーンタイプに比べると圧倒的にサントリーのブレンデッドウイスキー感が出ており、一見するとド正統派に見える1本。しかししか~し、飲み進めば進むほど明らかに異質な雰囲気のフレーバーが顔を出してきます。

やはり際立つのは金属やトマトスープのイメージ。クリーンタイプに比べて動物性のファッティ感が強く、そのせいかビーフブイヨンのようなコクを感じ、よくあるフルーツやバニラクリームのようなデザート系ではない料理的な味わいを連想させます。やはり杉樽の影響か、一般的なブレンデッドと比較すると明らかに個性的。それでもクリーンタイプより纏まりの良い印象で、飲みやすさではこちらに軍配。ただし加水ではエグみが増すように感じられ、ボディも折れるので飲み方は個人的にはストレート一択かなと思いました。
DSC_2954
さて、最新作を2種類とも飲んだ結果は…まあ良くも悪くも実験的なボトル…と言ったところでしょうか。決して万人にオススメできないし、だからといって不味いとか飲めないとかではなく、良くも悪くも玄人向けな、お試し的な要素の大きな仕上がりに感じました。そもそもエッセンスオブシリーズが料飲店限定流通品であり、リミテッド商品なので当たり前といえば当たり前なんですがね。

ただ、杉樽の影響がどういうものかを知る上では非常に勉強になるボトルだと思います。もしバー等で見かけられたら一度試してみてはいかがでしょうか。

〇 変化球だが悪くない、サントリーブレンデッドの異端
DSC_2952
☆ THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY BLENDED JAPANESE WHISKY CLEAN TYPE
 (Alc.48%、オフィシャル、ブレンデッドウイスキー)

(状態)
開封後数日/残量:90%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
最初は驚くほどはっきりした杉材の香り。木材加工所、高級家具屋の香りを思わせる。その後徐々にピーチ、洋梨、梅酒、バニラキャラメル、トマトソース、スパイスが香る。時間経過とともに松ヤニ、ミルククリーム。僅かにピートも感じる。かなり個性的な印象。

味:
ピーチネクターやマスカットのガム、リンゴ、あっさりした甘さとウッディなニュアンス、しっかりとビター。杉の香りは程良く感じる程度。ややスパイシーで、トマト風味、サルサソースのような独特の旨味、ジンジャーも感じる。少々青っぽくて金属的な風味も感じる。余韻はドライ寄りで短め。飲み進めるとトマトや青さが目立つようになる。少々オイリー、ミルキー、若い印象。

感想:
とても個性的!だが不味かったり飲めないという訳ではない。杉の風味は思ったほど強くない。杉の香りとの相互作用なのか、トマトまたは金属的なフレーバーが目立つ。また杉樽香がこなれてくると少しファッティな印象に変わってくる。加水は数滴なら伸びる印象だが、ウッド感が強くなってくる。多く加水するとボディが崩れる印象。

評価: 3 (可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや高い


先日発売開始となったサントリーの料飲店限定シリーズ、THE ESSENCE of SUNTORY WHISKYの第3弾

今回のエッセンスオブサントリーは「杉樽」がテーマ。片や白州蒸溜所の若いモルト、もう一方は山崎蒸溜所の長熟モルトを軸に、知多のグレーンを加え杉樽をアクセントとして使用した独特のブレンデッドウイスキーです。

正直「杉樽」と聞いてかなり構えていたのですが、いざテイスティングしてみると意外と楽しめる香り&味わいに驚かされました。ただ、ブレンデッドとはいえピーキーなリリースであるエッセンスオブシリーズなだけあってか決して万人受けする雰囲気ではない、一癖二癖ある印象。

杉樽由来と思わしき独特なファッティなコクや木材感、そこはかとなく香る青さやトマト、金属臭などかなり個性的なフレーバーを含んでおり、ブラインドならばまずサントリーのブレンデッドとは答えないような、かなり異端を感じさせるキャラクターでした。

杉樽といえば過去にサントリーからリリースされていた「膳」や「座」、「響12年」等の原酒に杉樽が使用されていたことで知られています。また、非常に個性が強く、短期間の熟成でもかなり香りが出たとか出ないとか…。まあだからこそ樽全体に使用せず鏡板のみの使用に留まったということなんでしょう。

杉樽といえば、先頃「神息(かみき)ウイスキー」という日本”っぽい”謎のブランドが海外で発売され、「マリッジに奈良県の吉野杉を使った」とアピールしていましたね…。ブランドページには「杉樽」と明記されておらず、一体どのような形で使用したのか謎ではありますが、もし全面杉製の樽を使っていたとするのならば、どのような味がするのか興味をそそられるところでもあります。まあテイスティングの機会、無いと思われますが…

2日目は製樽作業の見学からスタート。

昨日キルン塔でたっぷり燻され焚火の香りとなったツナギに着替え、前日同様雨の中の移動となった。
26
22
製樽工場では実際に蒲の葉を樽の隙間に通して詰める作業の体験の他、樽の修理、チャー等実際の作業を間近に見学。スタッフの方からは日々の製樽作業のポイントや苦労など様々なお話を伺うことができた。

DSC_1063
DSC_1076
お次はいよいよ原酒の樽詰め作業へ。
DSC_1094
DSC_1091
IMG_0100
この会のために用意された樽に専用のタンクからニューポットを注いでゆく。
少量だがニューポットの試飲も経験。直火焚き蒸留らしい、重厚な味わいだった。

ここで天候が好転。一時は樽の運び込み体験が省略される可能性が出ていたが、無事、行える運びとなった。
DSC_1108
DSC_1109
DSC_1111
馴れない樽運搬に四苦八苦しつつ、無事運び込み完了。これにてマイウイスキーづくりの全プログラムが終了となった。
DSC_1117
最後に昼食を頂きながらの修了式。余市マイウイスキーづくり修了証が1人づつ授与された。これを持ていると余市蒸留所再訪時、自分達のマイウイスキー樽を見学することが可能とのこと。なかなか嬉しい特典である。

10年後には自分達の樽からシングルカスクウイスキーがボトリングされ、さらにこの回のメンバーで再び集まり10年目の懇親パーティが開かれるとのこと。後にもまだまだ楽しみが残された訳だ。10年目の再会を皆々と約束しつつ、解散。帰途に就いた。

(終わり)

以上、ざっくりではあるがマイウイスキーづくりの内容であった。

記事の通り、ウイスキーファン歓喜の内容が目白押しであり、次から次へといろいろな体験が用意されている。各工程の体験では実際にその部門の現場のスタッフの方から説明、方法のレクチャーが行われ、写真撮影の時間もたっぷり確保される等かなり配慮の行き届いた充実のプログラムであった。

また、各自の質問にも随時お答えくださり、普段聞けない現場の話もじっくり聞くことができた。

今後まだまだウイスキーブーム冷めやらぬ中で応募も増え、なかなか参加の機会に恵まれ難い状況が続くだろう。しかし、諦めず応募いただき、是非参加していただきたいと思う。それだけの価値がこの会にはある。

2018年5月中旬の話ではあるが、幸運にも余市のマイウイスキーづくりに参加することができた。

既に1年以上前の話で恐縮であるが、本記事は参加時の様子を体験記として簡単にまとめてみたものである。
お暇な方は是非どうぞ。
3
さて前回の記事で紹介した通り、マイウイスキーづくりは2日間にわたって開催される。といっても丸々2日間使う訳ではなく、1日目の昼過ぎから始まり2日目の昼で終了。遠隔地からの参加者にも十分配慮されたスケジュールとなっている。
4
尚、この時はウイスキーブーム加熱の真っ只中だったことに加え時期が良かった(5月半ば)ということもあって応募が殺到。通常20~30倍程度(それでも十分多いが…)のところ約40倍もの倍率だったそうだ。参加枠が約20人であることを考えると今回だけで800人あまりの応募があったことになる。その凄まじき倍率を勝ち抜けたのだから本当に価値ある参加だったと思う。
DSC_0933
蒸溜所までは空港から小樽までJR特急で直通、小樽でローカル線またはバスに乗り換えて余市へと向かう。この乗り換え時間が曲者で、なかなか上手く乗り継ぎできない。小樽から先の函館本線が単線で本数が限られることが原因だが、そのために時に30分近く乗り継ぎ待ちになることもある。

そこでバスである。ちょうど昼時間帯には電車と前後して小樽駅前から出発のバスが運行しており、運賃も所要時間も電車とほぼ同等になため、都合の良いほうを選ぶことができる。自分はこの時ちょうど待ち時間なしで乗れるバスがあったため、これを利用した。
DSC_1043
さて余市に到着して早々に天候が悪化。集合時間前には本降りの雨となってしまった。5月中旬の北海道はまだ肌寒く、加えて雨降りで一気に気温が低下。春先とは思えない寒さの中での体験となった。

この日集まったのは総勢18名ほど。地元北海道はもとより東京、静岡、大阪、九州は福岡と全国各地から参加者が集まった。そしてなんとハワイからの参加者もおられ、ジャパニーズウイスキーの知名度の高さを思い知らされた。

1日目のスタートはまず座学。スライドを利用し、ウイスキーの製法やニッカおよび余市蒸溜所の成り立ちの説明がされた。その後外に出てキルン棟を見学、続いて糖化槽、発酵槽の順に見学を案内された。発酵槽の棟では麦汁とモロミを試飲。モロミは他の蒸溜所と比べて酸味の効いた味わいだった。
5
17
12
お次はポットスチルへの石炭投入体験、糖化槽へ戻って清掃体験と肉体労働が続いて製造エリアの体験は終了。その後は構成原酒を使ったマイブレンド体験、旧竹鶴邸内部の見学を終え懇親会となった。
20
23
DSC_1057
悪天候だったことも手伝ってか若干ビジーな進行となった1日目だったが、各場所での解説、対応は大変丁寧で行き届いたものであり、満足度高めだった。また、最初は初対面であまり会話の進まなかった参加者同士も終盤になるにつれて打ち解け、懇親会ではお互い大いに盛り上がった。
24
尚、懇親会では今年10年目を迎えたマイウイスキーづくりのシングルカスク余市(2008-2018)も登場。10年後に向けて大いに期待を高めつつ、1日目の終了となった。

2日目に続く

余市蒸溜所ではウイスキーファンに向け、年に数回とあるイベントを開催している。
29
3
その名も「余市マイウイスキーづくり」である。

これはニッカウヰスキー主催で行われる一般客向けのサービスイベントで、余市蒸溜所および宮城峡蒸溜所の2カ所で開催されている。開催される回数は余市が年に8回、宮城峡が4回程度で、概ね金曜~土曜または土曜から日曜の2日間の日程で行われている。

「マイウイスキーづくり」は元々ニッカの得意先など、特別なゲストを集めて開催される身内向けの企画だったものを一般顧客向けにも開催したのが始まりだそうで、いまや酒類メーカー屈指のファンサービスイベントとして国内はおろか海外からも参加者が集まるほどの人気。毎年参加募集には応募が殺到するのが恒例であり、抽選によって参加者が決まるが、その倍率はざっと20~30倍、ときに40倍近くにもなるという。
10
20
DSC_1063
2日間の主な内容は、
(1日目)
① キルン棟見学およびピート燃焼の見学
② ポットスチルの直火釜への石炭投入
③ 糖化槽の清掃体験
④ 原酒のブレンド体験
⑤ 旧竹鶴邸の見学
⑥ 懇親会

(2日目)
① 製樽工場見学
② ニューポット樽詰め
③ 熟成庫への樽の運搬、搬入
④ 修了式

となっており、かなり盛沢山だ。さらに1日目には合間合間に一般見学では入ることのできないエリアの見学があり、麦汁やモロミの試飲も用意され、2日間通してニッカに限らず全ウイスキーファンにとって夢のような企画となっている。
DSC_1106
DSC_1111
勿論、自分たちで詰めた原酒もちゃんと配布される。ただしそれはマイウイスキーづくりからきっかり10年後。息の長い話ではあるが、貴重な余市のシングルカスク、カスクストレングス10年ものを入手できると思えば惜しくない時間だろう。それに自分たちで詰めた樽が10年間掛けて熟成していく様を想像する楽しみもある。
30
それに他の参加者とのコミュニケーションも楽しい。皆ウイスキー好きな方々ばかりで、自分が参加した時は北は北海道から南は福岡、加えてハワイから来られた方まで老若男女様々な出身地、そして様々な職業の方が参加されていた。そんな方々とウイスキーという一つの共通言語を元に情報交換から雑談までいろいろな会話を楽しめた。これもまたファンイベントとしての醍醐味だろう。

大変人気の企画であるため、まず抽選に当たらなければならないというハードルはあるが、しかし、ウイスキーファンなれば是非一度ご参加頂きたいイベントである。

このページのトップヘ