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マルス信州蒸溜所は長野県の中南部、上伊那郡宮田村(かみいなぐん、みやだむら)に位置している、現在、日本で最も標高の高い蒸溜所である。

マルス信州蒸溜所は鹿児島県に本拠地を置く本坊酒造の所有するウイスキー製造工場のひとつであり、1985年に創業。建屋自体は当時新規に建てられたものであるが、製造設備に関しては1960年より稼働していた山梨県石和(いさわ)のウイスキー工場から移設したものが使用された。

創業当初の名称はマルス信州ファクトリー。1992年には折からのウイスキー不況の余波を受けて製造を休止。製造再開まで約20年もの間、新規にウイスキーの製造は行われなかった。そして2011年にようやく製造再開。これに合わせ、名称をマルス信州蒸溜所に改めて現在に至っている。
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蒸溜所が位置するのは木曽山脈の最高峰、駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)の麓である。周囲には山林が広がり、澄んだ空気に混じって山林独特の木や土、草などの香りが感じられる。蒸溜所の隣には天竜川の支流のひとつ、大田切川(おおたぎりがわ)が流れ、まさに自然に囲まれた高原の蒸溜所といった趣だ。

先述の通り、日本で最も高所に位置する蒸溜所であり、その標高は798メートル。おそらく日本以外の5大ウイスキーの中でもトップレベルの標高である。気候は冷涼…と言いたいところであるが、最近の夏場は35℃手前まで気温が上がることも珍しくなく、決して涼しいばかりの土地ではない。一方で冬場には一気にマイナスまで気温が落ち込み、-10℃程度まで下がる日も間々ある。また、東西を山脈に挟まれた地理故に日照時間が少々短く、日中に気温が高くても夜半過ぎには涼しく感じる場合もあるほど、1年はおろか1日単位で見ても気温の上下が激しい。
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そんな地理・気候条件の中、2011年の復活以降マルス信州蒸溜所では毎年約10数万リットルの原酒が仕込まれている。近年のウイスキーブームにより、今後はさらに増産する計画で、既に来年(2020年)の完成を目指し、製造エリアの新設移動、貯蔵施設の拡充、ビジターセンターの新設などの拡張工事が始まっている。

新装オープンは2020年9月の予定で、新装前の最後の蒸溜は6~7月頃になる見通し。果たしてどんな形に生まれ変わるのか、楽しみだ。