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マルス信州蒸溜所の生産量は年間10数万リットル(近年は約13万リットルといわれている)であり、他の有名大企業の蒸留所に比べると非常にミニマムである。

以下、製造に関する設備の概要。

〇 マッシュタン:ステンレス製×1基
〇 ウォッシュバック:鉄製×5基、木製×3基 (※木製は2018年導入)
〇 ポットスチル:初留×1基、再留×1基
〇 貯蔵庫:5段ラック式×1棟 他2棟

やはり目を引くのは初留と再留でサイズ・形状の異なるポットスチルだろう。
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向かって右が初留、左が再留。写真のポットスチルは2014年に更新された新しいものだが、形状は創業時に山梨から移設された初代ポットスチルを再現した精巧なレプリカである。サイズは見ての通り初留釜よりも再留釜が大きく、現在は初留3回分につき再留1回を行うペースで稼働している。

サイズ以外を細かく見ていくと、初留釜の方が直線的な形状をしており、再留釜は曲線的である。また、冷却部分も初留・再留で異なっており、初留がシェル&チューブで再留がワームタブである。サイズや形状が初留と再留で異なる蒸溜所は国内外問わず多いが、冷却システムに至るまで違う構造になっている蒸溜所は珍しいと言える(国内は他にサントリー系列の2蒸溜所があるのみ)。

このポットスチルは岩井喜一郎が設計した事で知られ、設計に際して竹鶴ノートのポットスチル見取り図が参考にされているというのは有名なお話。ジャパニーズウイスキーの歴史を語る上でも、注目すべきポットスチルである。尚、撤去された旧ポットスチルは現在モニュメントとして屋外に展示されている。
2018マルス信州ポット
原酒の作り分けに関しては、モルトのピートレベルで4種(ノンピート、ピーテッド、ヘビリーピーテッド、スーパーヘビリーピーテッド)に加え、イーストが3種類(ディスティラリー酵母、自家酵母、エール酵母)、さらに2018年以降は鉄製と木製のウォッシュバックによる違いも加わり多種類に及ぶ組み合わせの原酒造りがされている。
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熟成には他社同様様々な樽が使用されており、メインはバーボン樽で他はホワイトオーク新樽、シェリー樽、変わったところでは梅酒樽なども使用されている。
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信州蒸溜所でのエンジェルズ・シェアは年間約3%前後とのこと。高原ならではの澄んだ空気とダイナミックに変動する気温が熟成にどう影響を与えるか、それは皆さんの舌で実際に味わって体感していただければと思う。