ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

2019年08月

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ウイスキーが製造されている蒸溜所。ウイスキーファンにとっては聖地ともいえる場所である。国内において稼働中または稼働開始を控えているウイスキー蒸溜所は現在20カ所以上。日本の各地に点在し、その約半数以上の蒸溜所で一般向けの見学ツアー(一部蒸溜所は自由見学)が行われている。

昨今は世のウイスキーブームに触発され国内外問わず多くの観光客で賑わっているウイスキー蒸溜所だが、自称ウイスキー好きの中にもまだ訪問できていない、行こうか迷っているという方も少なくないのではなかろうか?

実際、自分の周りをみても興味はあるが実際に行くのを躊躇している人間は多い。行けない理由は人により様々であると思うが、しかし、できるならば1度は足を運んでいただきたい。

この記事では蒸溜所見学の魅力や楽しみ方、注目して欲しいポイントなどをお伝えしていこうと思う。そして、蒸溜所へ行く動機の一助となれば幸いである。
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では蒸溜所見学の魅力はどこにあるのか。
これは人それぞれかもしれないが、私の独断と偏見でいくつかピックアップしてみたいと思う。


① ウイスキー造りを間近に見られる

おそらく蒸溜所見学に関して唯一にして最大の魅力ではないだろうか。ウイスキーの誕生を間近に見ることができる場所は他には無い。しかも多くの蒸溜所では見学ツアーを実施しており、それぞれの製造プロセスにおいて作業に関すること、ウイスキー造りのポリシー等をわかりやすく説明してもらえる。

説明内容に関しては初心者でも理解しやすいよう配慮されいることが多いので、普段ウイスキーを飲まない人でも退屈することはない。また、既にある程度ウイスキー造りを知っている人はガイド、またはスタッフに別途質問してみても面白いだろう。余程口外できないことでない限り、丁寧に教えて貰えるはずだ。
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製造工程を間近に見ることによって温度や香りなどの現場の空気を体感できることも重要だ。マッシングされた麦芽や流れ出るニューポットの香り、ポットスチルから伝わる熱気、熟成庫の湿気と芳香、これらを感じることで製造のライブ感をより堪能することができ、理解も深まるはずだ。


② ウイスキーの試飲ができる

蒸溜所には多くの場合、試飲スペースが設けられている。また、見学ツアーを開催している場所では試飲が最初から組み込まれていることがある。試飲スペースでは通常販売の製品を基本としながら、時に数量限定品製品や蒸溜所でしか飲むことのできないボトルが置かれていることもあり、概ね一般市場価格より安く試飲できる。

代表的な例がサントリーが運営する山崎、白州の2大蒸溜所で、ここではまずツアーの最後に製品1種とその主な構成原酒、合わせて3~4種類の試飲ができる。しかもそれぞれハーフショットで用意され、さらに製品はハイボールにするためにショットでもう1杯用意される。これが参加費1000~2000円で楽しめるのだから申し分無いところだろう。

他の蒸溜所においても有料のツアーでは殆どの場合において試飲がセットになっている。場所によって内容の格差は多少あれど、十分お得感を感じられる内容だ。
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また、試飲スペースでは有料で製品の試飲ができる。一般に手に入りやすい商品から限定商品などのレアなもの、蒸溜所によっては樽詰め前のニューポットや製品化される前の原酒といった非売品を味わうことも可能だ。現在、市場価格の高騰によって若干の値上がり感は否めないものの、それでも市販品や料飲店よりもリーズナブルに楽しめるのは魅力である。
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提供される量は概ね10~15ml(ハーフショット)程度。少ない量でいろいろ試すことができるので、レアなボトルをお手頃に沢山楽しみたい玄人にも、自分に合うボトルを探したいビギナーにもオススメだ。

ただ、運転者には(当然だが)ウイスキーは提供して貰うことができない。お得な試飲を楽しむためにも、必ず公共交通機関を利用していただきたい。

~その2~に続く。

マルス信州蒸溜所は通年、見学が可能。しかも料金は無料である。
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ただしツアーガイドの同行は無く、時間制限も無し。一応順路は案内されているものの、基本的には自由に見学エリアを散策する形となっている。詳しくは後程説明するが、見学後には試飲スペースにて原則有料にて製品の試飲が可能だ。

現在の見学順路は、熟成庫→製造棟(糖化→発酵→蒸溜)の順になっている。この順番だと本来ならば一番最後に来るはずの熟成が最初になってしまうが、実際には必ずしも順を追って見学する必要はないので熟成庫を後回しにしてしまうのも手だ。幸い熟成庫は製造棟とは別棟になっているので、順路を逆走して後続の見学者とぶつかることもない(移動距離はやや伸びるが…)。
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ウイスキーの製造を見学した後は試飲スペースで製品の試飲が可能だ。原則有料試飲メニューのみとなっているが、見学者はブレンデッドウイスキー信州を1杯無料で飲むことができる。カウンターテーブルの上には仕込み水にも使用している駒ヶ岳山麓の伏流水も用意されており、各種ウイスキーをストレートで楽しんだ後に加水したり水割りにすることも可能だ。ここでは現行品のボトルの他、運が良ければ既に終売になっているボトルや限定品も試飲することができる。またワイン、梅酒などの自社製品や併設されている南信州ビール工房の各種ビールをオーダーすることも可能。勿論ノンアルコールのジュース等も用意されているので幅広い客層に対応可能だ。
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試飲後は基本的に自由に退店可能であるが、再び設備の見学に戻ることもできる。蒸溜所スタッフに確認すればミドルカット等各作業のおおよその開始時刻を教えてもらえるので、自分の見たい工程に合わせて見学に向かい、待ち時間で試飲を楽しむことも可能だ。
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マルス信州蒸溜所は年末年始や工事などの特別な期間を除いて通年見学が可能である。ただし、夏場に関しては概ね7~8月の期間に設備の集中メンテナンスを行う都合、実際に稼働中の製造エリアを見ることはできない。ただ、熟成庫の見学や試飲、スタッフの方との会話は可能なのでそちらを是非楽しんでいただきたい。

尚、上記情報は2019年現在のものであり、2020年秋頃には敷地内で製造棟の新築移転、およびビジターセンターの新設等が行われるため見学方式などが変更される可能性がある。それについては公式にアナウンスされ次第、ご報告したい。

Balblair 1990(AGED 23 YEARS) Kingsbury CASK NO.10116 REFILL SHERRY
Alc.52.9
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評価:6 point (10 point 満点中)

(コンディション)
自宅にて。開封から約1年、量はボトル3分の1程度、グレンケアングラス使用。

(見た目)
ややアンバー寄りの濃いゴールド、少々粘性あり。

(香り)
ハチミツ、完熟の黄桃やアンズ、ワックスや使い慣らした革製品、徐々にレーズンや薄めたバルサミコのようなドライフルーツ感とココナッツのような香ばしさが表れる。シェリー樽感は強すぎず、全体的に穏やかで控えめ。

(味)
最初は渋みが強い。時折墨汁のような風味も見え隠れする。渋みが引いてくるとドライフルーツやカスタード、あっさりした甘みを感じる。終盤も渋みは残り、モルトの香ばしさやウッド感、少々のスパイシーさと共に余韻に続く。刺激感は度数相応。余韻は比較的長く穏やかだが、少々ドライな印象も感じる。

(感想)
香りは穏やかながらもネガティブな要素が少なく、個人的には好きな部類。シェリーカスク系に有りがちな強すぎるシェリー感、甘すぎるドライフルーツ感が無く、穏やかであっさりした印象。ただ、人によっては個性が足りないと感じるかもしれない。一方で味ではやや渋みが強く、バルブレアらしい香ばしいモルト感やウッディな要素が隠されてしまっている印象。ただ、飲み口としては悪くなく、余韻も穏やかながら長続きしてくれるので楽しみ方次第なのかもしれない。


元々それほど突出したポイントを持つわけではないバルブレア。一般的にいわれるところのハイランド系の素朴なモルティさとスパイシーさが好印象なウイスキーだが、このボトルではその良さがリフィルシェリーカスク相手に少々負けてしまっているような印象だった。ただ、所謂シェリーカスク系の強すぎる要素は無く、樽由来と思われる渋みが気になる程度。余韻にかけていつものバルブレアもある程度感じられるので不満はない。

開封から1年近くが経過し、飲みやすさから量も大分減ってきていたためか、以前よりもフルーティさが抑えられ、渋みを感じやすくなっているような印象であった。

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マルス信州蒸溜所の生産量は年間10数万リットル(近年は約13万リットルといわれている)であり、他の有名大企業の蒸留所に比べると非常にミニマムである。

以下、製造に関する設備の概要。

〇 マッシュタン:ステンレス製×1基
〇 ウォッシュバック:鉄製×5基、木製×3基 (※木製は2018年導入)
〇 ポットスチル:初留×1基、再留×1基
〇 貯蔵庫:5段ラック式×1棟 他2棟

やはり目を引くのは初留と再留でサイズ・形状の異なるポットスチルだろう。
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向かって右が初留、左が再留。写真のポットスチルは2014年に更新された新しいものだが、形状は創業時に山梨から移設された初代ポットスチルを再現した精巧なレプリカである。サイズは見ての通り初留釜よりも再留釜が大きく、現在は初留3回分につき再留1回を行うペースで稼働している。

サイズ以外を細かく見ていくと、初留釜の方が直線的な形状をしており、再留釜は曲線的である。また、冷却部分も初留・再留で異なっており、初留がシェル&チューブで再留がワームタブである。サイズや形状が初留と再留で異なる蒸溜所は国内外問わず多いが、冷却システムに至るまで違う構造になっている蒸溜所は珍しいと言える(国内は他にサントリー系列の2蒸溜所があるのみ)。

このポットスチルは岩井喜一郎が設計した事で知られ、設計に際して竹鶴ノートのポットスチル見取り図が参考にされているというのは有名なお話。ジャパニーズウイスキーの歴史を語る上でも、注目すべきポットスチルである。尚、撤去された旧ポットスチルは現在モニュメントとして屋外に展示されている。
2018マルス信州ポット
原酒の作り分けに関しては、モルトのピートレベルで4種(ノンピート、ピーテッド、ヘビリーピーテッド、スーパーヘビリーピーテッド)に加え、イーストが3種類(ディスティラリー酵母、自家酵母、エール酵母)、さらに2018年以降は鉄製と木製のウォッシュバックによる違いも加わり多種類に及ぶ組み合わせの原酒造りがされている。
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熟成には他社同様様々な樽が使用されており、メインはバーボン樽で他はホワイトオーク新樽、シェリー樽、変わったところでは梅酒樽なども使用されている。
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信州蒸溜所でのエンジェルズ・シェアは年間約3%前後とのこと。高原ならではの澄んだ空気とダイナミックに変動する気温が熟成にどう影響を与えるか、それは皆さんの舌で実際に味わって体感していただければと思う。

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マルス信州蒸溜所は長野県の中南部、上伊那郡宮田村(かみいなぐん、みやだむら)に位置している、現在、日本で最も標高の高い蒸溜所である。

マルス信州蒸溜所は鹿児島県に本拠地を置く本坊酒造の所有するウイスキー製造工場のひとつであり、1985年に創業。建屋自体は当時新規に建てられたものであるが、製造設備に関しては1960年より稼働していた山梨県石和(いさわ)のウイスキー工場から移設したものが使用された。

創業当初の名称はマルス信州ファクトリー。1992年には折からのウイスキー不況の余波を受けて製造を休止。製造再開まで約20年もの間、新規にウイスキーの製造は行われなかった。そして2011年にようやく製造再開。これに合わせ、名称をマルス信州蒸溜所に改めて現在に至っている。
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蒸溜所が位置するのは木曽山脈の最高峰、駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)の麓である。周囲には山林が広がり、澄んだ空気に混じって山林独特の木や土、草などの香りが感じられる。蒸溜所の隣には天竜川の支流のひとつ、大田切川(おおたぎりがわ)が流れ、まさに自然に囲まれた高原の蒸溜所といった趣だ。

先述の通り、日本で最も高所に位置する蒸溜所であり、その標高は798メートル。おそらく日本以外の5大ウイスキーの中でもトップレベルの標高である。気候は冷涼…と言いたいところであるが、最近の夏場は35℃手前まで気温が上がることも珍しくなく、決して涼しいばかりの土地ではない。一方で冬場には一気にマイナスまで気温が落ち込み、-10℃程度まで下がる日も間々ある。また、東西を山脈に挟まれた地理故に日照時間が少々短く、日中に気温が高くても夜半過ぎには涼しく感じる場合もあるほど、1年はおろか1日単位で見ても気温の上下が激しい。
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そんな地理・気候条件の中、2011年の復活以降マルス信州蒸溜所では毎年約10数万リットルの原酒が仕込まれている。近年のウイスキーブームにより、今後はさらに増産する計画で、既に来年(2020年)の完成を目指し、製造エリアの新設移動、貯蔵施設の拡充、ビジターセンターの新設などの拡張工事が始まっている。

新装オープンは2020年9月の予定で、新装前の最後の蒸溜は6~7月頃になる見通し。果たしてどんな形に生まれ変わるのか、楽しみだ。

はじめまして。

当ブログ管理人、「みち」と申します。

当ブログはウイスキーを中心に主にスピリッツについて、ボトルの感想、蒸溜所の紹介、イベントやお酒にまつわる出来事の備忘録等々、書き綴っていきたいと考えています。

稚拙な文章で読み難い記事も多分にあろうとは思いますが、お付き合いいただけたら幸いです。

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