ウイスキー好きの"今夜も飲む!"

ウイスキーとその蒸溜所を愛し、年間10回以上蒸溜所を訪問。ウイスキーの良さと蒸溜所見学の楽しさを皆様に知っていただきたいと思います。2019年、ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル取得。

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☆KOMAGATAKE SINGLE MALT
 IPA CASK FINISH
 Botteled in 2020
 南信州ビール×駒ヶ岳

 度数:52.0%
(状態) 開封後数週間以内/残量:80%程度/蒸溜所にて

(テイスティング)
香り:
レモンのフレッシュ感、フレッシュフルーツのエステリー、優しいバニラ、浅く焙煎したナッツ、リンゴ農園の香り、バタースカッチ、ほんのりとホップのアロマ、甘みを伴うモルト、過熟な果実の甘い風味も漂う。

味:
優しいホップの風味、程よいタンニン、ローストナッツ、乾いた樽香、乳酸の酸味、プレッツェルの香ばしさ。柑橘のオイル。終盤はホワイトペッパーのスパイシー、柔らかいバニラ、仄かにボタニカルまたはレモンピールのビター感。フィニッシュは比較的穏やかに、暖かさが程よく長く続く。

感想:
思った以上に良く纏まっており、美味しく飲める一本。複数樽バッティング・加水品であるためか強烈な個性は求められないものの、樽感・ビター・ホップ由来のアロマ、フルーツがバランスよく現れる。加水するとビターとウッドが浮き、IPA感が強まるが、決して嫌みではない。

評価:
3~4(日飲みできるレベル~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:値段相応

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マルスウイスキーから先日発売された、シングルモルト駒ヶ岳のIPAカスクフィニッシュ品。前回のシングルカスクから打って変わり、今回は複数樽をバッティングし加水調整したものとなりました。

フィニッシュに使用されている樽は前回のシングルカスク駒ヶ岳IPAカスクフィニッシュ同様、同敷地内の南信州ビールのIPAの熟成に使用されていたもの。

味わいではシングルカスクほどのIPA感ないしホップ由来のアロマ感は感じられないものの、バーボンカスク由来と思わしきクリーンなフルーツ香とバニラ香の合間に程よくホップが見え隠れする印象でした。

また口当たりは加水の具合も相まってか非常にソフト。味わいではよりファッティな印象が増しつつ、酸・苦のバランスとスパイシーのアクセントが効いた仕上がり。概ね香りと味わいで大きく乖離なく、突出した部分には欠けるものの安心感ある雰囲気でした。

加水ではややホップの香りとウッディさが浮き上がる印象で、若干不安定に感じましたが、嫌味のある部分は思いの外感じられなかったので、ハイボールなどには案外馴染むのかもしれません。

シングルカスクではない分、味わい的にもお値段的にもピーキーではなく、非常にライトに手軽に楽しめる1本かと思います。今後もシリーズが続けばいいなぁ…

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☆Vacation Whisky 2015
 Always Christmas
 Komagatake Singlemalt
 Aged 5 Years

 度数:61%
 樽種:ANEJO CASK
(状態) 開封直後/残量:100%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
シルバーテキーラ、アガベシロップ、仄かに焙煎感を伴う穀物、おがくずのようなウッディ、スイート感のあるエステリー、木酢、腐葉土。時間を掛けると僅かにマンゴージャムのようなトロピカルフルーツが開く。

味:
シルバーテキーラの独特な芳香と甘み、ビターなウッディ、仄かにラムネっぽいフレーバー、香ばしい穀物、僅かに金属感とナッツ系のファッティ。フィニッシュは中くらいで、タンニンと独特な青っぽさ、仄かな土系ピートを残しつつ、ドライに切れる印象。若さと度数相応にしっかりとした刺激感がある。

感想:
なかなかの変わり種。ウイスキーっぽさよりもテキーラの風味が勝る印象で、良くも悪くもテキーラ味。それも原酒のニューポット感と相まってか非熟成のシルバーテキーラの風味に感じられた。一方、時間をかけてじっくり香りをみていくと僅かながらにトロピカルフルーツのフレーバーも顔を出す。香りがしっかりと開いてくれば、化ける可能性があるかもしれないが、現状では「変わり種」以上の評価は付け難い。尚、加水するとよりテキーラの風味が浮き上がる。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い

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Sake Shop Satoが不定期にリリースしているクリスマスラベルの第5弾。

中身は『ANEJO(アネホ)CASK』との表記からわかる通り、テキーラカスクで熟成された5年熟成のシングルモルト駒ヶ岳(マルス信州)です。

駒ヶ岳シリーズといえば、直近で発売されたIPAカスクやTWSCにも出品されたマデイラカスク、ブレンデッドウイスキーのフィニッシュにしようされた桜カスク等、レギュラー外の変わり種の樽を所有していることで知られています。その中でも今回のテキーラカスクは恐らく変わり種中の変わり種。

実際にテイスティングしてみると、予想以上にテキーラ色の強い仕上がりになっており、好き嫌いによって賛否分かれそうな印象。

以前、同シリーズにて江井ヶ嶋(旧ホワイトオーク)蒸溜所のシングルモルトあかし・テキーラカスクがリリースされ、こちらも一度テイスティングをした経験があり、なかなかのテキーラ感に驚いた記憶があったのですが、今回の駒ヶ岳も負けず劣らず、なかなかパンチが効いておりました。

ただ、単純に全てテキーラ一色なのかというとそんなことはなく、駒ヶ岳らしいエステリーや、バーボンカスク(テキーラの熟成には多くバーボンカスクが用いられる)由来と思わしきトロピカルフレーバーの片鱗が見え隠れしており、今後の開き具合によってはそれなりに楽しめる仕上りになる可能性も感じられました。

ただ、やはり開けたてはなかなか難しい…。また時間を空けて、どのように変化するのか、楽しみに待ちたいと思います。

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☆JURA AGED 26 YEARS
 HUNTER LAING
 ARDNAHOE DISTILLERY THE KINSIP
 One of 254 bottles

 度数:52.7%
 樽種:リフィルホグズヘッド
(状態) 開封直後/残量:90%程度/イベントにて

(テイスティング)
香り:
バナナフレーバーのケーキ、セメダインを思わせるケミカルなエステリー、青りんごフレーバー、青みを伴う穀物、塩ビのパイプ、僅かに磯の香り、オレンジやレモンのピール、フルーツのビネガー。

味:
ハニーシロップのスイート、アプリコットやリンゴのジャム、仄かにベリーのような風味、控えめに乾いたウッディ、レモンのピール、白い花のフローラル感、やや粉っぽいモルティ、ケミカルなエステリー。フィニッシュはエステリーと独特な磯の香り、少々のビターが中くらいに伸びる。アフターテイストにはライムのような柑橘が残る。時間経過でピーチやトロピカルフルーツのフレーバーも現れる。

感想:
全体的に棘が無く飲みやすいが、香りの面で少々ケミカル系エステリーの押しが強く、ビニールのような印象まで感じられた。時間経過でピーチやトロピカルフルーツのソフトな風味が出現。開栓すぐだったので、まだまだ開いていない様子だった。暫く置くことで真価を発揮しそうな雰囲気。ケミカルな部分も和らぐのではなかろうか。また、オイスターのような独特な磯の風味は、好き嫌いが分かれそう。加水で穀物感がよりクリーミーに変わる。

評価:3~4(可も不可もなし~ゆっくり楽しめるレベル)

コスパ:やや悪い

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近年創業のボトラーズながら既に高い知名度を得ているハンターレイン社。

アイラ島9番目の蒸溜所であるアードナッホーを創業したことでも知られています。

そのハンターレイン社が、件のアードナッホー創業を記念して発売したシングルモルトシリーズが「ザ・キンシップ」です。

「キンシップ」とは「親族」や「血縁関係」など親密な繋がりを意味する言葉だそう。ハンターレイン社が自社ストックの原酒からの選りすぐりをボトリング・リリースしたもので、かなりハイエンドな仕上がりになっているとのことでした。

実際、価格設定もかなりアッパーであり、今回のようなイベントでの試飲でなければちょっと手が出ないところでした。

尚、このジュラ26年はザ・キンシップの2018年リリース時の1本にあたり、他にはハイランドパーク21年、スプリングバンク25年、ボウモア21年、ブナハーブン30年、ラフロイグ20年といった錚々たるメンツが揃っていました。

そんなアッパーなクラスの本ボトル。リフィルホグスヘッドらしい、クリーンで角の無い味わいがとても良い…はずだったですが、少々ケミカル系エステリーが強すぎる感があり…。その強さたるやフルーツフレーバーを通り越してビニール系に至り、個人的には配管の塩ビパイプを連想するほどでした。

これ以外はアッパーグレード品だけあってかなり優秀で、特に時間経過で開いてくるピーチやトロピカルは結構いい感じ。オイスター的磯っぽさは、ジュラらしさと取れれば寛容できるレベル(好き嫌いは出るとは思いますが…)。纏まりも悪くなく、なんとも惜しい印象でした。

まあ、開栓ほぼ直後でしたし、時間経過で強いフレーバーがこなれ、開いていなかった部分が表出すればもっと良い、値段に敵った味わいに変わることでしょう。そのあたりも含めて良い勉強になった1本でした。

こういう良いボトルがリーズナブルに試飲できるのもイベントならではの楽しみ。

以前と同じ…には戻せないんでしょうけども、願わくば形を変えてでも定番イベントは復活してほしいところです。

セッション
(画像:ニッカウヰスキー「セッション」公式サイトより転載)
☆NIKKA Session 奏楽
 度数:43%
(状態) 開封時期不明/残量:60%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
スイートかつ香ばしさを伴うモルティ、白桃のシロップ、洋梨のコンポート、リンゴのグラッセ、クリーンなイメージのエステリー、蜜柑のピール。クリーミーやフローラルもある。控えめにウッディ、バニラ、土っぽいピーティ。徐々にマンゴーのようなトロピカルフルーツフレーバーが現れる。

味:
ややエッジの効いたビターとウッディ、土と灰のピーティ、シロップのようなクリアーな甘み、マンゴーフレーバー、少々出汁っぽいニュアンスもある。徐々にビターキャラメル、バニラクリーム、仄かなナッティが現れる。フィニッシュはドライ。椎茸の出汁を思わせる土っぽいピーティと、やや石鹸寄りのフローラル、少々のビターが残る。度数のわりに多少刺激が強い印象。

感想:
香りでは圧倒的にスイートとフルーツが優勢で、味ではビターとウッディ、ピーティがメインなイメージ。それぞれの要素がある程度独立して感じられる一方、強く突出する訳でもなく纏まりは良い。加水でビターが和らぎ、ナッツの香ばしい風味が増す。また、それほどバランスが崩れる様子もなかった。普段飲みでもおそらく充分楽しめる印象。

評価:3(可も不可もなし/日飲みできるレベル)

コスパ:値段相応~やや悪い

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先日より発売となったニッカウヰスキーの新製品。

国内のモルト原酒(余市、宮城峡)と海外のモルト原酒をブレンドしたブレンデッドモルトです。

本ボトルでは大々的に「海外原酒の使用」が謳われており、原酒の出元として「ベンネヴィス等」と紹介されています。

ウイスキーにお詳しい方でしたら既にご存じの通り、ベンネヴィスはニッカウヰスキーが所有するスコットランドの蒸溜所。ややケミカルなトロピカルフレーバーが特徴的なウイスキーを造っています。

このベンネヴィスの原酒とニッカウヰスキーの製品に関しては、ウイスキーファンの間でこれまでグレーな談義が多く交わされてきたわけなのですが(特にブレンデッドモルト既製品のアレとか)、いよいよ「使ってます」を明示した製品が登場してきた訳です。

これは勿論時代の流れ、ワールドブレンデッドの台頭が大きく影響していると考えるのが自然なんでしょうが、国内製品のレギュレーション(所謂“ジャパニーズウイスキー”表記に係る部分)を考慮した際の、明確な住み分けを行うための準備的な意味合いも感じられます。

つまり、今後は「純国内原酒」製品と「国内と海外のブレンド」製品でブランディングや価格帯の位置づけを区切り、販売していこうという戦略があるように感じられた訳です。あくまで個人の推測ですがね…。


さて余談はさておき肝心の中身ですが、エステリー、トロピカルフルーティ、ピーティがそれぞれ単独でそれぞれしっかり活きている印象でした。つまり、「宮城峡のエステリー」、「海外(ネヴィス)のトロピカル」、「余市のピーティ」という特徴的な要素を活かしたまま、一つの製品の中に詰め込むようなブレンドをしている…といったところでしょうか。

下手をすれば個性どうしが喧嘩し、潰し合ってしまいかねない方向性な訳ですが、絶妙に上手く纏まっています。老舗のブレンド技術は侮れませんね。

ただ、モルト原酒の個性はそれぞれ際立ってはいますが、味わいの印象は、やはりというか当然というか中庸のやや上ぐらい。また、若い原酒由来と思わしき刺激感も多少あり。日飲み用やライトに飲む酒として食中や1杯目あたりに楽しむのが良さそうです。値段的にもちょっとアッパーですが、許容範囲かなと。

飲み方としては加水に耐える印象だったので、ハイボール、ロック、水割り、ストレート等々なんでもいけそう。

多彩な楽しみ方ができるという点では、海外原酒を使っているとはいえ非常に日本らしいブレンデッドモルトであり、間口の広いウイスキーであると言えるでしょう。

海外原酒のブレンド使用に関しては賛否含め様々が意見が飛び交っているところですが、余程のものでない限り、フラットに捉え、先入観なく楽しむのが良いと思います。本ボトルはまさにその好例。斜に構えず楽しめば、無難に充分楽しめる1本です。

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☆KOMAGATAKE(駒ヶ岳)
 Double Cask
 Tsunuki Aging
 Hojo Selection 2020
 Distilled:Apr.2013・May.2016
 [Finishing:Gin Cask]
 度数:54%
 樽種:Bourbon Barrel×2 ⇒ Gin Cask
(状態) 開封後数日/残量:90%程度/バー飲み

(テイスティング)
香り:
ナッツチョコ、キャラメルソース、灰と土のピーティ、針葉樹の木材、駄菓子のラムネフレーバー、乾燥したジュニパー、仄かにシトラスのニュアンス、ポテトサラダのようなファッティで粉っぽい穀物のイメージ。

味:
比較的尖った口当たり。ビターかつスパイシーさを伴うウッディ、シトラスのピール、レモンフレーバー、和山椒のホットなスパイシーさ、仄かに穀物系のスイート。ボタニカルなビター感と清涼感。次第に脂肪のファッティ、松ヤニが現れる。フィニッシュはライトかつドライ。

感想:
香り、味ともにジンらしいフレーバーが混ざる。また同時に若いバーボンカスク原酒らしいファッティさと乾いたウッディのニュアンスも前面に出ている印象。味わいは結構ドライでさっぱりした仕上がりで、香りほど複雑ではない。刺激的な面では如何にも若々しいが、ニューポッティな部分はジンカスク由来のフレーバーがカバーしているようだ。トニックウォーターで割ると、また違った印象に変貌し面白い。

評価:3(可も不可もなし)

コスパ:やや悪い
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マルス津貫蒸溜所に併設された「寶常」。

本坊家旧邸を改装したビジターセンターで、内装は古き良き日本家屋の中に、アンティーク調の家具・調度品と装飾が施された和洋折衷、モダンで美しい空間に仕上がっています。

ここには試飲用のバーカウンター、ショップが設置されているほか、食事用のテーブルや中庭を望むテラス席も完備。バーカウンターではマルスウイスキーの各製品が試飲できることに加え、コーヒーやソフトドリンク、軽食も可能です。

この寶常のショップ限定で販売されているのが「駒ヶ岳 津貫エイジング寶常セレクションシリーズ」。マルス信州で蒸溜された原酒を津貫で熟成させたものをボトリングしたもので、一般販売の「駒ヶ岳 津貫エイジングシリーズ」とは違いシングルカスクまたはダブルカスクでのボトリングです。

また、寶常セレクションは基本的にイヤーボトリング品で、毎年毎年ボトルのカラーリングと使用する樽種、またはフィニッシュを変えてリリースされており、今回はマルス津貫で製造されているジン、「和美人」のカスクエイジド品に使用された樽をフィニッシュに使用したものとなっています。

ちなみにイヤーボトリングと言いつつ、今回の寶常セレクションは2020年内2種類目というイレギュラーリリース。どうやら前ボトル寶常セレクション2020バーボンカスクの売れ行きが良く、年内に在庫を売り切ってしまったため急遽追加されたボトルのようです。

さてそんなボトルの中身としては、ラベル通りといいますか、バーボンバレルの駒ヶ岳とジンの双方のニュアンスをわかりやすく併せ持っているという印象。ただし、それぞれが結構ピーキーに現れているため、必ずしもバランスよく飲みやすいという味わいではありません。

バーボンバレルの部分としてはウッディやスパイシー、ファッティ。ジンの部分はボタニカル、シトラス、ラムネフレーバー等がそれぞれ顕著。複雑味というよりは、全部の要素を放り込んだような、ちょっと取り留めのない雰囲気を強く感じました。

また、注ぎたてよりも時間が経ったほうが、ストレートよりも何か割材を加えたほうが、棘のある風味が抑えられるような印象でした。私はマスターお薦めのトニックウォーター(常温)割で最後は楽しみましたが、ファッティさとシトラスが程よく立って、口当たりも多少穏やかに収まり飲みやすかったです。

まあ良くも悪くも蒸溜所ショップの限定品。機会に恵まれたなら、一度お試しください。

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